2023.11.08 17:30
「AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム- Additional Show」2023年10月31日 東京ガーデンシアター公演より(撮影:永峰拓也)
2023.11.08 17:30
「AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム-」のセミファイナル、東京ガーデンシアター2日目公演にて、あいみょんは「お風呂が嫌いやから敢えてツアータイトルにした」と話していた。その理由について彼女は言及しなかったが、バスルームは身体を綺麗にできる心地のよい場所でありながらも、入浴は手間や時間を取られ、疲労時に取り掛かるには非常に億劫な行為という側面を持つ。冬場は寒いし、さらには湯船に浸かっているとふと過去の後悔や苦しい記憶が蘇ることが多々ある。メリットを得るための代償は大きい。
だがそれはバスルームに限らず、我々の生活も同じではないだろうか。楽しいことをするために苦痛に耐える時間もあって、それを乗り越えた先には爽快感が待っている。あいみょんは飄々とした様子で「ちょっとお風呂好きになってるかも。だってマジ汗かくねんもん、このライブ。ちゃんと夜お風呂入って寝るようになったもん」と話していたが、これは現状自分に襲い掛かる苦痛と、そこから逃れるためにどうするべきなのかを同時進行で考える人物であることが垣間見られたシーンだったと思う。彼女の音楽が悲しみやセンチメンタルの枠に収まらず、ポジティブでポップへと昇華されるのも、その特色が表れたものではないだろうか。
オープニングムービーが映し出された斜幕が上がると、あいみょんのすがすがしい「東京ー! よろしくー!」の呼びかけからインディーズデビュー曲「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」でセミファイナルをスタートさせる。ステージにはニットキャップを被りTシャツにジーパン姿でギターを抱えた彼女と、6人のバンドメンバーのみ。シンプルなステージに、音楽で勝負するという潔さが表れていた。
MCではすぐ目の前にいる友人に語り掛けるかのように観客と会話を楽しみ、4月から続いた自身最長のツアーがセミファイナルを迎えることについて「わたしの今年は“マジカル・バスルーム”でできていると言っても過言ではない」と感慨深げに語る。そして「みんなが会場を出たときに“来て良かったな”と思えるライブを見せられたらなと思っています」と告げ、マイナー調のメロディが小気味よい「愛を伝えたいだとか」や、言葉の一つひとつに明かりを灯すような歌声が優しい「3636」などを届ける。「空の青さを知る人よ」ではのびのびとしたバンドサウンドと同化するように、力強い歌声を響かせた。
続いてのMCでは、カメラのついた双眼鏡を使いランダムで観客にフォーカスし、老若男女問わずフランクな関西弁で話しかけてゆく。開場前にランダムに選んだ10の座席に直筆イラストのポストカードを忍ばせたことを明かすと「絶対売らんといてな」と釘をさしたり、盛り上がるという理由で会場の全員でじゃんけんをしたり、「わたしおしゃべり好きやからさ」と言いながら小気味の良いトークを繰り広げた。
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