出演中の劇団☆新感線公演への思い、34歳迎えた現在地とは
“誰も見たことがない自分”でいたい。早乙女太一が演じ手・作り手として目指す演劇像
2025.11.07 18:00
2025.11.07 18:00
三枚目の役だとやっぱりグッズの売れ行きが悪いです(笑)
──新感線作品では毎回いろいろな太一さんが観られる印象があるんですが、前回の『天號星』ではこれまでとはまた違うコミカルな面がたくさん観られたのが印象的でした。
あれはその前に、(劇団☆新感線の座付き作家)中島かずきさんに劇団朱雀で脚本を書いてもらったのが大きかったと思います。実は劇団朱雀だとどちらかというとふざけた役の方が多かったりするんで、そういう面をかずきさんが把握してくださって、引っ張り出して役にしてくれた。冷徹で強い殺し屋と、古田(新太)さんと中身が入れ替わることで全然違うベクトルの役、その2つができた。それはすごく大きかったし、うれしかったですね。

──太一さんの中では冷徹な殺し屋のような役と、劇団朱雀で見せている三枚目だったりコミカルな役、どちらの方がやりやすいとか好きだったりというのはあるんですか?
どちらがというのは特にないんですけど、「こういうイメージです」と見られていると、それと違うことをしたくなるだけです。カッコいいことは新感線でやらせてもらえたりしますから、自分の劇団では外部ではできないことをやりたいなとも思うし。あ、でも新感線では「いつか面白いこともさせてもらえるようになれたらいいな」とは思ってましたね。
それに、劇団朱雀では演出を自分がしてるんで、あまりカッコいいことをやりたくないというのが大きいかもしれないです。だって、自分でカッコいいところを作って、自分でカッコいいところを見せるって、ものすごくナルシシズムじゃないですか?(笑)。人から言われてやる分には全然抵抗ないんですけど、自分で提供するのって、なんかおこがましいなという気持ちがあり……。でも、それはそれでやらなきゃいけないことだともわかってるんですけどね。やっぱり僕はどちらかというと、他のみんながどうやったらカッコよく面白くなって、なおかつ役者たちがチャレンジできる場所であるか、というところが大きく課題としてある。だから、とりあえず自分は置いておく、という感じです。
──でもお客様は「カッコいい太一さんが見たい!」ってなりませんか?
三枚目の役だと「ハズレ引いたな」みたいな人はいると思います(笑)。大衆演劇なので、一幕と二幕の間や終演後にグッズの手売りを自分たちでするんですよ。大体は芝居の役の扮装のまま売り場に立つんですけど、やっぱ三枚目で出ると圧倒的に売れ行き悪いですよ(笑)。逆にカッコいい役だと列が伸びるっていう。やっぱりお客様の反応はダイレクトですね。

──そこはもう、劇団運営としての自分と、作りたいもののせめぎ合いなわけですね。
そうです。だから、三枚目の役でもグッズを買いに来てくれる人には、本当に「ありがとうございます!」といつも思いますよ。
──しっかり書いておきますね(笑)。でもそういう「作品や舞台を作るのが好き」というのを自覚されたのっていつからですか?
昔からですけど、はっきり自覚したのは演出とかを自分でもさせてもらうようになってからですね。一度、外部の舞台で自分は出演せずに演出だけという時があったんですよ。そういう時とかに、ああ、これは楽しいなと。
──大衆演劇の場合は「自分たちで作り上げる」部分が一般的な演劇よりも多い気がするんですが、それも関係するんでしょうか。
それはあると思います。専門家がいないので、脚本も演出も照明も、全部自分たちでやっていくしかない。そういうところで育ったから、自然とやっている感覚ではあるんですよ。
──やはり「座長」として、自分たちで公演をやるのは大変ですか?
でも、作品を作る事自体は好きなんですよ。大変は大変ですけど。
──2019年から劇団朱雀を復活されて、ご自身で公演を行われていますよね。そうなってから、外部の公演に参加するときの気持ちに変化はありますか?
劇団と違って僕個人への責任が少ないという点で、ゲスト参加だとより伸び伸びとできるようになりました(笑)。もちろん毎回刺激も受けていますけど、いちプレーヤーとして楽しんでます。
次のページ
