ヨーロッパ企画の新作舞台で感じた役者人生初の楽しさとは?
新しい現場には、いつも初心で。金子大地がマイペース主義でも“挑戦の道”を選ぶ理由
2026.01.05 18:00
2026.01.05 18:00
自信は年々なくなっていっている気がします
──稽古は京都でやっているんですよね。金子さんにとっては単身赴任的な感じですが、京都生活はどうですか。
いや、もう東京にいるのとあんまり変わらないです。基本、ずっと引きこもってます(笑)。
──せっかくの京都なのに、何か京都ならでは的なこととか。
それが特にないんですよ。稽古に行くときだけ外に出て、あとはもう帰ったらずっと家にいるだけ。YouTube観たり、映画観たりしたら、1日が終わってる。これだけ京都にいることもあまりないので、京都でしかできないことをちょっとはやらなきゃなと考えてはいますけど……。

──それはこれまで京都に何度も行ってて、すっかり慣れているからということでもなく。
なくです(笑)。シンプルにただただ家から動かないだけです。稽古場とウィークリーマンションを往復しているだけの生活になってます。でも僕、東京にいるときからずっとそんな感じなんですね。基本、家から出ないです。
──今回の舞台は冒険がテーマということなので、金子さんの冒険心について聞こうと思ったんですけど、今のお話を聞く限りは。
まったくないですね(笑)。
──ということになりますね(笑)。
新しい環境とかコミュニティに飛び込むのが本当に苦手なんです。
──俳優のお仕事なんて、常に新しい環境やコミュニティに飛び込むことだらけじゃないですか。
そうなんですよ。本当苦手で、慣れなきゃなと思いつつも無理するのも疲れちゃうので、最近はもう自分のペースでやっています。
毎回作品が変わるたびにいろんな方々と関わること自体は嫌いではないんです。ただ、とにかく性格的にビビリなので、冒険するのはあんまり得意じゃないかもしれないです。
──とはいえ、もうこの世界に飛び込んで10年が経ちました。現場に揉まれていく中で培った、新しい環境に溶け込むためのテクニックみたいなものってあったりしませんか。
本当にないんです。これはもう変わらないですね。東京来てから10年経った気がしないです。いいことも悪いこともそれなりに経験して、ありがたいことにいろんな役を演じさせてもらいましたけど、初めての現場に入るときはいつも初心の気持ちでやっています。

──と言いながらですが、たとえば何か選択肢があるときに、安牌の道と難しくてチャレンジングな道、選ぶとしたらどちらですか。
それで言うと、難しいほうを選んじゃう気がしますね。めっちゃ苦手なんですけどね。二択ってなったらそっちを選んじゃってます、無意識のうちに。
──それはなんで難しいほうの道を選んでしまうんだと思いますか。
……そっちのほうが面白いから、かな。
──これまでのキャリアの中で、できるかどうかわからないけど挑んでみた一番の冒険はなんですか。
初舞台の『ヘンリー八世』じゃないですか。吉田鋼太郎さんの演出を受けるのも緊張しましたし、阿部寛さんと二人きりのシーンが多かったのもプレッシャーでした。しかもシェイクスピア。今まで舞台に立ったことのない人間に、この戯曲がやれるのかという不安はありました。
──稽古が始まったばかりの頃のことって覚えていますか。
舞台の立ち方も声の出し方も全部わからなくて、本当に鋼太郎さんに全部教えてもらいました。それこそ最初は鋼太郎さんが僕の代わりに僕の役を演じてみせていただき、鋼太郎さんを真似することから始まりました。
でも、2年後に再演があって、そのときは一切何も教えてくれなかったんですよね。じゃあやってみろ、という感じで。だから、初舞台も冒険だったけど、本当に冒険だったのは、自分で考えて演じるという課題を与えられた2回目のほうだったかもしれないです。
──見本を与えられないというのは、それだけ鋼太郎さんが金子さんを信頼なさっていたからなんでしょうね。
どうなんでしょうね(笑)。試されていた気がします。だから、不安でした。別にダメ出しもないし、良かったとも言われない。鋼太郎さんに聞きに行っても何も教えてくれないんです。たまにボソッと何か言うくらいで。幕が開いてからも、「ダメ出しください」って言ったら「今日と同じ感じでいいよ。明日もよろしく」だけ。1回目のときとは全然違う鋼太郎さんでした。

──近年の金子さんの俳優としての成長は目覚ましいものがあります。『晩餐ブルース』なんか本当にその世界に実在している人としか思えない呼吸感があって。どうやって演技を磨いてきたんだろうというのが気になっていました。
いやいやいや、僕はもう演技の上手い下手とかよくわかっていないです。もしそう見えたのだとしたら、映像に関しては監督がいい感じに切り取ってくださったおかげです。僕自身は、本当の実力ってなんなんだろうって毎回思います。全然です、まだ。
──自信を持ってカメラの前に立っているわけではない。
ないですね。むしろ自信は年々なくなっていっている気がします。経験してきたことは確実に自分の中に蓄積されていると思うんですけど、いいお芝居ってなんなんだろうというのは永遠の課題というか、わからないですね。
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