2026.01.13 19:00
2026.01.13 19:00
2026年に30歳を迎える俳優・高杉真宙。10代の前半に活動をスタートさせた彼は、人生の半分以上の時間をかけて、多彩なキャリアを築き上げてきた。それでもいまだに仕事の際には緊張するのだという。彼の真摯な姿勢の表れなのだろう。
そんな高杉の主演最新作『架空の犬と嘘をつく猫』は、30年という時間をかけて、ひとつの家族の姿を静かに描き出す群像劇だ。主人公・羽猫山吹を演じた彼は、「他者に対して優しくなれる映画」だと語る。
家族とは何か。優しさとは、どこから生まれるのか。作品の話を軸に、高杉の思考と人柄に迫った。

現実の人生では体験できないからこそ、優しさについて知ることができる
──胸に沁みる、家族映画の新たな名作が誕生しましたね。
ありがとうございます。嬉しいです。
──はじめて脚本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
バラバラな家族の物語。全体を俯瞰して読んでみて、まずそう感じました。一読した時点での印象ではありますが、すごく好きな作品になりそうだと思いましたね。そして繰り返し読んでいくうちに、実際にどんどん大事な作品になっていきました。
──演じるキャラクター視点ではなく、まずは物語全体を捉えたと。それは普段からの高杉さんのスタイルですか?
そうですね。役者さんによっては最初から自分の演じる役の視点で読む方もいますよね。でも僕はまず、全体像を掴みたいと考えているんです。
──そこからしだいに、主人公・羽猫山吹の視点に移っていったわけですね。このキャラクターに関しては、どのように捉えていたのでしょう?
山吹というキャラクターの核は、彼の“過去”にこそあります。だから演じる際にはこの過去にフォーカスしていくべきだと考えました。彼はよく「優しい」と言われる人物ですが、実際のところはそうじゃない気がする。彼は半ば自覚的に、“優しい人間でなければならない”と考えて生きている。そう感じていました。
──彼と一緒に映画の旅をしていると、優しさとは何なのかと考えさせられます。
そういうふうに受け取っていただけて嬉しいです。
──これは家族の群像劇を描いたものですが、山吹の立ち位置についてはどう捉えていましたか?
山吹は主人公ではありますが、彼が軸となってストーリーが動いていくわけではありません。山吹以外の人々の物語が絡み合って、大きなひとつの物語として立ち上がっていく。そう感じていました。
──たしかに、それぞれのキャラクターに物語がありますね。
ええ。本作の構造的に山吹の視点を介して物語は進んでいきますが、彼の心情だけで語られるものではありません。山吹が時間をかけて家族というものが何なのかを知っていくように、観客のみなさんも彼の視点を介して、ひとつの家族のカタチに触れていくことになる。羽猫家と観客の間に立っているのが、山吹というキャラクターなんだと思います。

──観客の立場として、とても納得です。
人は誰しも自分の視点だけでしか生きていけない。でもこれはフィクションだから、観客のみなさんは山吹以外の人間の感情をのぞくことができる。現実の人生では体験できないことです。だから僕は、優しさについて知り、他者に対して優しくなれる映画だと思うんです。
──人間同士の関係にこそ焦点が当てられていて、その結び方によって物語が進展していきますよね。しかも30年という長い時間をかけて。山吹の幼少時代のシーンが想像以上に多くて、最初は驚きました。高杉さん、全然出てこないなって(笑)。
そうなんです。僕、全然出てこないですよね(笑)。でも山吹というキャラクターの核は彼の過去にこそあるとお話ししたように、幼少期のパートがとても重要です。家族の物語を立ち上げていくにあたって、その土台となるものですから。山吹の幼少期を演じた立花利仁さん、少年期を演じた堀口壱吹さん、このふたりが幼い頃の山吹を大切に生きてくれたからこそ、僕が演じる大人になった山吹の存在が際立っていると思います。
──幼少期パートを演じていたおふたりとお会いする機会はあったんですか?
いえ、一度もなかったと思います。撮影日が被ることもありませんでしたし、ふたりの撮影が終わったあとに僕は現場入りしたので。

──山吹が幼い頃のシーンから順番に撮っていったんですね。
はい。なので撮り終えた素材を事前に見せていただきました。
──高杉さん自身の中で膨らんでいた山吹像とのズレを感じたりはしませんでしたか?
ありませんでした。素材を見て何かを変えようとも思いませんでした。むしろスッとバトンを受け取ることができましたね。
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