ホリプロコム所属、パンプキンポテトフライの谷拓哉と山名大貴を迎えた「芸人結成物語」。高校時代に結成し、卒業後何もしなかった2年間を経て緊褌一番の決意で上京した2人だったが、後編でもそのダラダラ癖はなかなか変わらない。

上京後は長い潜伏期間が続き、2021年の「ABCお笑いグランプリ」決勝進出を機に世間に見つかることになるのだが、コンビを前進させたきっかけは何だったのか。そしてこの日漂っていたピリピリムードの真相とは？ この連載が始まって以来の“逆結成物語”になりかけた、リアルなインタビューをお楽しみを。（前編はこちら）

周囲の評価に反し不遇だった養成所時代

やつい　で、ホリプロにコンビで入ったってことだよね。そこで見つける人もいるのに。

山名　そうですね。僕らはコンビで入って、ここは真面目にやろうって。20歳ぐらいの時に。

谷　養成所入って、ここはサボらんとこうなって話して。金も払ってるし。でも結局全然行かなかったですね、授業。

やつい　学校って行った方がいいわけでもないんでしょ？ どうなの？ 発声とか教えてくれるの？

谷　それもありましたね。ホリプロコムはNSCと大きく違うのが、卒業ライブでスカウトされなきゃ入れないんですよ。NSCはとりあえずみんな吉本所属になるのに、ホリプロコムは卒業ライブでマネージャーが3組4組しか採らない。あとは野に放たれるんですよ。なので行かなきゃいけないんですね。中間ライブと卒業ライブの2回は出とかないと。

やつい　授業行かなかったのはおもろくないから？ ためになると思えば行くでしょ。

山名　あ～、本当にだらけてて……。

やつい　だらけてばっかりじゃん！

山名　そうなんですよね。谷もしっかりしてるけど引っ張るタイプじゃないんで。その中間ライブと卒業ライブに受かればいいって聞いてたし。やっぱり授業でネタ見せをして作家の先生からダメだしをもらうとかも、なんやねんそれみたいに思っちゃうとかもありましたけど。

やつい　でもネタ作ってライブには出なきゃいけないでしょ？

山名　ネタは作ってましたね。それこそ東小金井で。

やつい　やっとここで！ 東京に引っ越した時に2人でここに住んだわけ？

谷　僕はここで、山名が国分寺に。そっちに行くこともありましたけど、こっちの方が多かったですね。僕の家に山名に来てもらうみたいな。

やつい　それで、東京でネタだけは作って。面白いかどうかわかんないじゃん、見せないと。いきなり試験に出たってこと？ その時には谷くんが作ってんでしょ？

谷　そうですね。養成所の時が初ぐらいで。

やつい　ボケとツッコミ、どっちやりたいとかあったの？

谷　僕はボケをやりたかったですね。

山名　俺はツッコミやりたかったです。

谷　今真逆になりました。

やつい　中間試験の時はどうだったの？

山名　もう俺がボケだったと思います。でも中間ライブはウケんかったんだっけ……？

やつい　じゃあ人に見せる前にその形に変わったんだね。

谷　いや、ツッコミだったかもよ？ 普通の漫才した覚えがあるんですけど。ネタ書き出した時、ツッコミが大事だなって思ってたんですよ。すごく。

やつい　ツッコミでコンビのスタイルが決まるからね。

谷　とんでもなくボケにキャラクターがあるコンビ以外は、ツッコミが面白くないときついなって。なら僕がちょっと頑張るかって。山名は台本やり切ってはくれるから、ボケを言ってもらうことにしようって思って、変えた感じだったような気がします。

やつい　中間試験をやってそんなにウケず？ じゃあ卒業試験で勝負しないといけないよね。

谷　卒業試験ではコントをしましたね。それはウケたんで、それで採ってもらって。

やつい　通ったんだ。じゃあ「全然学校来てないあいつら2人、いきなり来ていきなり受かったよ」みたいなことじゃないの？ 同期からすれば。

谷　あ、ちょっと端折りましたけど、行かなくなった経緯があって。最初は頑張って行ってたんですよ。サボらず週2くらい行ってたんですけど、木曜の先生と月曜の先生がいて、月曜の先生が意味ない感じだったんです。木曜の先生が生きのいい先生みたいな。

やつい　どっちもすごい人だと思うけどね。

谷　（笑）当時は勝手にそう思ったんですよ。で、木曜だけでいいなって山名と話になって、木曜にネタを持っていくようになるんですけど。僕らがいいと思った先生が、僕らのことむっちゃ嫌いで。爆裂に。みんなの前でネタ見せして、芸人は笑ってくれるんですよ。

やつい　あ、一応でネタ見せは参加してたんだね。

谷　そうです！ みんな笑ってくれてる時に「みんな何で笑ってんの？ あれおもんない」みたいな。みんなに言う人だったらいいですけど、僕らにだけ。おもんないとかじゃなくて、「鬱陶しい！」「格好つけてきしょい！」みたいになってきて、ええ？って。みんなも「パンポテ笑ったら先生にハマんない」っていう空気になってきて。えぐってなってる状態で中間ライブが来たんですよ。

やつい　そうなんだ、それで？

谷　みんなは言っても「パンポテおもろいんちゃうか」みたいにちょっとなってくれてて。でもそんなにウケなかったんですよ。ギャンギャンに滑るとかじゃないですけど、次の授業でその先生が「見た？ お前らがおもろい言ってるこいつら全然やったやろ」みたいな。

やつい　目の敵だね。

谷　「もうお前ら2人の坊主とかにしないと笑えんかもな」とか言われて。

やつい　髪の毛長い時？

谷　その時は普通でした。「すごいこと言うな」って思って帰って、次の授業行ったら、僕らいつも後ろの方で授業聞いてたんですけど、山名が先生が立つところの目の前に三角触りして坊主で座ってて。ほんまにむっちゃ褒められようとして。

やつい　めっちゃおもろいやん。

谷　そう、俺も坊主にしたとかだったらいいですけど、1人だけで好かれようとしてて。

やつい　行ったら坊主で？

谷　俺だけ置いてこうとしてるって思ったけど、おもろくて。授業始まったらどうなるんだろうって思って見てたら、もう嫌われすぎて、それすら無視されてました（笑）。

全員　（笑）

山名　本当にひどくないですか？ 無視ですよ！ そこからその先生の授業行かなくなったんです。

やつい　でもその先生、卒業の試験も来てたんでしょ？

山名　いました。

やつい　でも受かっちゃったんだね。

山名　養成所の講師が選ぶわけじゃないんですよ。

やつい　マネージャーがこいつら売ってもいいかなって人を選ぶんだ。一番理にかなってるよね。よかったね。あ、それで髪長くしてたの？

山名　アンチテーゼじゃないですよ！

やつい　絶対そうじゃん！