2025.12.27 17:00
2025.12.27 17:00
飾らず、裏表がまったくない。池端杏慈はそういう人だった。聡明な空気を纏いながらも、屈託のない笑顔で周囲を和ませてくれる。
2022年の俳優デビューから3年、池端にとって3作目の出演映画『白の花実』が公開された。同作は、長編オムニバス映画『21世紀の女の子』(2019年)内の一篇「reborn」などを手がけてきた坂本悠花里監督による長編劇場デビュー作。とある寄宿学校でひとりの女子生徒が自ら命を絶ち、彼女の遺した“日記”と彼女の“魂”が、周囲の生徒たちの心を揺さぶるさまを描いた作品だ。池端は、自ら命を絶つ莉花の親友の栞を演じている。
幻想的で、独特の世界観を持った作品が、いったいどのようにして生まれたのか。自身の演じる栞というキャラクターを、どう捉えていたのか。そして現役高校生でもある彼女にとって、いま大切にしていることはなんなのか。じっくりと話を聞いた。

この物語を映像でどのように表現するのか想像できませんでした
──本作への出演はオーディションで決まったそうですね。
そうです。決まったと聞いたときはすごく安心しましたね。「よかった」って。
──“安心”が先に来たんですね。
オーディションには学校帰りに参加したんです。制服のまま。あのときの自分のありのままの姿を見てもらおうと思って。だから安心したんです。
──オーディションではなにか手応えのようなものがあったんですか?
いえ、それはとくになかったです。「このオーディションはいけたぞ」みたいに感じられたことは、いまのところほとんどない気がします。とにかくそのときのベストを尽くして、あとは願うばかりなんです。
──『白の花実』の台本も読んだのですか?
オーディション段階ではまだ仮のものでしたが、読ませていただきました。作品の世界観は閉じ込められていたものの、完成した作品とはかなり違いましたね。

──撮影に向けて完成した台本を読んだときの印象についてもお聞きしたいです。
独特の世界観を持った作品なので、不思議な感覚になりました。莉花という人間の死に触れて、杏菜も栞も大きく変わっていきます。杏菜は大人をはじめとする周囲の人々に対して最初のうちは敵意をむき出しにしますが、やがて逃げずに向き合っていくようになります。栞としては大切な幼馴染みの莉花がいなくなってしまった現実を受け入れられませんが、自分が目にしていたものがすべてではなかったのだと理解していく。この物語の軸になっているお話は、杏菜と栞の成長を描いたものだと捉えていました。

──すごく詩的な映像作品なので、台本にどのように言葉たちが綴られていたのか想像がつきませんでした。そのあたりはいかがでしたか?
本当にそうですよね。仕上がった映像は、私がイメージしていたものとだいぶ違いました。台本に記されていたのはセリフとト書きだけで、そこに細かい指示があったわけではありません。物語の途中で莉花の魂が登場しますが、これをいったいどのように表現するのか、私には想像できませんでした。杏菜役の美絽は深く関わりますが、栞を演じる私は違います。完成した映像を観なければ分からないことだらけでしたね。
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