『青春18×2 君へと続く道』公開記念リレーインタビュー #1
「“それでも人生は続く”と描きたかった」藤井道人が『青春18×2』にしたためた自叙詩
2024.05.04 17:00
2024.05.04 17:00
18年前、台湾で君と出会った。そして現在、何もかも失った僕は、君に会いに日本へ旅立つ──。
2006年の台湾と2024年の日本。二つの時代と場所を舞台に描かれる、淡く眩しい初恋の記憶。5月3日(金)公開の映画『青春18×2 君へと続く道』は、誰しもが経験した青春のひとときを、鮮烈に、儚く、観る者の胸に焼きつける。
公開を記念し、Bezzyでは本作を特集するリレーインタビューを敢行。第1弾は、脚本・監督の藤井道人が登場する。
台湾出身の祖父を持ち、20代の頃に台湾留学も経験。映画をつくるべく、台湾の映画会社を営業して回ったこともある藤井にとって、念願の台日合作プロジェクト。それは、忘れられない旅の時間となった。
台湾と日本は青春の色が違う
──映画の中で日台の美しい風景がおさめられていました。旅がキーワードの作品ですが、本作のロケハンはこの映画づくりへと続くどんな旅になりましたか。
ドラマのあるロケハンになりましたね。まず日本では、JR東日本さんが協力してくださって、いろんなルートを紹介してくださったんです。その中の一つに只見があって。只見線は2011年の豪雨で被害を受け、ずっと運休になっていました。その運行が再開されたのが2022年。ちょうどロケハンをしていたのが復興1年目の年だったんです。せっかくこうしてJRと力を合わせてやれるならということで行ってみたら本当に美しい場所で、この只見線を旅のゴールにしましょうということになりました。
──台湾はいかがですか。
台湾については、実は2回別の場所でロケハンをしていて、本当はそこで撮影をする予定だったんです。でもそれを僕が途中でひっくり返して、台南ロケに変更しました。もともと原作(ジミー・ライ『青春18×2 日本慢車流浪記』)では嘉義市の中心部が舞台。それを台南にしたのは、僕自身が台南に赴いたときに、ヒロインのアミならきっと台南に来ただろうなと思ったからでした。
──それは、台南に何があったからでしょう。
台南って、とても歴史のある街なんです。寺院だったり街並みだったり、色濃く芸術が息づいていて。芸術をマテリアルとするアミなら、きっとそれを見たいんじゃないかと思った。あとは僕の祖父が台南出身だったということもあって。台南に行ったときに、あらゆる要素がしっくり来るような感覚がありました。
──映画の中では、台湾と日本、過去と現在が対照的に配置されています。この違いを立てるために画づくりで意識されたことは何ですか。
台湾と日本で青春の色って違うんですよ。
──青春の色?
日本の青春の色ってきっと青なんです。一方、台湾はオレンジ。なので、今回、台湾はオレンジで撮って、日本は白と青の中間の色で撮っています。また、大人になったジミーにとって青春は忘れられた色でもある。だから、36歳のジミーの服装は、枯れた色合いのものを使って、青春の色がないように構成しています。
──服の色まで……!
あとは、静と動ですね。台湾のシーンは基本的に手持ちカメラでしか撮ってないんですけど、日本のシーンは写実的にというか、1枚画にこだわって静止画のようにフィックスで撮ることをベースにしていました。
それから、目線も違います。一般的に映像表現において下手(画面左側)から上手(画面右側)に向かうと前進やポジティブなニュアンス、上手から下手に向かうと後退やネガティブなニュアンスとされていて。18歳のジミーは上手を見るように、36歳のジミーは下手を見るように徹底して、対比をつくりました。
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