2025.06.06 17:30
2025.06.06 17:30
映画『永遠の待ち人』が6月6日に公開された。ドストエフスキー『白夜』の本質をとらえつつ現代社会に落としこんだ本作。妻に去られ、生きる気力を失くしたサラリーマンが、盲目的に愛に生きる女性に出会い、生きることの意味を改めて考える物語だ。
戻らない恋人を待ち続ける美沙子を演じたのは、映画『ビリーバーズ』やドラマ『つづ井さん』など、作品によってまったく違う顔を見せる技巧派の北村優衣。そして冷たい夫のもとを去った麻美を、“無敵のグラドル”の異名をとり、近年では映画『うみべの女の子』やドラマ『社畜人ヤブー』など映像作品にも進出する高崎かなみが演じた。
互いによく笑い、思いやりにあふれる良い“気”を持っていた2人。芸能界でフレキシブルに活動する彼女たちの仕事観と、情熱の在りかに迫った。

落ち込んでるときはそっとしておいてほしい
──お2人が演じた美沙子と麻美には“待つ人”という共通点がありました。内面をどのように捉えてらっしゃったのでしょう。
北村 美沙子と共通するところがあまりなくてどうしようって思ったのですが、美沙子にも、脚本自体にも現実離れした幻想的な部分があるので、そこを活かしたいなと。あえて、中身をしっかり探る本来のやり方でなく“(永里健太朗演じる)泰明から見て美沙子はどういう人物なのか”を考えましたね。あとは美沙子が放つ哲学的な言葉が強いので、それをしっかり伝えることを意識して、観てくださる方に委ねたら伝わりやすいんじゃないかと思ってやってみました。
──確かに、美沙子の言葉がまっすぐ伝わってきました。
北村 『白夜』をモチーフにした他の映画も、無駄なものを省いているイメージがあったので、今回私も無駄なものというか、職業や性格を掘るよりかは、“待つ”と“信じる”というところを軸にやっていました。

──高崎さんは、演じた麻美の内面をどのように捉えていましたか。
高崎 麻美は、泰明との結婚生活がうまくいってなくて、休日もあんまり相手にしてもらえない。でもそれだけで去ってしまうって「麻美って相当メンタル弱い……?」とか、普段思ったことを言えないで溜めこんでしまうタイプなのかなぁ、なんて思って演じました。撮影期間がめっちゃ短くて、私2、3日くらいだったんですよ。
北村 へー!
高崎 その3日間くらいだけ、だいぶ鬱な状態で(笑)。
北村 なかなかあの状態を続けるのもつらいですよね。
高崎 ギュッと撮影できて良かったのかもしれないです。
──作中の泰明は生きる気力を失くして休職していましたが、お2人はご自分の疲労には敏感ですか?
北村 あんまり敏感ではないと思います。気づいたら「やばい……ベッドから起き上がれない!」ってなることはあります。
高崎 私は疲労、めっちゃ感じるタイプです。ちょっとコンビニ行くだけでも疲れちゃいます。体力なさすぎるなと思って、疲労を受けにくい身体になりたいです。ピラティスには通ってるんですけど、それでも……あ、階段の上り下りは楽になりました(笑)。
北村 私は騙しだましやれちゃう、疲労の限界まで頑張れちゃうタイプです。
──だとすると北村さんはピンとこないかもしれませんが、もし自分が泰明のようにダウナーに入ったとき、周りの人にはどうしてほしいですか?
北村 ダウナーは全然あります! それこそ「なんで私は生きてるんだろう」みたいな。どうしてほしいかな……触れないでほしいです。相談もしたくないですね。メンタルおぼろ豆腐です。
高崎 私もけっこう、そっとしておいてほしいタイプだと思います。聞いてほしかったら自分から連絡すると思うので、それまでは。「心配してるよ」くらいはいいんですけど、頻繁に連絡はしてほしくないかもしれません。そういう時はLINEとかも返せないので。

──では、映画に出てくる泰明の上司みたいに「君の代わりはいるから休んでいいよ」なんて言われた日には……。
高崎 きつい! 私のいる意味って何だろう?って思っちゃう。
北村 でもいるじゃないですか。励まそうとして、悪気なくそう言っちゃう方。それ励ましになってないよ!って思います。悪気がないのわかってるからつらい。
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