相思相愛の2人が『海辺へ行く道』で過ごした日々を振り返る
横浜聡子監督が惹き出した唐田えりかの自然体 夏休みのような撮影でわかった“お互いのこと”
2025.09.06 17:00
2025.09.06 17:00
『ウルトラミラクルラブストーリー』『俳優 亀岡拓次』など、その独特の世界観とユーモアを持つ作風で知られる映画監督、横浜聡子。2023年の『極悪女王』での体を張った演技が大きく話題となり、鮮烈な印象を残した唐田えりか。一見、意外にも思えるこの2人の組み合わせが実現したのが、映画『海辺へ行く道』だ。
原作マンガの世界観と横浜聡子ワールドがぴったりとはまり、ユーモアと多幸感があふれる作品となっているこの『海辺へ行く道』。撮影を通してすっかり仲良くなったという2人が語る、まるで“夏休み”のようだった撮影の裏側とは。

唐田さんにはいい意味での自由がある
──映画、大変面白く拝見させていただきました。何よりも最初のシーンで唐田えりかさんと剛力彩芽さんという『極悪女王』で話題になったお2人が出てきたのが掴みとしてすごく効果的だと思ったのですが、あれは狙ったものだったのでしょうか?
横浜 狙いではないんですよ、出来上がっていたシナリオがそういう始まりだったので。ただ唐田さんと剛力さんのお2人の組み合わせになったので、何かを思い出す方もいるだろうなと思いながら(笑)、撮影していました。
唐田 実は『極悪女王』の撮影が終わってから2、3日後の撮影だったんですよ。だから2人とも「こんなに早く再会できると思わなかったね」と言ってました(笑)。
──プロダクションノートを拝見すると、この作品はもともとプロデューサーの方がずっと映像化したいと思っていて、横浜監督が原作マンガの帯を書いていたのがきっかけで実現したとか。横浜監督は、この作品を映像化したいと思われていたのですか?
横浜 三好銀さんの漫画のファンで、連載当時からコミックビームで読んでいたんです。映画化したいけど難しい作品だな……と思いながら10年くらい過ごしていた時に、プロデューサーの和田さんから連絡が来て、それで始まりました。本当に偶然です。
──監督の作品を前から知っていると、今作の原作と監督の作風はピッタリ合っていると思ってしまいます。監督ご自身としては映画化が難しいと思われていたのはなぜですか?
横浜 今回、唐田えりかさんが演じたヨーコが登場するシーンとかもそうなんですが、原作にあるシーンをどうやって実写化するのだろう……と思っていたんです。“マジックリアリズム”という、どこか現実ではないような光景が多いので、そういう意味で難しくて。原作をアレンジするというわけにもいかず、最終的には「そのままやるしかない」という感じでした。

──ヨーコが巨大なサンバイザーを被って走っているシーンとかですね。
横浜 美術部さんに苦労して作ってもらい、絶妙なバランスで成立しています。
唐田 結構重さがしっかりあるんですよ。
──唐田さんは、今作の出演はいかがでしたか。
唐田 私も横浜さんの作品をずっと観ていたので、脚本をいただいた時、ここ数年の中でも特に「横浜さんがやりたいこと」が詰まっている作品なんじゃないかな、という印象を受けました。それでこれはすごく楽しい、面白い映像になりそうだぞと。私が演じた役もすごく自由度が高くて可愛らしい役でしたし、のびのびと演じることができたらと思いました。撮影場所も小豆島だったので、夏休みに行く感覚でやらせてもらった感じです。

──唐田さん演じるヨーコが出てくる最初のエピソードは、映画全体のトーンを観客に教えてくれるとても重要なパートだと思います。唐田さんをキャスティングした理由は?
横浜 作品はもちろん拝見していて、すごくいい俳優さんだなと思ってたんですよ。でも私も作品をたくさん撮っているタイプではないので、なかなかお会いできないなと思っていた時に、この『海辺へ行く道』が立ち上がってきて。ヨーコという役は、いつの間にかどこか行っちゃいそうな自由さや軽やかさがある役なんですよね。唐田さんのお芝居というか、存在自体が私にとってミステリアスで「この人はどこへ行くか分からない」という、いい意味での自由があるなあと。そういう、自分の中での唐田さんのイメージが役に合ったのと、単純に唐田さんという俳優が好きだった、という理由です。
唐田 最初にオーディションというか、顔合わせをさせていただいたんですよ。その後どうなるか……という感じだったんですけど、決定のお話が来た時はシンプルにすごく嬉しくて。結果を待っている期間もマネージャーさんに「横浜さんのやつ、どうなりましたか?」と細かく聞いていたくらい(笑)決まったらいいなとずっと思って待っていたので。
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