ヒップホップで社会を生き抜く! 第25回
2023年のベストヒップホップアルバム10選 今年リリースされたおすすめヒップホップを紹介
2023.12.29 17:00
2023.12.29 17:00
5. ヤング・サグ『Business Is Business』
組織犯罪を取り締まる「RICO法」(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act)に違反した容疑で現在裁判中のヤング・サグ。検事はヤング・サグが運営するレーベル〈YSL〉が音楽レーベルではなく犯罪組織であると主張としており、ストリート・ギャングの活動に関与した疑いで起訴されている。起訴状では彼らが「音楽、動画、SNSなどの投稿」によって縄張りを維持していると説明されているが、ラップのリリックも証拠として挙げられている。ファンや音楽業界だけではなく、弁護士やジャーナリストなどからも歌詞を証拠として提出することに反対する声も挙がっている。
そのような状況で刑務所からリリースされたのが今作『Business Is Business』。「ビジネスはただのビジネスだ」と、自身のリリックが証拠ではなく、“ビジネスやブランディングの一部だ”と主張するようなタイトルとなっているが、ヤング・サグのラップを書くをスキルは今まで以上に鋭くなっているように感じる。
おすすめ曲:「Cars Bring Me Out」「Wit Da Racks」「Oh U Went」
4. トラヴィス・スコット『Utopia』
2018年にリリースされた大ヒットアルバム『Astroworld』から、5年経ってリリースされた待望の新アルバム。2021年の11月に自身が手掛ける「Astroworld Festival」で死亡事故が起こり、活動をしばらく休止していたが彼が今年7月にリリースした作品だ。今までのサイケデリックな世界観を踏襲しつつ、ラップパートを増やした今作は全米だけではなく、全英チャートでも1位を獲得した。カニエ・ウェストの『Yeezus』を彷彿とさせる作品となっており、「Circus Maximus」と題されたプロモーション映像作品も大きく話題になった。
おすすめ曲:「HYAENA」「MODERN JAM」「LOOOVE」
3. Real Bad Man & Blu『Bad News』
ロサンゼルスのプロデューサーReal Bad ManとラッパーBluによるコラボアルバム『Bad News』。Bluは、Blu & Exileとして2007年にリリースしたアルバム『Below The Heavens』がアンダーグラウンドヒップホップファンの間で大きく話題になったが、Real Bad Manの90年代ヒップホップサウンドの上でラップする彼のスキルはさらに洗練されている。アンダーグラウンドヒップホップや90年代ヒップホップ好きにはたまらないサウンドとなっている。
おすすめ曲:「Bad News」「All Praise Due」「The Golden Rule」
2. キラー・マイク『Michael』
アウトキャストと同じくアトランタのクルー、ダンジョンファミリー出身であり、人気ヒップホップデュオ「Run The Jewels」のメンバーであるベテランラッパー、キラー・マイク。自身で予算を出し制作した今作「MICHAEL」は多くのヒップホップメディアで年間ベスト・アルバム1位を獲得しており、アウトキャストのアンドレ3000のフィーチャーも話題になった。さすがキラー・マイクと言わんばかりの安定したラップ、ジェイ・Zやカニエ・ウェスト作品をプロデュースしたNo I.D.によるプロダクションが織りなす今作はヒップホップファンであれば必聴だ。
おすすめ曲:「DOWN BY LAW」「SHED TEARS」「SCIENTISTS & ENGINEERS」
1. ジェイペグマフィア&ダニー・ブラウン『Scaring The Hoes』
エクスペリメンタルヒップホップの金字塔的な存在となったジェイペグマフィアとダニー・ブラウンのコラボアルバム『Scaring The Hoes』。数々のメディアから称賛された今作は、ハイパーポップスとヒップホップを合わせた“ハイパーヒップホップ”とも言える作品。攻めたサウンドでメタクリティックで今年最も評価が高いヒップホップアルバムとなった。初めて聴いたときには「!?」となる作品かもしれないが、激しいシンセのなかでも2人のラップスキルが光る作品となっている。
おすすめ曲:「Lean Beef Patty」「Fentanyl Tester」「Burfict!」「Shut Yo Bitch Ass Up」
Honorable Mentions (トップ10に入らなかった良作)
惜しくもトップ10には入らなかったが、ヒップホップファンにおすすめしたい次点作も5つ紹介しておく。
ウェストサイド・ガン『And Then You Pray for Me』
リック・ロス&ミーク・ミル『Too Good to Be True』
ケイトラナダ&アミネ『Kaytraminé』
デンゼル・カリー『Live At Electric Lady』
アール・スウェットシャツ&アルケミスト『VOIR DIRE』