2025.04.08 08:00
2025.04.08 08:00
小説家・坂上泉のクライムサスペンス『渚の螢火』が高橋一生主演で実写ドラマ化され、『連続ドラマW 1972 渚の螢火』としてWOWOWで今秋放送されることが決定した。
原作を手掛けた坂上は、デビュー作『へぼ侍』が第26回松本清張賞を受賞。第2作『インビジブル』も第23回大藪春彦賞を受賞し、さらに第164回直木三十五賞候補にも選ばれ注目を集めた。『渚の螢火』は第3作となり、本作で初めて自身の作品が映像化されることとなった。

物語の舞台は1972年の沖縄。本土復帰が間近に迫る中、銀行の現金輸送車が襲撃され、100万ドルが強奪される事件が発生する。当時の沖縄では復帰に際し円ドル交換が県政にとって重要事業とされており、事件の存在が日本政府やアメリカ政府に知られれば重大な外交問題に発展しかねないと判断した琉球警察は、秘密裏に事件解決を目指す特別捜査班を編成。復帰まで18日間というタイムリミットの中で、彼らが事件解決に奔走する姿を描く。
本作で連続ドラマW作品の初主演を飾る高橋一生が演じるのは、特別捜査班の班長・真栄田太一。石垣島出身で、東京の大学を卒業後に琉球警察へ入署したエリート刑事という設定でありながら、その経歴や見た目から「ないちゃー(本土の人間)」と揶揄される真栄田は、自分が何者なのかアイデンティティを問い続ける。
監督は『愛を乞うひと』(98)『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』(19)などを手がけてきた平山秀幸。高橋とは過去に『よい子と遊ぼう』(94)と『連続ドラマW ヒトリシズカ』(12)以来、3度目のタッグとなる。
高橋一生(真栄田太一 役)コメント
・オファーがあった際の印象、脚本に関して
本作のお話を頂いたときに、実話ベースの物語でも娯楽作品として作り上げることはできるのではないかと感じました。僕は、フィクションは徹底してエンタテイメントであるべきだと常々思っているのですが、ただ楽しめるということだけではなく、その物語が深く見ている人にしみ込んでいくということは可能なんじゃないかなと、望みを見出していました。
本作に描かれているのは、忘れてはいけないこと、残していかなければならない歴史的背景だと思います。お芝居を通して、自分自身がこの歴史を学び直すきっかけになりました。
・真栄田という役を演じて感じたこと
とにかく密度が高い撮影でした。毎⽇時間が溶けていくようだと感じていました。気づいたら、「こんなに撮っていたっけ?」という感じで、とても充実していたと思います。
僕が演じる真栄田は、自分がどこで⽣まれ、自分がどのように社会や風⼟になじんでいくのか、自分はどうあるべきか、とアイデンティティを問い続けているキャラクターです。
撮影を終えて、本作に携わる皆さんが僕の真栄田というキャラクターを形作ってくれたと実感しています。共演者の皆さん、平山監督をはじめ、スタッフの皆さんが僕を真栄田として見てくださってとても助かりました。
そして、真栄田が所属する本⼟復帰特別対策室を語るうえで欠かせない存在が、真栄田と双璧をなす刑事・与那覇です。二人は同い年で、真栄田が八重山諸島出身であるのに対し、与那覇は沖縄本島出身。真栄田も熱いが、彼も熱い男で、二人はぶつかり合います。内燃している器官は一緒だけれど、出力の仕方が違うという差異を上手く出せたと思いますので、是非二人の掛け合いにも注目していただければと思います。
・視聴者へのメッセージ
歴史的背景がわからないという方にもクライムサスペンスとして楽しんでいただくことができる作品だと思います。
そして、自分がどこで⽣まれたかによってその人の人⽣が最初から決まってしまいかねないレールが存在している、ということにも着目していただきたいです。それぞれのキャラクターが浮き立ってみえると思います。
僕は、本作に登場するキャラクターに悪人はおらず、社会に捻じ曲げられてしまった人々の物語として捉えています。
どの人物もそうなってしまった理由があり、純粋悪ではなく、風⼟、国の背景、出自の違いなどで、こんなにも変わってしまうのかということを本作は問いている。そういった点も感じて頂ければと思います。
坂上泉(原作者)コメント全文
・『渚の螢火』の映像化が決まった時の心境
小説家デビュー以来「エラいことになった」の連続ですが、その中でもとびきりの「エラいこっちゃ」です。半世紀前の⽶軍占領下の沖縄を、実写映像で再現しようとする猛者がいるとは……。
・視聴者へのメッセージ
戦後80年、沖縄の本⼟復帰も半世紀以上前になるなか、不条理と怒りと情熱に満ちた時代を知る人は少なくなりました。その時代を⽣きた方々への敬意を、小説から映像化を通じて、より多くの皆様にお届けできるのであれば、望外の幸せです。