2023.12.30 17:30
2023.12.30 17:30
「ファンタジーを創るバンド」を謳うロックバンド、クジラ夜の街。ついにリリースされたメジャーファーストフルアルバム『月で読む絵本』は、その「ファンタジー」の領域を一気に押し広げる、濃密な1作となった。ファンタジー=絵空事だと思う人も多いかもしれないが、このアルバムで彼らが描き出すファンタジーは、僕たちが日々生きるこの現実に深く根差したもの。その世界に遊び、物語を味わいながらも、その音楽はいつの間にか生きるための力になる──このアルバムを聴くと、そんな手応えを感じられるはずだ。
そのアルバムリリースを記念して、今回はスペシャルゲストを交えてのインタビューを実施。参加してもらったのは、クジラ夜の街とは東京都立武蔵丘高校の軽音部での先輩と後輩という関係で現在もよきライバルであるルサンチマンのフロントマン、北。互いの歴史も心のうちも知り尽くした両者だからこその対話からは、クジラ夜の街というバンドの本質も浮かび上がってくるはずだ。
めっちゃロックバンドだった高1時代
──今日はアルバム完成記念ということで、クジラ夜の街と親交の深いルサンチマンの北さんに来ていただきました。よろしくお願いします。
北 よろしくお願いします。
──ファンは知っての通り、同じ高校の軽音楽部の先輩後輩という間柄なんですよね。
宮崎一晴(Vo/Gt) そうですね。最初は北が高1、僕が高2の時で。夏の合宿で仲良くなったんですよね。それまではある程度、先輩と後輩らしい距離があったんですけど、合宿で一気に仲良くなって、そこから僕とか秦とかはすごく喋るようになり、薫とも仲良くなっていって。で、佐伯と仲良くなったのは最近かな(笑)。
北 一番最初に仲良くなったのは薫でしたね。中3の時に体験入部に行ったら、唯一薫だけが喋りかけてくれた。
宮崎 俺は喋りかけなかったね。
北 一晴は部長だと思ってた。
宮崎 俺は部長ヅラをしてたんですよ。当時1年だったのにめちゃくちゃまとめたりしてたので、勝手に部長だと思われてた。そのときクジラのライブ観たでしょ?
北 観ましたね。「引き分け」って曲と、「少年少女」をやってた。
宮崎 その時はどう思った?
北 「オリジナル曲作ってるな」って(笑)。でも当時高校1年生でこのレベルかと思ったら、「すげえな」って思いました。めっちゃロックバンドでしたよね。一晴とかめっちゃ叫んでたし。
宮崎 シャウトとかすごいしてましたし、結構ゴリッとしたサウンドで、キメとかブレイクもたくさん入れてっていう、結構バンドバンドした音でしたね。
──今でこそクジラ夜の街とルサンチマンの音楽性って違うけど、根っこはわりと一緒のところにあった感じなんですね。
北 うん、一緒ですね。
宮崎 俺ら、似てるとか言われてたよね。
北 ルサンチマンで最初に大会に出た時に審査員に「どこの高校なの?」って聞かれて「武蔵丘高校です」って言ったら、「受け継いでるねえ」って言われましたからね。
宮崎 系統はめちゃくちゃ一緒だったんですよ。まあ、同じ高校にいるから似ちゃうのかもしれないけど……でも似てたのかなあ。改めて考えると編成が一緒なだけだったんじゃない? 俺ら似てるって言われて腹立ってたもんな。
秦愛翔(Dr) うん(笑)。
──クジラ夜の街から見てルサンチマンはどういうふうに映っていたんですか?
秦 「すごいのが入ってきたな」って思っていましたね。ルサンチマンのライブを初めて観たのは吉祥寿のROCK JOINT GBっていうライブハウスの「JYOJI-ROCK」っていうイベントだったんですけど、その時からいきなり8分の6拍子の曲とかやってて。
宮崎 「負け組」って曲だよね。これがなかなかいい曲で。今のルサンチマンとも全然乖離してない。だからブレてないんですよ。今に至るまで、1回も「こっちの方向性も試してみよう」ってなってない。最初から1本で貫き通してるのはすごいと思う。
北 いや、そう見えてるだけ(笑)。ブレてるとまでは言わないですけど、最初はどんな曲をやったらいいかわからなかったし、やっぱりクジラからは遠いところに行こうと思っていましたから。でも参考にする部分も多くありました。
──北さんはその後のクジラ夜の街の活躍はどう見ていました?
宮崎 でもその出発点の「負け組」っていう曲はやっぱり印象に残ってますね。あの時はギターのフレーズも北がね考えてたんですけど、あの感じは独特だったよね。高1のギターリフって結構ポップス意識のものが多いんですけど、ちょっとアングラを感じるというか。別にポップスを聴いていなかったわけじゃないだろうけど。
北 いやあ、相当苦労してた時期もあったし、本当にずっと仲良かったんで。ようやく、今一番楽しそうだなって思います。「どうせ売れないでしょ」みたいなことを言いながら、朝までお酒の一滴も飲まずに話したりしてましたからね。
宮崎 ありましたねえ。
北 いろいろ試行錯誤をしているのを見ていたので、こうしてメジャーデビューしたのは感慨深いなと思います。
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