ドラマ『ながたんと青と』出演の28歳が明かす飾らない近況
欲しいのは、人気よりも作品の評価。小林虎之介の芝居を生み出す人間力
2026.03.06 18:00
2026.03.06 18:00
いい役者とはどういう役者かなんて一概には定義づけられないけど、この人の芝居はいいなと思わせてくれる役者は、往々にして人としても魅力に溢れている。小林虎之介も間違いなくその一人だ。
小林虎之介は嘘をつかない。自分をよく見せようともしない。偉ぶらないし、かと言って必要以上に自分を卑下もしない。ちょっとシャイで、ぶっきらぼうに聞こえることもあるけど、情に厚くて、仲間思い。そして何より超がつくほどの芝居バカ。芝居の世界で生きると決めたその日から、彼の心の中心にはいつも芝居がある。
そんな小林虎之介が連続ドラマW-30『ながたんと青と -いちかの料理帖-2』(WOWOW)で演じているのは、主人公・いち日と周が営む料亭「桑乃木」をかき乱す策略家の川島栄。
連続テレビ小説『風、薫る』、さらに『俺たちの箱根駅伝』と大型作品が控える28歳は、新境地となるこの役でどんな顔を見せてくれるだろうか。

自分自身が役の気持ちに寄り添わないと
──今回演じた栄は、腹の中で何を考えているかわからない人物です。今まで小林さんが演じてきた役とはまたちょっと色合いの異なる役だなという気がしました。
自分にとって挑戦しがいのある役をいただけたことがうれしかったし、また新しいチャレンジができるんじゃないかっていう楽しみはありましたね。まず関西弁というのがひとつのハードルで。最初に関西弁で台詞をしゃべってる音声データが送られてきたんですよ。それを聞き込むところからのスタートでした。
──方言の習得というのは、俳優さんにとってやっぱり難題なんですね。
めちゃくちゃ苦労します。以前も方言を使う役をいただいたことはあったんですけど、そのときは録音テープだけもらって、それを聞いて覚えるという感じだったんですね。そのときはそれでできてる自覚があったから、その自覚のまま今回も現場に行ったら、『ながたんと青と』では方言指導の方がつきっきりで現場にいてくださって、しょっぱなから「違う」「違う」って何回も直してもらいました。
──細かいイントネーションなんかが、きっと専門家の方からすると違うんでしょうね。
自分のできてるというイメージとこんなにギャップがあるんだと思って。途中からは、その日の撮影が終わった後、付き合ってもらって、次の日の予習をしたりしていました。
──さすがです。
いや、それはもう自分が5倍も6倍も準備しなきゃいけないタイプだということに気づいたからです。また栄がよく喋るんですよ。特に長台詞になると、どうしても抑揚を覚えるのにいっぱいいっぱいになって、どこかで綻びが生まれるんですね。で、僕は間違えたと思ったら途端に集中力がなくなっちゃうタイプなので。深い底のほうに潜り込んでいたのが、急に地上に上がってきたような感覚になる。これはまずいなということで、事前に対策を立てるようになりました。
──印象的だったのが、表情なんですよね。ほとんどまばたきをされていない気がして。話すときも、相手の目をじっくり覗き込むような目をされていました。
そこは意識してというより、たぶん自然とそうなっていったんだと思います。僕の中で栄は常に仮面をかぶっている人。いつも演技をしているんですよね。だから、表情もとってつけたようなイメージがあって、ちょっと時間をかけてそういう顔の使い方を自分に染み込ませるようにしました。
──仮面というワードがしっくり来ますね。何に対しても一喜一憂していない感じがしました。
人の言葉に反応しないんですよね、栄は。反応したとしても、それは反応したという演技でしかなくて。他人の言葉は聞こえているけど、聞いていないというか。耳から心に入っていかない。それよりも思い通りの方向に物事を進めていくために、自分の言いたいことを言うっていうイメージでした。

──だからでしょうか。声の出し方も地声と違っていましたね。
どの作品でも、あんまり自分で変えようとは考えていないんですけど、勝手に変わっていくんです。台本や役によって台詞の特徴も違うので、そこに合わせていったら自然と声の出し方も変わる。意識して声をつくるというより、そうなったという言い方のほうが近いです。
──クランクインはどのシーンか覚えていますか。
3話の栄と周がチェスをしているところです。
──撮影の入りって大事だと思うんですけど、うまく入れましたか。それとも手探りの中という感じですか。
いや〜、もう手探りです(笑)。毎回手探りなんですけど、特に栄は人によってどういう解釈にもなり得るキャラクター。もっと柔らかいイメージを持ってる人もいれば、そうじゃない人もいるし。自分の考えた栄が合ってるのかどうか。そこはもう探り探りでしたけど、監督がオッケーと言ってくださったので、じゃあこれでいこうかって固まった感じがしました。
──栄は、いち日と周にわざと波乱をもたらすようなことをする役どころです。小林さん自身は栄のことを愛せるなと思いましたか。それとも腹が立つなと思いましたか。
どちらかというと、可愛いなって思いました。というか、可哀相というのがいちばんかな。栄がああいう性格になったのも、そういう人生を歩まざるを得なかったからだし。僕が似たような環境に身を置くことがなかったのは、運が良かっただけ。栄を演じて思ったんですよ。ここまで極端じゃなくても、栄みたいな環境にいる人は世の中にいっぱいいるし、辛い思いをしている人もたくさんいるんだろうなって。

門脇麦演じる桑乃木いち日、小林虎之介演じる川島栄
──小林さんは、演じる役に対して、寄り添えるところがあったほうが演じやすいタイプですか。
そうですね。そこがないとキツいです。僕にはできない。栄に関しては、作品の中で過去がちゃんと描かれているので、わざわざしませんけど、そうじゃない役の場合は、脚本や原作に描かれていない過去を自分の中で勝手につくって、ちゃんと自分自身が役の気持ちに寄り添えるところまで準備の段階でイメージしてから現場に臨みます。
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