ヒップホップで社会を生き抜く! 第25回
2023年のベストヒップホップアルバム10選 今年リリースされたおすすめヒップホップを紹介
2023.12.29 17:00
2023.12.29 17:00
今年はヒップホップにとって、ある意味“珍しい”1年だった。ヒップホップは世界で最も人気なジャンルとして長年君臨し続けたが、今年はドージャ・キャットが8月に「Paint the Town Red」をリリースするまで、ヒップホップ曲がビルボード200チャートで1位を獲得することはなかった。その後、リル・ダークとJ.コールの「All My Life」が2位、そしてドレイクとJ.コールが「First Person Shooter」で1位を獲得し盛り上がりは見せたものの、例年に比べてヒップホップの人気が落ち着いた年であったと言えるだろう。
2023年にヒップホップ関連で最も話題になったのは、ヒップホップ生誕50周年だ。音楽だけではなくファッションやスポーツなど、世界中のカルチャーに大きな影響を与えたヒップホップが今年の8月11日に迎えた50周年。アメリカ全土で様々なイベントが行われ、特にニューヨークのヤンキースタジアムで開催された「Hip Hop 50 Live」にはDJクール・ハーク、シュガーヒル・ギャング、RUN DMC、カーティス・ブロウ、Nas、リル・ウェイン、スヌープ・ドッグ、アイス・キューブ、ウィズ・カリファ、コモン、ゴーストフェイス・キラーなど、ヒップホップを代表するMC/DJたちが出演し、多くのファンとともにお祝いをした。
そんなヒップホップ生誕50周年となった2023年だが、最後の「ヒップホップで社会を生き抜く!」のコラムでは、「2023年のベストヒップホップアルバム10選」を紹介したい。
10. ニッキー・ミナージュ『Pink Friday 2』
世界で最も人気な女性ラッパーの一人であるニッキー・ミナージュが12月8日にリリースした5thアルバム『Pink Friday』。5年ぶりの新作であり、デビュー・アルバム『Pink Friday』の続編となった。アルバムにはJ.コール、リル・ウェイン、ドレイク、リル・ウージー・ヴァート、50セント、キーシャ・コールなどが参加し、ビルボード200チャートで1位を獲得。ニッキー・ミナージュは今作で出身地であるトリニダード・トバゴやカリブ海への思い、私生活、そして色褪せないラップキャリアについてラップしている。
おすすめ曲:「Let Me Calm Down」
9. Nas『Magic 2』
ベテラン凄腕MCとしてヒップホップ界に君臨するラッパーNasの16thアルバム。プロデューサーのHit-Boyとの5枚目のコラボアルバムであり、『Magic』3部作の2作目。今年は『Magic 3』もリリースされ、2020年〜2021年にリリースされた『King’s Disease』シリーズに続き、Nasはベテランになった今でも止まらないことを示した。
おすすめ曲:「Office Hours」「Motion」
8. オフセット『Set It Off』
元ミーゴスのオフセットの2ndアルバム。元々は昨年の11月にリリースされる予定だったが、ミーゴスのテイクオフが亡くなりリリース延期となっていた。ミーゴス時代の自信満々なスタイルだけではなく、テイクオフの死を偲ぶ内容もラップしており、ソロキャリアを本格的に始動させる気合いが伝わってくる作品となっている。
おすすめ曲:「Say My Grace」「JEALOUSY」
7. メトロ・ブーミン『Spider-Man: Across the Spider-Verse』
2023年に公開されたCGアニメーション映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のサウンドトラックとしてリリースされたメトロ・ブーミンの新作。アルバムにはリル・ウェイン、スウェイ・リー、JID、オフセット、ジェームス・ブレイクなどが参加し、ビルボードR&B/ヒップホップチャートで1位を獲得。
おすすめ曲:「Annihilate」「Am I Dreaming」
6. Atmosphere『So Many Realities Exist Simultaneously』
1996年にデビューしたアンダーグラウンドヒップホップのベテランデュオ、Atmosphere(アトモスフィア)。レベルの高いMCたちが集まるアンダーグラウンドヒップホップの名門レーベル〈Rhymesayers Entertainment〉に所属するAtmosphereの13thアルバム『So Many Realities Exist Simultaneously』ではラッパー、Slugのフォークやブルースのようなスタイルが際立つ。アコースティックギターやインディー・ロックのようなギターサウンドを用いたビートの上で自身の人生や経験を淡々とラップするスタイルは、フォークなどのファンにも刺さるだろう。
おすすめ曲:「Eventide」「Bigger Picture」
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