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INTERVIEW

『ジョーカー2』で感じた“闇”とは?洋画吹替の醍醐味も語る

「大事なのは目線から呼吸を読み取ること」声優・平田広明が懸ける一瞬の感受

2024.10.24 18:00

2024.10.24 18:00

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2019年に公開され、主人公のジョーカー/アーサーを演じたホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞に輝くなど、世界中を席巻した映画『ジョーカー』。その続編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で主人公の声を務めたのは前作に続き、アニメ「ONE PIECE」のサンジ役や「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジャック・スパロウの吹き替えで知られ、声優として長きにわたり第一線で活躍を続ける平田広明だ。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は『ジョーカー』の2年後を舞台に、理不尽な世の中の代弁者として時代の寵児となったジョーカーの裁判が描かれる。目の前に突然現れたジョーカーを崇拝する謎の女・リー(レディ・ガガ)に恋をするアーサー。リーと行動を共にすることで新たなショーが幕を開ける──。国内外で賛否両論を巻き起こしている本作を平田はどう受け止め、ジョーカー/アーサーの声に昇華したのだろうか。

平田広明

ホアキンの芝居を信じて精一杯寄り添った

──『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に対して、平田さんは「ジョーカーの闇をより深く感じ、演じながら自分のメンタルを持って行かれないよう注意しなくてはいけないという、これまでに経験のない思いをしたことに自分でも驚いた」というコメントを寄せていますが、具体的に意識したことはありましたか?

『ジョーカー』という作品に限らず、役を演じる際の僕の考え方として、役になりきるというよりは、できるだけ客観的な目線で向き合おうと思っています。それもあってこれまであまり自分のメンタルを持っていかれる心配をしたことはないんですが、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は意識して気を付けないと持っていかれるなって思う程、アーサーの闇を深く感じたんです。

1作目には“世界的によく知られているジョーカーというキャラクターに、もしリアルすぎる生い立ちがあったら?”という、もしものコーナーのような印象があって、あの家庭環境であの病気を抱えている中、アーサーはどんどん追い詰められ、ジョーカーのスイッチが入るのかアーサーのスイッチが切れるのかはわかりませんが、それがパンってなった瞬間にああいうことになる。それに対してみんなが共感、納得できるという、とても鮮烈な映画だと思いました。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ファイナル予告

──まさにそうだと思います。

1作目は「もしこれほどのものを抱えていたら、自分もジョーカーになってしまうのではないか」っていう共感や恐怖を感じられたと思うんですが、2作目はまたその先の彼が抱えている闇を1個ずつなのか大きな1個を徐々になのかはわからないですけど、その闇を深掘りしていく中で、1作目で抱いた共感がどこまで深まっていくのか。観る人によってはものすごく深いところで共鳴し合い、メンタルを持っていかれてしまうのではないかと思いました。

──ジョーカーとリーの関係をどう受け止めましたか?

リーが女性だったことが大きかったんでしょうね。

──女性じゃなかったら同志となり得たけれど、恋に落ちてしまったという。

はい。荒んだ社会で鬱憤を溜めている人たちのカリスマがジョーカーで、1作目でもアーサーを神聖視したジョーカーまがいの登場人物がいっぱい出てきましたよね。車の上でジョーカーが踊るシーンがありましたが、「俺は蔑まれた人たちのカリスマなんだ」という陶酔があったのかもしれない。でも2ではリーという美しい女性に崇拝されて、何かが壊れちゃったんでしょうね。「俺の怒りは君たちの怒りだろ」という繋がり方ではない個と個の関係になってしまうと、ああなるしかないのかなっていう風に納得しました。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』より

──リーは何度もジョーカーを見つめながら歌いかけます。

そして、ホアキンさんもあのガガ相手に歌うわけですからすごいですよね。

──リーの歌によってジョーカーは心を燃え上がらせたり、揺らいだりとさまざまな反応をするわけですが、アプローチに迷ったシーンや難しかったシーンはありましたか?

全体的に1より難しいと感じたのは、「このジョーカーの感情の捉え方はいろいろとあるんだろうな」と思うことが多かったので、僕がひとつに限定した芝居をしてしまうと他の選択肢をなくしてしまうことになるのではないかと思いました。でも、何も定めずにふわふわと芝居をするわけにもいかないので、1の時もそうでしたが、ホアキンさんの芝居を信じてできるだけ寄り添い模倣することで精一杯でしたね。全然できてないとは思うんですが。

──そんなことはないと思います。『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で改めて感じたホアキン・フェニックスの役者としての凄みというと?

本当にうまい方なのでいろいろとあります。先ほど彼のどこかがヤバいかっていうところをフリップに書く企画をやったんですが、「ヤバくないところなんてないんじゃないか」って思いながら書いていました。特に印象的だったのは1も2もアーサーが睨んでいる時の目つきですね。

1ですと、母親の病棟で「憧れのテレビに僕が出ているよ」と告げて顔を上げて自分が映っているテレビを見たら、テレビの中の自分が馬鹿にされていることに気付いた時の目つき。2は刑務所で刑務官に「サインをくれ」と言われて書こうとするんだけど、「もしあなたが死刑になったらこのサインは高値がつく」と言われて、途中まで書いていた名前を消して辛辣な言葉に書き直す時の目つきは、1のテレビのシーンの時と同じだと感じました。でもジョーカーではなくアーサーなんです、ヤバいのは。脱皮直前のアーサーかな?

──さっき平田さんがおっしゃっていた、スイッチが入るのか切れるのかの境目であることを表す目つきですよね。

そうですね。それは強く感じました。

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吹替声優として醍醐味を感じる瞬間とは

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作品情報

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

©︎ & TM DC ©︎ 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

©︎ & TM DC ©︎ 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

2024年10月11日(金)劇場公開
配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ

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