共演に松たか子、満島ひかり、森山直太朗、高橋文哉ら
オダギリジョー主演、髙石あかり演じる姪との共同生活で芽生える希望を描く『夏の砂の上』公開決定
2025.02.26 07:00
©︎ 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
2025.02.26 07:00
オダギリジョーが主演を務め、髙石あかり、松たか子、満島ひかり、森山直太朗、高橋文哉、光石研が共演する映画『夏の砂の上』が7月4日(金)に全国公開されることが決定した。
原作は映画『美しい夏キリシマ』の脚本、映画『紙屋悦子の青春』の原作を手掛けた長崎出身の松田正隆による傑作戯曲。雨の降らない夏の長崎が舞台の本作は、幼い息子を亡くした喪失感から人生の時間が止まり、妻に見限られた主人公・小浦治と妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。気鋭の演出家・玉田真也が監督・脚本を務め、撮影は2024年9月に全編オール長崎ロケで敢行。坂の多い長崎の美しい街並みの中で、愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女がそれぞれの痛みと向き合いながら夏の砂のように乾き切った心に小さな希望の芽を見つけていく、切なさと温かさが交錯する物語が描かれる。
主人公の小浦治を演じるのは、俳優としてだけではなく監督・プロデューサーとしても日本映画界を牽引するオダギリジョー。本作でも共同プロデューサーを務め、撮影前から玉田監督と会話を続けてきたオダギリは「脚本を読んだ瞬間『これは良い作品になる!』と感じた僕は、すぐにプロデューサーを買って出ることにしました。俳優としては勿論、様々な面で役に立てれば、という思いからでした。松さんや満島さんを始め、信頼できるキャスト、最高のスタッフが共鳴してくれ、真夏の長崎にこの上ない土俵が用意されました。あくまで玉田監督の補佐的な立場を守りつつ、隠し味程度に自分の経験値を注ぎ込めたと思います。昨今の日本映画には珍しい『何か』を感じて頂ける作品になったと信じています。」とコメント。
治の姪で、父親の愛を知らずに育った優子を演じるのは、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで人気を博し、2025年度後期NHK連続テレビ小説のヒロインに抜擢され注目される髙石あかり。撮了後「人間としても俳優としても、宝もののような大切な時間だった。」と語っていた髙石は、「長崎での撮影は、優子が過ごしたあの時間のように、自分にとってとてもかけがえの無いものとなりました。」とコメントし撮影当時を振り返った。
そして、治の妻・小浦恵子を演じるのは、主演作『ファーストキス 1ST KISS』が大ヒット公開中の松たか子。悲しみを共有し共に再スタートすることができない夫・治への「静かな怒り」を秘めた女性を演じ、本作で長崎弁にも初挑戦となった松は、「全員が汗だくになりながら、この映画の世界に向かって歩いていたように思います。」とコメントを寄せた。
さらに、父親のいない優子を兄の治に預け、男の元へはしる奔放な妹・阿佐子役には『ラストマイル』で第48回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞した満島ひかり。髙石演じる優子のバイト先の先輩で、優子へ好意を寄せる立山役には、映画・ドラマなど多方面で活躍をみせる高橋文哉。治が働いていた造船所の同僚・陣野には自身のドキュメンタリー映画『素晴らしい世界は何処に』の公開が控えるフォークシンガーの森山直太朗。同じく治の造船所の同僚・持田にいには「北九州ホルモン隊」を結成するなど九州を代表する名ヴァイプレイヤーの光石研。豪華キャストが作品世界を彩るほか、スタッフには2024年度賞レースを席巻する『夜明けのすべて』の撮影・月永雄太と照明・秋山恵二郎が参加している。
原作となった戯曲は読売文学賞 戯曲・シナリオ賞を受賞し、1998年に平田オリザが舞台化して以降は幾度となく上演され、2022年には主演・田中圭、演出・栗山民也で上演された。本作の監督・玉田真也も自身の劇団「玉田企画」で2022年に上演した思い入れの深い作品となる。念願が叶い、日本映画の第一線で活躍するキャストとスタッフを迎えて長崎での撮影を敢行できたことについて監督の玉田は、「素晴らしい俳優たちに集まっていただきました。演出するにあたり、皆さんとても協力的にアイデアを出してくださり、何一つストレスなく撮影をすることができただけでなく、何度見ても芝居が面白く、最前列で観るお客さんのように彼ら彼女らの芝居をただ楽しんでいる瞬間もたくさんありました。皆さんの芝居に、この映画を想定の何倍も上に引っ張ってもらえたと思います。とても贅沢な時間でした。」とコメントを寄せ、原作の松田は「私は、戯曲が消え去り映画に生まれ変わることを望んでいた。この映画を観て、何よりも映画らしい経験を得たことがとても嬉しかった。」と完成した作品を鑑賞し讃えた。

