2026.01.29 18:00
2026.01.29 18:00
半径数メートルの世界を見つめ直しています
──今回、監督とはどんなやりとりを?
難しかったのが、初日からずっと「もっと淡々と、平坦にお願いします」と言われ続けて。監督の求めている表現が、表情ではなく、空気で感情を出すというものだったんです。
ただ、いくら役を演じているとはいえ、そこに比嘉愛未も絶対いるんですよ。もうすでにお気づきかと思いますが、素の私は身振り手振りが激しく、わりと感情の起伏があるタイプ(笑)。自分とは正反対の人物を、どう自分の中でつくっていくかに苦戦しました。
でも、やっていくうちに徐々に掴めてきて。そうすると、今度はこういうところでこういう感情が湧くんだって、最初に台本を読んでいたときにイメージしていた以上のものが自分の中から生まれてきたりして、それがすごく楽しかったです。
今回、私がトライしたのは、表現しすぎない美徳。むしろ高野はどう思っているんだろうと気になるくらいのほうがミステリアスな感じがして惹きつけられるのかな、と。どこか掴みきれないところも彼女の魅力だと思って、とにかく引き算引き算で演じるように心がけていました。

──そんな引き算の中に、つい漏れ出てくる人間らしい温度感みたいなものもあったりしましたか。
高野はクールな人なので、感情がないように見えがちですけど、決してそうではない。ただの冷徹な人に見えないようにしたいなとは思っていました。そこで重要になってくるのが、母親とのシーンです。ただ、そこも監督からは「抑えて」と言われていて。リアルの私だと、母親に対してわりとはっきり言っちゃうほうなので難しかったです。でも、世の中を見渡せば決して罵り合うことはしないけど、ピリッとした緊張感が常に張りつめている親子もいるのかなと思って。自分だったら考えられないような親子関係を疑似体験できたのは面白かったです。
──自立しているように見える高野が内側に抱えている揺れや寂しさに共鳴する人も多いと思います。
そこは原作を読んだときから私も感じていた部分なので、丁寧に演じたいなと思いました。私は長女ということもあって、家の中ではどうしてもお姉ちゃんとしての役割を背負いすぎてしまって、うまく甘えられなかったり、つい我慢してしまうところがあって。赤の他人ではないからこそ生まれる高野と母親のギスギスした空気感には共感できるものがたくさんありました。
今回は、そうした接点を見つけつつ、でも自分を重ねるわけでもなく。自分の中に別物として高野という人物をつくり出していくような感覚でした。それは、今まで求められてきた演技法とはまったく違っていて。だからこそ、すごく楽しかった。これまで培ってきたものを一旦まっさらにして、ゼロからやり直すような感じです。私もこの世界に入って20年になりますが、経験を重ねてきてなお新しい刺激や学びを得られることがうれしくて、高野を演じることで私自身も成長させてもらいました。

──では、そんな比嘉さん自身のことを聞いていきたいと思います。高野は「〜〜したい」より「〜〜すべき」に従って生きてきた女性です。比嘉さんは「〜〜したい」に素直なタイプですか。それとも「〜〜すべき」に囚われてしまうタイプですか。
今までは「〜〜すべき」でした。元来の性格が頑固で真面目すぎるところがあるんです。その自覚はあって。今はそんな自分をぶち壊したい絶賛反抗期の真っ最中です(笑)。定期的にそういう周期がやってくるんですよね。事務所を移籍したのも、その一つ。自分の半径数メートルの世界を見つめ直す作業を今実践しています。
──別のインタビューで定期的にリセット願望が湧いてくるとおっしゃっているのを読みました。
そうなんです。なので、2年前に引っ越しをして、それを機に8割がた断捨離をしました。この絶賛反抗期の始まりは、そこですね(笑)。ただ反抗期といっても尖るわけではなくて。イメージとしては、自分を削ぎ落とすみたいな。そして、空いたスペースに新しい自分を入れたくなる。根が真面目で安定志向なことがわかっているからこそ、そういう自分をもう一人の自分が「つまんなくない?」って耳元でささやく感じです(笑)。きっとまた何年後かにリセットしたくなるんでしょうけどね。でも、そういう衝動に抗わず、むしろ面白がっていきたいなと思っています。

──そういう意味では、今、いちばん素直になりたい「〜〜したい」はなんですか。
自分の思っていることを自分の言葉で伝えることに素直でいたいです。私、人とお話しするのが好きなんですよ。こういう取材の場って自分を見つめ直すいい機会だと思っていて。いろいろ難しい世の中ではありますが、人を傷つけない言葉であれば、もっと自分の言葉に自由でいたい。せっかく言葉を話せる生命体に生まれたわけですから、相手が年上年下関係なく、もっとフラットに自分の感性を伝えていきたいし、いいセッションがしたい。そこを今楽しめているのは、それこそ「〜〜すべき」という自分の固定観念を少しずつ解いているからだと思います。
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