ドラマ『にこたま』主人公とは正反対?素直な人間性に迫る
瀬戸康史が語る“イメージできない役”の演じ甲斐、デビュー20周年を迎えた今の仕事バランスとは
2026.01.30 18:00
2026.01.30 18:00
レンズを向けたフォトグラファーに向かって、「それ、フィルムですか」と尋ねる。シャッターを切られている間も、当の本人はフィルムカメラに興味津々。てっきりフィルムカメラを持っているのかと思ったら、「いや、持ってないです」とあっさり答える。その飄々とした感じがなんとも肩の力が抜けていて、気づけば周りがなごやかな空気に包まれていた。この愛され感が、彼の魅力の一つでもある。
俳優・瀬戸康史。デビュー20周年を迎えた彼は、ドラマ、映画、舞台とボーダレスに出演作を重ね、どの作品でも絶妙なポジションで存在感を示している。
そんな瀬戸が現在出演する作品の一つが、FODオリジナルドラマ『にこたま』。人気漫画家・渡辺ペコの同名コミックを実写ドラマ化した本作で、同棲中の恋人・浅尾温子がいながら職場の同僚・高野ゆう子と関係を結び、彼女との間に子どもができてしまう“ダメな男”岩城晃平を演じている。
だけど、そんな晃平のダメさも瀬戸の手にかかると、なんとも憎めない愛嬌になる。はたして瀬戸康史は、男のズルさと優しさを凝縮したようなキャラクターにどう挑んだのか。話を聞いていくうちに見えてきたのは、晃平とは正反対の、潔くて率直な人間性だった。

晃平を演じる上で見え方は意識しなかった
──まずは原作を読んだ感想から聞かせてください。
付き合っている恋人とは別の女性との間に子どもができるという、大変なことが起きているんですけど、それが軽快に描かれていて。登場人物たちはこの事実とどう向き合い、それぞれの道を進んでいくのか。決断を見守るうちに、気づいたら最後まで読み終わっていたという感じでした。心に刺さるけど、痛いというより、どこかすんなり溶け込んでいくような感覚があって、すごく不思議な作品だという印象を受けました。
──瀬戸さんは、まさにその当事者である晃平を演じます。率直に、晃平についてどう思いましたか。
最低だと思います。晃平は変な愛嬌みたいなものがあって。きっとこれまでの人生も今回ほど大きな事件はなかったにせよ、何かしら怒られるようなことがあったはずなんです。でもそれを、彼は持ち前の愛嬌ですり抜けてきてしまったんじゃないかなと。そういう意味では、ズルいところもあると思います。
ただ、だからと言って人間的にだらしないかと言われたらそうではなくて、晃平は晃平であっちゃんに対しても高野に対しても誠実に向き合おうとしている。妊娠がわかったからといって逃亡するようなやつじゃなくて良かった、というのはせめてもの救いですね。
──高野の妊娠を知った晃平は、自分一人では抱えきれず、結局温子にすべて打ち明けます。あの行為について、瀬戸さんはどう思いましたか。
受け止める人数を増やしただけだっていう、あっちゃんの気持ちもわかります。でも実際、いつまでも隠しているわけにはいかない。だから、言わないよりは言ったほうがいいんじゃないかなと僕は思いました。晃平がお金持ちで、あっちゃんに黙っていても経済的に援助ができるとかなら話は別ですけど、そうではない以上、いつかは言わなきゃいけないこと。そういうことをしてしまった時点で、もうあっちゃんを裏切っているわけですし。このまま黙っていても、いつかバレたときに余計にあっちゃんを傷つけることになる。だから、どういう伝え方が良かったのかは別として、あっちゃんに事実を明かすこと自体は仕方ないのかな、と思います。

──もし瀬戸さんが晃平の友達だったとして、晃平から彼女以外の女性との間に子どもができたんだけど、と相談されたら、なんて返しますか。
なんて言うんだろうなあ……。正直、その時点でその人と友達であることが嫌になってくるんですけど。
──まあ、そうなりますよね。
でも、やっぱり誰をいちばん大切にしたいのか、誰とこれから生活を共にしていきたいのかを考えたら言うしかないのかな。あ〜、でもそのシチュエーション嫌ですね。もう僕が逃げたいです(笑)。
──では、そんな晃平をどう演じていこうと考えたのかを聞いていきたいと思います。こういう役柄って視聴者に嫌われないように演じるか、ちゃんとダメじゃんコイツと思ってもらうか、いろんな選択肢があったと思うんですけど、瀬戸さんはどういうふうに見えたらいいなと考えましたか。
そこに関しては、どう見えてもいいように演じていたというのがいちばん正しいかもしれないです。嫌われないように演じたというのも事実だし、台本に書いてある通りに演じたというのも事実。そこで、こう見せたいとどこかに照準を合わせてしまうと、お芝居ではなくなっちゃう気がしています。
別に晃平は嫌われないように生きているわけでもないし、嫌われたいと思って生きているわけでもない。変に自分の思惑を入れてしまうと、晃平ではなくなってしまう。だから、見え方とかは意識していなかったです。

──普段から瀬戸さんは、作品内における自分の役の見え方や立ち位置、役割ってあまり意識しないタイプですか。
まったく意識しないことはないかな。それこそカメラの前に立ったときに、カメラの抜けとかを考えた上で、どの立ち位置にいるのがいちばん効果的だろうということも考えています。計算が100%ないかと言ったら、そんなことはない。技術的なことも頭に入れた上で、でもお芝居をするときはとらわれないようにしているという言い方が近いかもしれないです。
──カメラが回れば、晃平として目の前で起きたことに対処していくというか。
そうですね。あと、晃平に関して言えば、考えていることが顔に出てしまうキャラクターなので、そこのリアクションに関しては普段よりもクイックに、ある意味わかりやすくやるというのは意識していました。
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