ドラマ『人間標本』での同世代共演で与え合った刺激とは
俳優業には狂気が必要?荒木飛羽×山中柔太朗×黒崎煌代×松本怜生×秋谷郁甫の尽きない芝居談義
2026.02.02 18:00
2026.02.02 18:00
5人にとって「うまい」は褒め言葉?
──いい感じに場が温まったところで、では本題に入ります。今回、みなさんが出演した『人間標本』は“イヤミスの女王”として知られる湊かなえさんの同名小説が原作になっています。すごく独特な世界観だと思いますが、湊作品の住人になるのは何か他の作品とは違うところってありましたか。
荒木 単純に標本にされる役なんてやったことがなかったので、新鮮ではありました。ただ、湊作品だから何か違ったかというとどうなんだろうな。
黒崎 湊かなえさんの作品って、同じシーンを別の人の視点から語り直すことで違った景色が見えてくる構成が多くて。この作品でも、同じシーンを視点を変えて演じることが何回かあったので、そこは新鮮で面白かったです。あとは特に湊かなえさんの作品だからといって何かを変えたということはないかな。
松本 基本の心持ちは同じだよね。
荒木 それこそ小さい頃に湊先生の作品に出させていただいたことがあったんですけど、じゃあそのときと同じかというと、やっぱり作品が違うから、また全然別だったし。
山中 演じた役を掘り下げていくという意味では、他の作品と同じです。ただ、今回に関して言うと、どの役もそれぞれ特殊な過去を背負っているので、そこを意識したらおのずといつもより芝居のトーンが下がっていったところはあったかなと思います。

秋谷 そうだね。重厚でありながら繊細な作品だったので、自分が役のいちばんの理解者でなければいけないという意識は強かったと思います。
荒木 それは本当にそうで。僕の演じた白瀬透は二原色の色覚の持ち主だったので、彼の目からはどんなふうに世界が見えているんだろうっていうのはいろいろ調べました。
松本 僕の演じた蒼は、いつもニコニコしてるけど、その笑顔の下で何を考えているのかわからない男の子。そういう人が本当は何を考えているのか知りたくて、地元の知り合いで蒼みたいな子がいたから、ちょっと電話して「本音ではどういうこと思ってるの?」みたいなことを聞いてみたりしました。
秋谷 あとは、これは湊先生の作品だからかどうかはわからないですけど、常に役と自分が同居しているような感覚はありました。今まではカメラの前で役という鎧を着ている感覚だったんですよ。でも今回は役を理解しようと徹底的に内面にフォーカスしたせいか、常に秋谷郁甫でもあり、黒岩大でもあるって感じだった。そういう感覚を味わえたのは初めてで、いい経験になりました。
──鎧を着ている感覚という言葉が出ましたが、役に対するアプローチって役者さんによって千差万別だと思います。せっかくですので、それぞれどんなふうに役をつくっているのか、この場で話してもらっていいですか。
黒崎 僕はスウェットを着る感じですかね。
──鎧に対抗した(笑)。
秋谷 ちょっと柔らかいね(笑)。
山中 そこまで芝居を固めないってこと?
黒崎 そう。動きやすさ重視。

松本 でも煌代のお芝居って本当にそんな感じよな。
山中 確かに。自然体な感じだよね。
秋谷 ナチュラルにいるよね、あなたは。
黒崎 そうね。そうかも。
松本 限りなく自然だった。一緒にいて、煌代なのか翔なのかわからなくなるくらい。
秋谷 みんなはさ、役をつくるのに絶対このこだわりだけは曲げないみたいなのってあるの?
山中 僕も逆に聞きたい。
黒崎 ない。
秋谷 俺もない。作品によって全然変わるし。
荒木 みんなないんじゃない?
山中 僕はどの役でもノートは書いてます。
秋谷 へえ。
山中 情報を整理するために。役の生い立ちとか想像して書くけど、でもそれが役に立ってるかはわからないって感じ。
黒崎 めっちゃ一緒かも。俺もケータイでメモするけど、あんまり見ない。
荒木 僕は原作とか脚本を読んだときに、勝手に頭の中で自分の映像が流れるんです。それに従って演じている感覚かも。
秋谷 俯瞰で読むってこと? すごいね。
山中 それは子役のときからずっと?
荒木 ずっとですね。

秋谷 でもさ、頭の中で思い描いた自分のカット割りが、現場に行ったらまったく違うってことは普通にあるじゃん? そういうときはどうするの? あ、わかりましたって感じで合わせるの?
荒木 そうですね。
山中 カット割りを見ているというより、そこにいる自分を見てる感じ? それこそ映画を観てるみたいに。
松本 一人称じゃないんや?
荒木 一人称じゃないです。
松本 俯瞰で見たものを演じているというか、ちょっと再現に近い感じ?
荒木 そうかもしれない。
──面白いですね。他のみなさんは一人称なんですか。それとも俯瞰ですか。
秋谷 僕は準備段階では俯瞰だけど、カメラの前に立った瞬間、準備してきたものを担保しつつ、一旦忘れて、目の前のことにリアクションをとっていくということを最近は心がけています。

山中 僕は、今回のオーディションで郁甫にいちばん衝撃を受けました。
秋谷 へえ。なんで?
山中 演技がうまいとかそういうのはわからないですけど、郁甫のお芝居を見たときに「うま!」って思いました。
黒崎 どういった部分が?
山中 わかんないの、それが。ただ素人目線で、間のとり方とか自然すぎて、上手だなって。
秋谷 うれしい。
──俳優に対する褒め言葉も人それぞれですよね。うまいと言われることがうれしい人もいれば、そうじゃない人もいると聞きます。
松本 僕、正直『うまい』と言われると少し複雑で。昔、言われたことがあるんです、「うまくやろうとしてるのが見える」って。こなすのが上手だよね、という意味だと思うんですけど、それがすごく嫌で。でも、当時は確かに“こなそう”としていた部分もあって。
山中 心当たりがあるからこそ。
松本 そうそう。だから、「面白いことをするね」って言われるほうがうれしい。

黒崎 わかる。俺も面白いがいいな。
荒木 僕はあんまり気にしないです。うまいと言われるのはうれしいことではありますが、自分だけ褒められるよりも作品全体を褒められるほうがうれしいです。
秋谷 いいシーンだったねとか。
荒木 うん、そういうのとか。
秋谷 俺もそう思うんだけど、結局うまいねって褒められたら、「(笑顔を隠しきれない表情で)ウィッス」ってなる(笑)。
山中 僕も役者で褒められたらうれしい。
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