2026.02.06 14:00
2026.02.06 14:00
悩みや葛藤も楽しめる人生であればいい
──『黒百合』で岡本さんが演じるのは、盲目の恋人(拓)のために黒百合を探す花売りの娘・雪。現時点で雪をどのような人物だと捉え、どのように演じたいと思っていますか?(取材は2025年実施)
『黒百合』は昔の作品なのにもかかわらず、雪はすごく女性として強く描かれているなと思いました。だから私は、同じ女性として雪を尊敬しながら演じられるだろうなと思います。雪は人(拓)のためでありながら、自分の意思を持って進んでいきます。そこに尊敬の念が生まれて。その気持ちをちゃんと表現できたらいいなと思いました。

──雪に対して感じた「自分の意志で突き進む」というところは、ご自身と近いですか?
どうだろう。でも雪のそんな姿に惹かれるということは、自分のなりたい姿が投影されているのかなと思いますね。だから大きな声で「雪と私は一致してます」とは言えないくらい、大きな存在というか……憧れです。現代に雪がいても憧れの人物像です。
──そんな雪になれるという意味でも、演じられるのは楽しみですね。
はい、とても楽しみです。同時に「どうなるんだろう」という期待もあります。泉鏡花作品には非現実的なところもあって、それを、美術含めて舞台の上でどう表現するのかはまだ全然わからないので。稽古を進めていくなかで、もしかしたら今お話しした脚本の印象とは全然違うものになるかもしれないし、稽古を重ねていくなかで膨らんでいく雪への思いも楽しみながらやっていけたらと思っています。

── 演出を手がけるのは杉原邦生さん。杉原さんの演出にはどのような印象がありますか?
取材の時に初めてお会いしたんですが、すごく軽やかな方だなと思いました。俳優の友達から聞く限り、みんな口を揃えて「杉原さんの演出作品は稽古が楽しい」と言うので楽しみですね。杉原さんの演出作品って、現代社会とのつながりを諦めていないという感じがするんです。いろいろなテーマを扱った作品がありますが、そのなかでも今起きていることや、今生きている多くの人が考えていることと結びつけるような演出が多い気がして。今回の『黒百合』も昔から楽しまれている作品ではありますが、今の時代に観てくださった皆さんにどう響いていくのかが楽しみです。
──冒頭に伺ったカフェのモーニングでのエピソードもそうですが、お話を伺っていて、岡本さんは人と関わることがお好きな印象を受けました。
そうですね。人と関わることは好きです。人はみんな違うんだなということを当たり前に感じられるから。自分だけに集中してしまうと、どうしても自分が正解のような気がしてきたり、はたまた自分が不正解に感じたりすると思うんですけど、家族や友人も含めて人との関わりを持つと、どっちでもないことに気づけるんです。『黒百合』でも、私は雪という役をいただいていますが、いろいろな登場人物を理解することで、雪のことはもちろん、自分自身についても発見があるんじゃないかなと思っています。
──確かに雪も含めて登場人物は皆さん、なかなかに個性が強いですよね。
そうなんですよね。それぞれ持ち合わせている要素があるからこそ、それを比べて「じゃあ自分はどうなんだ?」って考えることができる作品なのかなと思います。

──人と比べるという点で言うと、例えば「あの人のほうが芝居がうまい」とか「あの人のほうが活躍している」というように他の俳優さんと比べてネガティブな考えを持ってしまうことはないですか? その中でもやはり、人と人は違うものだと考えられる?
いや、比べて落ち込みますよ。それは誰でもあることだと思うし。『黒百合』でいうと拓さん(雪の恋人)がその立場というか。雪への思いと自分の不甲斐なさの間で葛藤をしていく。だけど、その葛藤って悪いものではなくて。新しい何かにつながるための一歩だとしたら、私は全然アリだと思うんです。誰かと比べて「自分は自分だ」って思うことだけが全てじゃなくて、誰かと比べて悩んだり葛藤したりすることも楽しめる人生であったらいいなって、『黒百合』の脚本を読んでより感じました。……とか言いながら稽古中、誰かと比べてめちゃくちゃ落ち込んでいるかもしれないですが(笑)。
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