2025.06.09 18:00
2025.06.09 18:00
この日現れた早瀬憩は、チャーミングポイントである柔和な笑顔で周囲を和ませていた。
実際に対面した彼女は明るく素直で、話していると自然とこちらも朗らかな気分になってくる。どこへ行っても愛される人なのだろう。
早瀬といえば、2024年公開の『違国日記』と『あのコはだぁれ?』の2作での好演により、映画界の若手注目株となった存在だ。次はどんな作品に出演し、どんな演技を披露するのか、多くの映画ファンが注視していたはずである。そんな彼女が次に挑んだのは、住野よる原作の『か「」く「」し「」ご「」と「』。とある高校を舞台に、少しだけ特別なチカラを持つ5人の男女の想いを紡いでいく作品だ。
もともと原作の大ファンだったという早瀬は、彼女自身が作中でもっとも好きな宮里望愛(通称:エル)を好演。内気な性格の役どころだが、気鋭の中川駿監督のもと、エルとして世代の近い仲間たちとともに過ごした現場はどのようなものだったのだろうか。およそ1年ぶりのインタビューでは、内気な性格とは程遠く感じる好奇心旺盛な彼女ならではの言葉をたくさん聞くことができた。

一歩踏み出す勇気を手に入れることができた
──早瀬さんがお芝居を始めて、今どれぐらいになりますか?
中学1年生の頃からなので、早くも5年が経ちました。気がつけば、本当にあっという間です。
──この5年の間にいろんな出演作を観てきて、『か「」く「」し「」ご「」と「』もとても楽しみにしていました。
ありがとうございます。私自身もとても好きな作品なので嬉しいです。

──本作は学園を舞台にした青春群像劇です。初めて脚本を読んだときの印象について教えてもらえますか?
私は住野先生のファンで、もともと原作が大好きだったんです。なので、小説のセリフが映画の脚本だとどういうふうに扱われるのか、それぞれのキャラクターがどう動くのか、とてもワクワクした気持ちで楽しみながら読みました。それに脚本をいただいた時点で誰がどの役を演じるのかを知っていたので、現場の様子を想像しながら読むことができましたね。私もエルとして頑張らなきゃという思いが、よりいっそう強くなりました。
──では脚本の段階でかなり鮮明に画が浮かんでいたわけですね。
浮かんでいました。キャストの一人ひとりがみんなぴったりで。私の好きな作品のキャラクターたちに実際に会えるので、とにかく現場が楽しみでしたね。

──本作が描く物語に対してはどんな印象を持っていましたか?
私はいまも高校に通っているので、読んでいて共感できるところがたくさんあります。登場人物たちが抱える学生特有の悩みについても、自分のことのように理解できましたし。読んでいて背中を押してくれるようなセリフも多いので、若い世代の方にはとくに響く作品だろうなと思っていました。
──この物語に救われている人はたくさんいそうですよね。
だと思います。なんだかすごく、もどかしいんですよね。この映画もそうですが、原作の小説に描かれている物語も。でも私自身はこの物語に触れたことで、一歩前に踏み出す勇気を手に入れることができました。キャラクターの一人ひとりが不思議なチカラを持っていますが、それは決してファンタジーのようなものではないのかなと。いたって普通の高校生たちのお話。だからこそ共感できるんです。

──“特別なチカラ”を観客は映像として実際に目にするわけですが、これはイメージできていましたか?
すごくユニークで、面白いですよね。私自身は現場でなんとなくは聞いていましたが、仕上がりを観て驚きました。「こんなことになっているんだ!」って(笑)。
──現場ではお芝居だけで成立させなければならないから大変ですね。
そうなんです。台本にはト書きで記してあるものの、現場の私たちの目には見えていません。でも、みんなのお芝居や監督の作る空気感を頼りに、けっこうフラットに演じられたと思います。
次のページ