2025.12.27 17:00
2025.12.27 17:00
少しずつ役が立ち上がっていく実感があった
──池端さんも高校生なので栞とは同世代ですよね。彼女のキャラクターをどのように捉えていましたか?
栞は現実的で大人びていて、つねに冷静さを保っているキャラクターです。だから魂の話なんかされても、そうすぐには飲み込めない。でも同時に栞は、いまも莉花がどこかにいるという希望や願いも持っています。だから現実的である一方で、素直な性格なんだと思っていました。
──台本を読み込んでいく過程で栞との距離が縮まり、理解していけたのでしょうか?
最初のうちはよく分かりませんでした。でもひとりで読み込んだり、監督や共演者のみなさんとの読み合わせを重ねていく中で、栞のバックボーンが見えてきました。栞はいつから莉花と仲が良いのか、普段はどこに遊びに行っているのか、とか。ひとりで考えるだけでは見えてこないものも、時間をかけてみんなと一緒に見つけにいったんです。

──池端さん自身と栞との距離を埋めていったわけですね。彼女との共通点はありましたか?
現実的なところは近いものがあるかもしれません。よく「落ち着いているね」と言われるのですが、自分でもたしかにそうなのかもしれないと思ってます。私は周囲からどう見えていて、どういう性格の人間だと思われているのかを、冷静に受け止めているところがあるんです。こういうところはちょっと栞っぽいのかなって。
──池端さんも現実的な性格だと。そう感じるようになったのは、このお仕事をはじめてからですか?
そうですね。でも思い返してみれば、小さい頃からよく言われていました。学校の先生や同級生の保護者から「しっかりしてるね」って。嬉しい反面、本当にそうなのか自分ではまだ分かっていません。
──自分がどう見られているのかを客観的に捉えることができているのは、たしかに大人だと思います。
そうなんですかね……そうなのかもしれませんね。

──冷静な栞は基本的に感情的になることがありませんが、あれは監督からのオーダーですか?
坂本監督の演出ですね。これがけっこう大変でした。本読みがはじまったとき、私たちはいったいどういう感じでやればいいのか、掴めていませんでした。そこで坂本さんから、一度すべてのセリフを棒読みで読むように求められたんです。一切の感情を込めず、とくになにも考えず。ただそこにある言葉を口にするだけでいいのだと。
そうして棒読みでの読み合わせからスタートして、各キャラクターに必要な要素を少しずつ加えていきました。たとえば、栞が杏菜に対して抱いている不信感であったり、莉花に対して持っている愛情だったり。ちゃんとカメラの前に立てるよう、丁寧に導いてくださいました。
──まず役のフラットな状態を作って、そこに絶妙なさじ加減で感情を乗せていったんですね。
そうですそうです。
──池端さんとしては新鮮なアプローチでしたか?
すごく新鮮な体験でした。少しずつ役が立ち上がっていく実感があったんです。

──変わった作品ではありますが、これは“学園モノ”ですよね。現場の空気はみなさんとどのようにして作っていったのでしょう。
美絽と虹子とはプライベートでも会うほど、本当に仲良しなんですよ。今年の夏は3人でパスタとかき氷を食べに行きました。撮影現場でも一緒に過ごす時間がたくさんあったので、カメラが回っていないときは他愛のない話ばかりしていましたね。
──どんなお話ですか?
「普段はどういうメイクするの?」とか。撮影時はすっぴんに近いようなナチュラルメイクだったので。あと、ご飯の話とか(笑)。なんでもないガールズトークをしていました。
──まさに学園のひとコマですね。
そうなんです。ああいう時間があったからこそ、カメラの前でも自然体でいられたんだと思います。

──みなさんとの風通しのいい関係性は意識的に築いていったのですか。それとも自然と?
自然な流れだったと思います。あのふたり、とにかくよく笑うんですよ。とくに虹子は目が合っただけでふっと笑い出すので、それにつられてみんな彼女のほうを見て笑うんです。自然とクラスメイトの感覚を持つことができました。
──映画を観るとシリアスな印象を持ちますが、実際の現場は和やかなものだったんですね。
とっても和やかで楽しかったです。
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