2024.04.02 08:00
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2024.04.02 08:00
第96回アカデミー賞で⻑編ドキュメンタリー映画賞を受賞、戦火に晒された人々の惨状をAP通信取材班が命がけで撮影した映画『マリウポリの20⽇間』(原題:20 Days in Mariupol)が4月26日(金)に日本で緊急公開されることが決定した。
2022年2⽉、ロシアがウクライナ東部に位置するマリウポリへの侵攻を開始。これを察知したAP通信のウクライナ⼈記者であるミスティスラフ・チェルノフは、仲間とともに現地に向かった。ロシア軍の容赦のない攻撃による断⽔、⾷料供給や通信の遮断……瞬く間にマリウポリは孤⽴していく。
海外メディアが次々と脱出していく中、AP通信取材班はロシア軍に包囲された市内に残り、死にゆく⼦供たちや遺体の⼭、産院への爆撃など、侵攻するロシアによる残虐⾏為を命がけで記録、世界に発信し続けた。彼らも徐々に追い詰められていく中、滅びゆくマリウポリと戦争の惨状を全世界に伝えるため、チェルノフたちは⾟い気持ちを抱きながらも市⺠を後に残し、ウクライナ軍の援護によって市内から脱出することになる。
「これを⾒るには覚悟がいる。それでも⾒なければならない」──公開された予告は、マリウポリで実際に起こった凄惨な現実と、しかしこの状況が報道され世界へ拡散されることで〈世界が変わる〉という⼀縷の可能性を信じる⼈たちの姿を捉えている。街中では、ロシア軍の印《Z》が刻まれた戦⾞が⾛り、爆撃投下を知らせるサイレンに怯えながら地下に避難する市⺠、やがて産科病院さえもターゲットになり、被弾した妊婦は⼤きなお腹のままで担架で運ばれ、「死にたくないの」と訴える⼩さな子供、穏やかだった⽇常から⼀転、混沌の渦となってしまったマリウポリの様⼦が次々と映し出される。「この惨劇を世界へ伝えてくれ」惨劇の被害者となった⼀般市⺠たちを治療する医師は取材班に懇願、「この光景を必死に忘れようとしても、決して忘れることはできない」と監督⾃⾝が語る〈歴史の現実〉を、容赦なく世界の⼈々へと突きつける映像となっている。
また、戦地となり、荒れ果ててしまったマリウポリの街を記録する取材班の姿を切り取った本ポスターも解禁。併せて解禁された5点のシーン写真は、マリウポリを記録するために荒れてしまった街を取材するAP取材班の姿、ロシア戦⾞によってアパートが爆撃される様⼦、空爆によって被害を受けた産科病院から怪我をした妊婦が運び出されるカットのほか、取材チームの1⼈でもある写真家のエフゲニー・マロレトカが空爆の後にマリウポリ市内の産科病院から⽴ち上る煙を指さす姿、マリウポリ市内で避難⽣活を送る⼈々を捉えている。
「おそらく私はこの壇上で、この映画が作られなければ良かった、などと⾔う最初の監督になるだろう」アカデミー受賞式の壇上でコメントしたのは、本作の監督であり、ジャーナリストのミスティスラフ・チェルノフ。AP通信社のビデオジャーナリスト、そしてウクライナ職業写真家協会の会⻑でもある彼は、ウクライナ東部の出⾝で、2014年にAP通信に⼊社して以来、欧州やアジア、中東の主要な紛争、社会問題、環境危機を多数取材。ウクライナの戦争に関連では、⻑年の同僚であるエフゲニー・マロレトカ、報道しているワシリーサ・ステパネンコの3⼈の報道チームで共にマリウポリ包囲戦の取材を⾏い、ロシアによるこの都市に対する攻撃の⽬撃者たちの証⾔を世界に伝えた。
なお、本報道でともに取材を敢⾏したチームは2023年にピューリッツァー賞公益賞を受賞。チェルノフは現在ドイツに拠点として活動しており、過去には英国王⽴テレビ協会により2016年年間最優秀カメラマン、2015年年間最優秀若⼿⼈材にも選出されている。
2024年3月10日 第96回アカデミー賞授賞式 ミスティスラフ・チェルノフ監督コメント全文
この作品はウクライナ映画史上初めてアカデミー賞を受賞しました。
しかし、おそらく私はこの壇上で、この映画が作られなければ良かった、などと言う最初の監督になるだろう。
このオスカー像を、ロシアがウクライナを攻撃しない、私たちの街を占領しない姿と交換できれば、と願っています。
ロシアは私の同胞であるウクライナ人を何万人も殺している。私は、彼らがすべての人質たち、国を守るために戦うすべての兵士たち、刑務所にいるすべての民間人たちを解放することを願っています。
しかし、歴史を変えることはできません。過去を変えることもできません。私はあなた方に、世界で最も才能のあるあなた方に呼びかけます。私たちは、歴史を正しく記録し、真実を明らかにし、マリウポリの人々や、命を捧げた人々が決して忘れ去られないようにすることができます。
なぜなら、映画は記憶を形成し、記憶は歴史を形成するからです。