映画『WIND BREAKER』出演の注目株が思う「強さ」とは
今は「一人分の力」じゃ満足できない。役者・濱尾ノリタカが“本気”を誓う理由
2025.12.16 18:00
2025.12.16 18:00
強い人とは、正直で気遣いができる人
──この映画を通して感じたのは、強さとは何かということでした。濱尾さんはどういう人を強い人だと思いますか。
正直な人は強いですよね。
──なぜ真っ先に正直というワードが浮かんだんでしょう。
正直でいられるのって強くないですか。

©にいさとる/講談社 ©2025「WIND BREAKER」製作委員会
──パッと正直が浮かんだということは、濱尾さん自身が正直であることを大事にしているのか、あるいは正直でいることをすごく難しいと考えているのか、どちらかかなと思って。
単純に、正直な人が好きというのはあります。正直でいることには責任が伴う。それを踏まえた上で正直でいられる人は強いし、僕もそうありたい。ただ、それと同じくらい気遣いができる人も強いなと思います。片方だけではダメで、正直と気遣いは二軸です。
──単に自分に正直なだけのゴーイングマイウェイは強さとは言えないと。
それだといろいろ壊れちゃうと思うんですよね。以前カッコいいってどういうことですかということを聞かれて、気遣いと答えた記憶があります。僕の中で正直で気遣いができる人は強くてカッコいい人なんでしょうね。

──2025年は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、連続テレビ小説『あんぱん』と視聴者層の広い作品への出演が続きました。傍目からは躍進の1年に見えますが、ご自身はどう捉えていますか。
大河も朝ドラもこの作品も、すべてご縁でいただいていること。自分はそれに対して、それこそ正直に、できる限りのことをして向き合ったに過ぎないので、自分の状況がどう変わったのかはわからないですね。ただ、少しずつですが、しっかり作品の真ん中に立てる人間になっていかければという思いは強くなってきました。
僕は「一人分の力」みたいな言葉が好きなんですね。これまでも「一人分の力」のことは絶対にしなきゃいけないと自分に言い聞かせていました。でも今は「一人分の力」以上のことができるようになりたい。そのためには、周りのみんなを巻き込む力が必要。今後はそういうことができるようなりたいし、できるようにならないといけないと考えられるようになったのは、今年1年でいただいたご縁のおかげだと思います。
──特にこういう作品づくりは個人の力だけではどうにもならないですもんね。
自分一人で考えられる量には限界がある。かと言って表層でしか話ができない人間を周りに置いても意味がない。大事なのは、ちゃんと信用できる人と手を組んでいくこと。そういう人ってお互いの間に共通認識があるから、細かい前提をすっ飛ばして、いきなり核心から話せるし、その分、より深いところまで掘り下げられるから、自分の考えもグッと広がる。強さの話に戻りますが、頼れる仲間が周りにいる人も強いなと思います。

──今年のお仕事と言えば椎名林檎さんの「松に鶴」のMVで踊ってたじゃないですか。あれも今までにない一面が出ていましたね。
ダンスに関してはもうやったことがなかったので、ひどいものだと思っています(笑)。ただ、恥ずかしさは一切ないです。一生懸命やることの恥ずかしさはない。椎名さんも「濱尾さんが全力で向き合ってる、そのがむしゃらさがいい」とおっしゃってくださったので。できないからと言ってスカすのがいちばん恥ずかしい。それだけはしないと決めています。MVもとにかくがむしゃらにやるということだけ決めて臨みました。
──なんで濱尾さんのところにお話が来たんでしょうね。
そうですよ。僕は基本ダンス苦手なんですから(笑)。でも椎名さんに踊ってほしいと言われたら、踊りますと言うしかなかったです(笑)。

──椎名さんになぜ自分なのか聞きましたか。
大河と朝ドラを観て、誰だこの子と思ってくださったみたいで、それで僕の写真集を買ってくれたそうです。普段、椎名さんがご自身でMVをつくることはないそうで。でも初めて写真集を買って、この子でこういうMVをつくりたいんだとプレゼンをしてくださったと聞いたら、もうやるしかないですよね。
──椎名さんの気持ちはわかる気がします。若手の俳優はたくさんいますが、その誰とも似ていない。濱尾さんは唯一無二感があります。
本当ですか。そう言ってもらえるのはうれしいです。
──ご自身では、自分の個性をどう捉えていますか。
自分ではわからないです。ただ、素直だとは思います。誰かの真似もしません。自分のことを考えるのに手一杯で、人の真似をする時間もない。あとは、友達が少ない。普段は家からも出ないし、基本一人で過ごしています。
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