コメント全文
オダギリジョー (共同プロデューサー、主演・小浦治役 )
脚本を読んだ瞬間『これは良い作品になる!』と感じた僕は、すぐにプロデューサーを買って出ることにしました。俳優としては勿論、様々な面で役に立てれば、という思いからでした。
松さんや満島さんを始め、信頼できるキャスト、最高のスタッフが共鳴してくれ、真夏の長崎にこの上ない土俵が用意されました。あくまで玉田監督の補佐的な立場を守りつつ、隠し味程度に自分の経験値を注ぎ込めたと思います。
昨今の日本映画には珍しい『何か』を感じて頂ける作品になったと信じています。
髙石あかり(治の姪・優子役)
長崎での撮影は、優子が過ごしたあの時間のように、自分にとってとてもかけがえの無いものとなりました。
優子は、儚さと強さ、大人っぽさと少女らしさ、一人の人間の中で全く違う性質が混ざり合う独特な空気を持っています。そんな繊細な彼女をどう演じたらいいのか、長崎に入る前に玉田監督とお話しをさせていただき、”ありのままの自分”で精一杯役と向き合うことにしました。
そんな撮影期間は、カメラの存在を忘れ、作品と現実の境目が曖昧だった気がします。
こんな経験は初めてで、これ程までに熱中出来る環境を作ってくださった、監督をはじめ、キャスト、スタッフの皆様には感謝しかありません。改めて、この作品に携わらせていただけたこと、心から光栄に思います。
松たか子(治の妻・小浦恵子役)
暑い夏の長崎での撮影を懐かしく思い出します。
小浦家への道のりは、特に機材を運ぶスタッフの皆さんは本当に大変だったと思います。
でも、全員が汗だくになりながら、この映画の世界に向かって歩いていたように思います。
初めて読んだ脚本は、元々戯曲であったことに驚くほど、様々な風景が浮かぶ「映画」のホンでした。
他者に共感や理解を求めない、なんともいえない、滑稽で愛すべき人たちが出てくるお話のような気がします。
恵子が愛すべき人間かというと、それはわかりませんが…。
オダギリさんとのお芝居はとても楽しかったです。
玉田真也(脚本・監督)
今まで読んできた戯曲は数多くありますが、この「夏の砂の上」は僕にとって特別な作品であり続けました。僕たちが生きる上で避けられない痛みや、それを諦めて受け入れていくしかないという虚無、そして、それでも生はただ続いていくという、この世界の一つの本質のようなものがセリフの流れの中で、どんどん立体的に浮かび上がってくる素晴らしい作品です。その作品を映画にするということは僕にとって念願であったとともに、挑戦でした。演劇としての完成度があまりにも高いと思ったからです。そして、その挑戦は間違っていなかったと長崎での撮影を始めて確信していきました。長崎の街の中に入っていくと、この街自体を主人公として捉えることができる、これはきっと映画でしかなし得ない体験だと感じていったからです。僕の頭の中だけにあった固定された小さな世界が、長崎という街と徐々に融合してより豊かに大きく膨らんでいく感覚でした。この映画を皆さんに観ていただけるのを楽しみにしています。
そして今回、素晴らしい俳優たちに集まっていただきました。演出するにあたり、皆さんとても協力的にアイデアを出してくださり、何一つストレスなく撮影をすることができただけでなく、何度見ても芝居が面白く、最前列で観るお客さんのように彼ら彼女らの芝居をただ楽しんでいる瞬間もたくさんありました。皆さんの芝居に、この映画を想定の何倍も上に引っ張ってもらえたと思います。とても贅沢な時間でした。
松田正隆(原作)
部屋を見つめる演劇から、街を感じ取る映画へ。映画には長崎の光景がいくつも映し出されている。坂道をのぼりつめた果てにある家からの眺めだけで、言葉にならない感覚をこの映画は私たちに与える。戯曲に書かれた台詞が生み出す感情は、坂を上り下りする俳優の身体の運動に変換されている。キャリーバッグを引く優子が母とともに坂を上るとき、坂の上で指をなくした小浦が息を吐くとき、人々が言い知れぬ人生を抱えながらも、繁華街で仕事をし飲食をするために坂をおりるとき、カメラはそれらの特別な感情を映画の場面に映し出す。私は、戯曲が消え去り映画に生まれ変わることを望んでいた。この映画を観て、何よりも映画らしい経験を得たことがとても嬉しかった。