映画『見える子ちゃん』の主演秘話、実感する内面の変化とは
何もできなくても、私にはお芝居がある。原菜乃華が「俳優を続けてきたこと」で叶えた夢
2025.06.11 18:00
2025.06.11 18:00
『どうする家康』『ミステリと言う勿れ』、そして【推しの子】。近年話題となった作品で、彼女……原菜乃華の確かな演技力と存在感に目を奪われた人は多いのでは?
6歳から子役として活動をスタートし、現在21歳。アニメ『すずめの戸締まり』の主人公役で一躍注目を浴びた彼女だが、その長いキャリアが今、いろいろな作品で“花開いている”ように感じる事が多い。6月に公開された主演映画『見える子ちゃん』は、同名のホラーコメディ漫画を映画化したもの。この作品でもまた、これまでにない彼女の魅力が全開となっている。映画について、「演じる」ということについて、近年の自身の環境の変化について、プライベートについて……彼女が今、“推される”理由をインタビューで垣間見た。

怖がる演技はミリ単位で調整していった
──もともと、『見える子ちゃん』は原作をご存知だったそうですね。
そうなんです。読ませていただいていた作品だったので、なんとしてもこの役を演じたいという強い思いでオーディションに臨みました。
──「やりたい」と思った理由はどういう部分だったんでしょう?
作品の魅力ですね。本当に今まで見たことがないようなジャンルの作品で、初めて読んだときに衝撃を受けました。独特のテンポ感がすごく好きというか、コメディのテンポとホラーの緩急のつけ方みたいなバランスがとてつもなく好きで。それが映像化されたらどう表現されるんだろう!? というのが個人的にも、いち読者としても楽しみだったので、そこに携わらせてもらえるとなったのはシンプルに嬉しいし、楽しみでした。
──実際に完成したものを見たときはいかがでしたか?
再現されてるなと思いました! いや本当に『見える子ちゃん』だって一瞬でわかるぐらい、私が感じた『見える子ちゃん』の良さがもうそのまま出てるので……もちろん、原作にはないようなキャラクターやエピソードも出てくるんですけど、原作ファンの方も絶対に楽しんでいただける作品なのではと思いますし、原作を読んだことないよっていう方にも、すごく観やすい作品になっていると思います。
──映画を拝見してすごく感じたのが、ホラーとしての面白さはもちろんなんですけど、高校生女子たちの感じだったり、高校の文化祭の準備だったり、そういう独特のノリや雰囲気がすごく再現されてるのではと思ったんですよね。現場はどんな感じだったんですか。
和気あいあいとしてましたね。1人1人のキャラクターがすごく濃いので、クラスメイトの皆さんも見てるだけで本当に楽しくて、かつクラスの雰囲気も良くて。同年代が集まった現場で、みんな仲が良かったです。だからその“仲の良さ”みたいなのがそのままスクリーンに映ってるんじゃないかな、と思います。私自身は高校生の時にちょうどコロナ禍だったので、そういうのが全くできなくて。遅れて青春を取り戻してるみたいな気分で、楽しんで撮影してました(笑)。

──みこ役は「霊が見えるのに見えないふりをする」という役柄ですが、演技の塩梅が難しいと他のインタビュー等で話されていたのを拝見しました。撮影では監督とどういう感じで調整していったんですか?
撮影初日から終わるまで、その都度ミリ単位で調整していった感じですかね。最初はやっぱりホラーだと“怖がる”お芝居みたいなのを前面に出すのかなっていう固定概念みたいのがあって、やりすぎてしまったというか……監督からも常に「もっと抑えて」っていうふうに言われていて。不安だったんですけど、監督から「みこから見えてる景色はお客さんにも見えてるものだから、そこを信じて演じてください」と言っていただいて。そこですごく一つ安心できたというか、お芝居の塩梅や方向性も定まって。そこからは割と楽しんで撮影できていたような気がします。

──見ていて今回、原さんの上目遣いの表情がすごく印象に残ったんです。他の作品ではどちらかというと、目を大きく開けて見下ろすような表情が個人的に印象的に残っていて、新鮮でした。
ほんとですか!? あまり意識してなかったです(笑)。でも今回、霊を怖いと思う感情をあまり表面に見せない、出さないっていうのはすごく意識しましたね。アップのカットが多かったので、細かい目線の動かし方、瞳の揺れ方、あとは瞬きだとか……。表情の緊張具合で全部伝わるから、「やろう、見せようって思わなくていい」っていうディレクションもありました。

©︎2025『見える子ちゃん』製作委員会
──確かにホラーの場合、「怖い目に合う人の表情でその怖さを伝えなきゃいけない」から難しいですよね。
すごく難しかったです。どうしても、やろう、やろうとしちゃうんですよ。でも監督に指導していただいた加減で「伝わるかな……?」と最初は不安に思ってても、OKテイクを見るとリアルな映像に仕上がっていたりする。調整はすごく難しかったんですけど、監督とすり合わせていく作業自体は楽しかったですね。
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