2024.07.24 18:00
2024.07.24 18:00
現在24歳ながら、今年活動10周年を迎えたという。ドラマや映画で着実なキャリアを重ねて行きながら、近年は舞台の分野にも活動の幅を広げている藤野涼子。その確かな実力は、多くのクリエイターから信頼されているのは御存知の通り。
そんな彼女が出演した最新作『七夕の国』は、ディズニープラスで独占配信中の注目のドラマ。『寄生獣』『ヒストリエ』などで知られる岩明均の同名漫画を原作に、「ものに小さな穴を開ける」という力を持った青年・ナン丸こと南丸洋二が“丸神の里”と呼ばれる田舎町・丸川町に秘められた大きな謎に巻き込まれていく……というミステリーだ。
彼女が演じたのは、ナン丸と出会う丸川町の住人・幸子。「これまでにないアプローチを求められた」という今作の撮影、また自身が最近興味を持っているものとは?
新たな“芝居の扉”が開いた
──この作品のオファーが来たときにはどう思われましたか?
これまで、『七夕の国』のようにたくさんCGを使ったり、ミステリー仕立ての作品に出演させていただくことがあまりありませんでした。なので最初にオファーをいただいたときは「乗り越えるべき、大きな壁が立ち塞がったな」という感じでしたね。どの作品も撮影に入る前にはすごく緊張するんですけど、同時にワクワクするというか……この世界に入って行ったらどういう経験が味わえるんだろう、どんな壁があるんだろう? という思いがあり、でも少し怖さもあり。
──原作を読んだときの感想は?
映画化された『寄生獣』は拝見させていただいていたのですが、漫画として岩明均さんの作品を読むのは初めてでした。ミステリー作品だとは事前に聞いていたのですが、哲学的な部分があったり、それを探求していく主人公の成長物語でもある。面白くて、あっという間に読み終わってしまいましたね。
──最初に原作を読んだときは、ご自身の役は意識して読まれたのですか?
読み始めたときはどうしても、幸子の出るシーンが気になっていました。どんな女の子なんだろう、と。でもとにかく内容が面白いので、ナン丸さんたちが追っていく謎とともに、幸子にはこれからどんな展開があるのだろう、このキャラクターは何? みたいな方がどんどん大きくなっていて。だからいつの間にか「幸子」の役を追うことを忘れて、原作の面白さにのめり込んでいった感じです。
──幸子は物語の中でもかなりキーとなる役ですが、「丸神の里」で置かれた立場などいろいろと抑圧されていたり、複雑なバックボーンを持つキャラクターですよね。演じるうえで難しかった部分は?
私が撮影に参加したときはもう一部撮影が始まっていたこともあり、最初の読み合わせは監督とプロデューサーとスタッフの方だけでさせていただいたんです。その時は私自身が原作から受けたイメージで、幸子を今よりも少し明るいキャラクターとして演じていたのですが、監督から、「もっと自然体でいい」と。感情をそんなに出さないように演じてくれないか、ということを仰っていただいて。これまでもありがたいことにドラマや舞台などいろいろお仕事をさせていただいたんですが、「芝居を削っていく」という作業になることがほとんどなかったんですよ。どちらかというと「もっと出して」と“盛っていく”作業が多かった。でも今回は、削ぎ落としていくことを求められまして。
──これまでのアプローチとは逆ですね。
そうなんです。私事なんですけど、この業界で俳優として働くようになって10年経ったんです。だからこそ、その間に培ってきたこと……特に演じることの技術面はそれなりに積み上がってきているのではないか、と思っていたのですが、今回のような「その場に自然体で居る」というのはこんなに難しいことなのかと。また、実際に自分の演技を映像で観たときに、逆に「もっと削ぎ落としても良かったのかな」と思う部分もあったりしましたね。そういう意味で、今作で経験したのはすごく新鮮なアプローチでしたし、幸子を演じることで、また新たな“芝居の扉”が開いたのかな、と思っています。
──ナン丸の持つ力や「丸神の里」の設定などは現実離れしたものですが、幸子が“現実に暮らす場所”として丸神の里のある丸川町を見ると、その閉鎖性や同調圧力のようなものは割とリアリティを持って共感できる人が多いのではと思っています。藤野さんご自身はどう思っていましたか?
そうなんですよね。私たちはやっぱり、それぞれの土地……地域や国など「縛られているもの」がある。撮影中に、瀧監督から海外のメディアの方が日本の「村」について書かれた記事を送っていただいたことがあったんです。丸神の里の住人を演じるときに、この記事の中の要素を参考にして欲しい、と。そこでも書かれていたのですが、日本は島国ですし、鎖国していた時代もあったので「変えたい」と思っていることがあったとしても、なかなか変えられない。内側から変えようとしている人がいたとしても、「出る杭は打たれる」じゃないですけど、「それは違うよね」みたいな感じで抑えられてしまう。そういうことへの理解が、幸子を演じるうえでヒントになっていきました。
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