2026.01.29 18:00
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男前な人だ。大きな瞳がこぼれ落ちそうなくらい、くるくると表情を変えて話す彼女の姿は、ドラマや映画で見る清楚で知的なイメージより、ずっとたくましくて、生命力がある。比嘉愛未は、とにかくパワフルで、自分を取り繕おうとしない、本音の人だった。
好評配信中のFODオリジナルドラマ『にこたま』で演じたのは、一夜の関係で同僚・岩城晃平との子を妊娠する弁理士・高野ゆう子。晃平には同棲中の恋人・浅尾温子がいる。高野は不測の妊娠に戸惑いながらも、晃平の力は借りず、一人で産むことを決意する。
一見すれば、強くて自立したクールビューティー。でも本当は、他人にSOSを出すのが下手な、不器用で、頑固な、等身大の女性。そんな高野に、比嘉自身も「いちばん共感できた」と想いを寄せる。
なぜなら、彼女の中にも規範意識に囚われて生きてきた自分がいたから。でも、今はそんな真面目すぎる自分をぶち壊している最中だという。「絶賛反抗期」と明かす比嘉愛未の“なりたい自分像”とは──。

人間はみんな役者だと思っている
──原作者の渡辺ペコ先生といえば、『1122(いいふうふ)』『恋じゃねえから』など鋭い心理描写で知られる漫画家さんです。この『にこたま』も妊娠を題材に、女性たちの本音がリアルに描かれています。
今回お話をいただいてから原作を読ませていただいたのですが、もう一気読みでした。先生が『にこたま』の連載を始めたのは今から16年前。でもまったく古さを感じさせないというか、今の世の中を見抜いていらっしゃったのかなと思うくらい、時空を超えていますよね。2010年代って、女性の描かれ方も今とはまたちょっと違っていたと思うんです。でも『にこたま』に出てくる女性たちはすごく現代の空気にマッチしている。そこに衝撃を受けました。
──『にこたま』は特に女性からすると突き刺さるものが多い作品だと思います。
私が読んでいていちばん共感できたのは、高野でした。恋人のいる男性と関係を持ったことに罪悪感がありつつ、自分のお腹に宿った命に対して、高野は特別な愛情を抱くようになる。高野って冷静で淡々としていて自立しているイメージですけど、ちゃんと葛藤しているんですよね。ただ、それを人に見せないだけ。そこが高野のいいところでもある。
そして、自分で産むことを決めたら、相手に金銭面ですがることもなく、淡々と出産に向けて準備を進めていく。その潔さが魅力的で、こういう生き方をしたいと思える、現代を生きる女性のモデルとなるような強さを持った人だと思いました。
──彼女の強さは、もともと持ち合わせていたものか、あるいは母になったことで生まれてきたものなのか、どちらだと思いましたか。
後者だと思います。本来、高野って弱い女性なんですよ。母親との確執を抱えていて、それが彼女の性格に影響を与えている。淡々としているのは、自己防衛でもあると思っていて。そんな高野が新たな命を宿したことで成長していく。妊娠は、彼女の人生の大きなターニングポイントだったと思います。
ただ、この作品の面白いところが、そういうターニングポイントを決してドラマティックに描きすぎない。温子と晃平の穏やかな生活も、高野の妊娠によって一変していくわけですが、何か大きな修羅場があるというよりは、粛々と生活を営む中で、みんな悩み、選択していく。そういう複雑さが、この作品の味わい深さになっていますよね。決して高野が悪い、晃平が悪いというわかりやすいお話じゃないんです。

──人生って二元論で語れるものじゃないですもんね。
そうなんです。昨今、いろんなドロドロの不倫劇や復讐劇があって、その需要があるのもよくわかりますが、この『にこたま』はまたそういったジャンルとは毛色が違うので、きっとみなさんにも新たな角度で楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
──比嘉さんのおっしゃる通り、まっとうな社会人を装っている裏側で、高野たちみたいにとんでもないことを抱えて水面下でジタバタしている人って多いんだろうなと思います。
言わないだけでね(笑)。私、人間はみんな役者だと思っているんです。嘘をつかない人なんていないじゃないですか。悪い嘘もあれば、優しい嘘もあって、相手に遠慮して口をつぐむこともある。みんな何かしら演じながら日々を営んでいるんだと思います。

この作品は、そのバランスが絶妙なんです。悲しいから泣く、怒ってるからわめき散らすという、簡単な話じゃない。一筋縄ではいかない感情表現が渡辺さんの世界にはあって。だからこそ、演じる私も自分の中にないものを引き出してもらいましたし、瀬田(なつき)監督も妥協をしない方だったので、悔いなくぶつかっていくことができました。
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