2023.12.06 19:00
全日本スナック連盟の会長を務める芸人、玉袋筋太郎とTempalayの小原綾斗(Vo, Gt)が都内近郊のスナックを訪ね、酒を片手にママの人生を振り返りながら話に花を咲かせる連載「玉袋筋太郎と小原綾斗の次、行こうぜ!」。久々の乾杯となった第3回目の今回、2人が訪れたのは、東京メトロ丸の内線の四谷3丁目駅からほど近い新宿荒木町にある会員制スナック「アーバン」だ。書籍編集者の臼井はるかママが経営していることから、多くの文化人が集うというこのアーバン。玉袋も馴染みの店だという。そんな店の雰囲気がそうさせたのか、麦焼酎で乾杯した玉袋と小原の話はいつしかスナック文化論と言えるものに発展していった。
小原綾斗 玉ちゃん、この店はよく来るんですか?
玉袋筋太郎 いや、すごく久しぶりなのよ。5年は来てねえな。
小原 この辺でよく飲むんですか?
玉袋 荒木町はけっこう前からだよね。北の屋ってうちの師匠のお店があったから、俺、そこでお手伝いしてたんだよ。だから、出入りはずっとしてるわけよ。
小原 出待ちしてたって頃ですか?
玉袋 そうだね。それで弟子入りして、その北の屋って割烹でお手伝いしてた。
小原 めっちゃ縁があるんですね。
玉袋 近くにも住んでたしね。高校を卒業してアパートを借りたのが四谷だったから。コロナショックもあったけど、アーバンは開店してからもう10年越えてるよね?
ママ 13年経ちます。
玉袋 うわ、うちの店のダブルスコアだ。ここのママは前はね、物書きだったんだよ。
ママ 玉ちゃんと浅草キッドの担当編集だったんです。
小原 そこからのつきあいなんですね。
玉袋 華麗なる転身だよ。それにしても荒木町で13年はすごい。けっこう古株になってきてるんじゃない? みんな死んじゃってるしさ(笑)。
ママ そうですね(苦笑)。
玉袋 古いお店もたくさんあったけど、新陳代謝とか高齢化とか、そういったことでね。荒木町はいいとこだよね。雰囲気がさ。
小原 風情ありますよね。
ママ あまり来たことないですか?
小原 初めて来ました。
玉袋 いいよ、ごちゃごちゃしててさ。隠れる場所があるんだよ。
ママ 玉さんは思い出の店がいっぱいありますもんね。
玉袋 それもあるけど、この荒木町の街の作りがいいわけよ。綾ちゃん、さっき風情があるって言ったじゃない? 前に荒木町を歩いているとき、角を曲がったら、ジュリーに鉢合わせしたんだよ。うわって思ったら、ジュリーの後ろに三歩下がって田中裕子さんがいて、またうわって。もちろん、挨拶したよ。そういう何て言うのかな。出くわすそわそわ感? 大人のかくれんぼ? それが荒木町だよ。しかも、アーバンは店作りが完璧なわけよ。だってもう、スナックわかってる人が作ってるんだもの。そこはコロナを克服して、13年を迎えた先輩だよ。俺、ママがいなかったらスナック始めてないからね。
小原 どういうことですか?
玉袋 全日本スナック連盟とかさ、ああいう感じでスナックの番組をやり始めたのは、やっぱりママと(編集者、写真家、ジャーナリストの)都築響一さんといろいろ話していて、イベントを始めたりとかさ。
ママ 懐かしいですね。
玉袋 それからなの。だからママ達と出会ってなければ、今、全日本スナック連盟の会長なんてことにはなってなかった。
ママ あの頃はスナックを素晴らしい場所と思っている人がいなかったんですよね。スナックがない街はどこにもないんですけど、若い人も含め、みんな自分達が行く場所じゃないって思ってたっていう。
小原 まぁ、確かに。
ママ 目には入るけど、なかなか行かない。でも、こんなに多くの人が飲んでる場所が日本中にあるのに、それが知られてないなんておかしいって話を玉さんとして。
小原 めっちゃちゃんとした大義があるんですね。
ママ ありますよ。
玉袋 あるあるある。それで、懐かしいスナックの店作りを敢えてやってるわけじゃん。そうやってスナックのおもしろさを新しい世代の人達に伝えて、13年を迎えるんだから、すごいフロンティア精神に溢れてるわけよ。
ママ 初めて言われた、そんなこと。ないない。ただ飲んでるだけですよ(笑)。
小原 ママはスナックが好きだったんですね。
ママ そうですね。お店を始める前に東京のスナック50軒のママのインタビューを集めた800ページぐらいの本を作ったんですけど、取材を兼ねて1年間、スナックで飲んでたら、なんだかスナックやれそうな気がしてきて(笑)。しかも、玉さんと一緒に本も作って、玉さんといつも飲んでたから、行けるかなって始めちゃったんです。
小原 スナックって言葉の響きがいいですよね。
ママ 軽食を出すという意味でスナックって言うんですよ。東京オリンピックの時にできたカテゴリーなんです。昭和39年にオリンピックをやる時に風営法を作らなきゃって話になって、夜のお店はスナックというカテゴリーを作ったんですよ。
小原 へぇー、おもろいな。おふたりはいつ出会ったんですか?
玉袋 15年近く前だよな。
ママ 今でも自分が作る本には玉さんにエッセイを書いていただいているんですよ。
小原 かなり深いですね。
ママ だって、こんな人いないじゃないですか。玉さん、今おいくつですか?
玉袋 56。
小原 僕の親父と同い年です。
玉袋 参っちゃうよな。倅だもん(笑)。
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