邦画を牽引する3人が山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』に集結
映画の“よさ”は何で決まる?河合優実×金子大地×寛一郎が今、考え抜いた答えとは
2024.09.09 18:00
2024.09.09 18:00
受け身で生きていると心が“砂漠”になる
──河合さんが演じたカナという人物は、観客によって印象が大きく変わるキャラクターだと思います。みなさんは、カナについてどう思いましたか。
河合 私は脚本を読んだときに、なんて面白いやつなんだってすごく惹かれました。でも実際カナがいたらどう思うんだろう。自分が演じているので、やっぱり自分の分身みたいに感じるところがあって。でも、自分に似ているとは思わないし。…どうですか?
寛一郎 いつの時代もこういう子はいたと思うんですけど、でも令和の権化みたいな感覚がありますね。スーパー個人主義で、超利己的。そんなカナというキャラクターが成り立っているのは、可愛いからで。今の時代、可愛いは生き方として正解の一つ。それが悪いと思わないし、カナはその努力を怠らない人だった。だから、カナと友達には全然なれるけど、恋人にはしたくない(笑)。
金子 恋愛という面でみると大変だろうなとは思います。けど、映画的にみれば魅力的だし、僕もカナが実際にいたらめちゃくちゃ可愛いって思えて、なんならずっぽりハマっちゃうんじゃないかと(笑)。
寛一郎 わかる。僕もハマったらヤバいところまでハマっちゃいそうだなという自覚がある。だから、彼女に振り回されてしまう気持ちもわかるんです。たぶんその中毒性みたいなものは、河合さん自身に理由があると思っていて。河合さんに人間的な魅力があるから、カナも魅力的になった。
金子 そう思う。危うさもあるんだけど、チャーミングなところもあって、憎めないのがカナの魅力なんです。他の人がカナを演じているのが想像できないです。河合さんが演じるから、ちゃんと魂が入って愛されるキャラになってるんじゃないかな。
河合 そういう人物にしたいと思いながら演じていたので、そう思ってもらえたならうれしいです。カナは世間一般での倫理観から外れた行動を平気でとる人ではあるので。お客さんの中にも、すごく惹かれる人と、スクリーンの中に入って殴ってやりたいと思う人で分かれると思うんですけど、できればこの子面白いなって味方になってもらいたかった。そのためにも、漠然としたイメージですけど、魂がキラキラしてる人に見えたらいいなと思いながら演じていました。
寛一郎 すごいキラキラしてた。たぶん河合さんじゃなかったら、ただのわがままな人になっちゃっていたんじゃないかな。
──カナは、人生に対するつまらなさを抱えていました。そういう倦怠とか鬱屈って、実は多くの20代が抱えているもののように思えます。
河合 私はあんまり毎日をつまらないと思ったことがなくて。ムードとしてはわかるんです、同世代の人たちの間に漂う停滞している感じみたいなものは。でも、自分はあまり感じなかった。たぶんそれは学生時代から好きなものとか心を燃やせるものが多かったからかなって。仕事を始めてからも退屈と感じる瞬間はあったけど、そういうときはむしろもっと他に今やるべきことがある気がして焦るというか。退屈してる場合じゃない、みたいな感覚の方が大きかったですね。
金子 僕は昔はありました。19から21の頃だったかな。むちゃくちゃつまんねえなっていう日々を過ごしていて。当時は何も考えず、ただただボーッとしていましたね。でも、退屈だから頭の中がぐるぐる常に回ってるんですよ。自分の人生に何もないからこそ、周りで起こるいろんなことに対して今よりもずっと強く吸収しているようなところはあった気がします。
寛一郎 僕はわかります。退屈だな、めちゃくちゃつまらないなって思うことは今でもあるし。そういうときに何も感じないようにすることはできるんです。でもそれは、ニヒリズムという現代病みたいなもので、ずっとそういう態度でいると自分の人生が本当に動かなくなる。だから、退屈なときほど感じようとする心が大切。受け身じゃなく、能動的にキャッチしていかないと、本当に心が砂漠みたいになってしまうということは身をもって言えますね。
──カナもそうですけど、20代って根拠のない自信だったり、将来への焦りだったり、いろんな感情が渦巻いていると思うんですね。自分の中にある感情で今いちばん大きいものってなんですか。
金子 なんだろうなあ。今はお仕事を頑張りたいというのがいちばん大きいですけど。
──金子さんは今年4月末で事務所を退所し、環境を一新させました。この決断にはどんな気持ちがあったのでしょうか。
金子 本当に楽しいと思うことをやっていきたいという気持ちが強いかもしれないです。物事への考え方とか視野の範囲って環境で決まるなと思っていて。僕は北海道の田舎で生まれ育って、たまたまオーディションに受かってこの仕事をさせてもらったおかげで、役と向き合い自分と向き合う環境を得られたけど、たぶんずっと北海道にいたままだったら、もっと何も考えず、ただただ働いている人間になっていたと思うんです。だから、これからも仕事をやっていく上で自分の環境を大事にしたかったからです。
──河合さん、寛一郎さんはどうですか。
河合 私の中にあるいちばん大きい感情ですよね…? 難しいな。なんだろう。まず今の自分にまったくないのは、満足とか、現状維持とか、そういう感情で。むしろ何かを求めているという感情が大きいかもしれない。その何かというのも、忙しいから休みたいとか、そんなのじゃなくて。もっと面白いものを観たいとか、もっと面白いものをつくりたいとか、ですね。とにかく今は前に進んでいきたい気持ちに駆り立てられて生きているところはあると思います。
寛一郎 僕も河合さんの考えに近いですね。新しいことに挑戦したいという気持ちが、今の僕の大部分を占めている。焦りとか不安もあるけど、今はいい意味でそういうことを考えなくなってきた。マイナスの感情に足をとられるよりも、まだ自分にないものをどんどん取り入れていくことを大事にしたいなって考えています。
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