2023.10.29 18:00
宮野真守「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」写真:山内洋枝(PROGRESS-M)、青木早霞(PROGRESS-M)
2023.10.29 18:00
宮野真守にとって約4年ぶりにファンによる声援が可能となったライブツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」。今年6月にアーティストデビュー15周年を迎えたアニバーサリーとしての意味合いも持つ同ツアーは、彼がこれまでのライブで感じてきた思いや、培った経験、ファンやサポートと育んできた信頼関係がダイレクトに表れる夜となった。このレポートでは千秋楽の前日となる国立代々木競技場第一体育館の1日目公演の様子をお届けする。
最新シングル「Sing a song together」を用いたオープニングムービーに乗せてダンサーとバンドメンバーが現れ、客席にシンガロングを求めると、ミントブルーのマオカラースーツに15個の勲章をつけた宮野が上段ステージから登場。花道を歩いてセンターステージに向かい、落ちそうになるほどすれすれまで身を乗り出して観客に向かって同曲を歌い上げる。登場するや否や熱量を全開にする宮野の姿は、今ツアーで回った大阪、宮城、広島公演で得た興奮をそのままこの日につないでいるように見えた。
メロディが低音から高音までドラマチックに展開する「BREAK IT!」を躍動感たっぷりに届け、シティポップ風のアレンジが施された「THE ENTERTAINMENT(HIRO REMIX)」では鮮やかなダンスでもってビートに身を委ねる。積極的に観客へとコールやシンガロングを求める様子は、より濃く「SINGING!」というツアータイトルに込められたコンセプトを体現していた。
間髪入れずにダンサーとバンドのブリッジパートを挟むと、華やかな襟付きシャツに衣装チェンジした宮野がサングラスを掛けて「FANTASISTA 2023」へ。観客に歌ってほしいという気持ちが軸にあるからか、そして声援を受けてのアリーナでのライブも4年ぶりということもあってか、彼自身の歌声もいつも以上に情感がほとばしっているように見受けられた。サングラスを取り、歌謡曲テイストの「行こう!」でのコミカルな動きを交えながら憂いのあるメロディを歌い上げるというコントラストや、ロックナンバー「Greed」での喉を締めるようながなり声など、バラエティに富んだパフォーマンスで観客を魅了する。
そしてこの日のライブは、昨年開催された「MAMORU MIYANO ARENA LIVE 2022 〜ENTERTAINING!~」のさいたまスーパーアリーナ公演よりも、彼の歌声や存在が近くにあるような感覚があった。もちろん会場のキャパシティ的に前回よりも物理的な距離が近いこと、エモーショナルな楽曲で構成されたセットリストというのも理由なのかもしれないが、彼は会場の広さに適したライブパフォーマンスが身体に染みついているのだろう。今回は歌唱も立ち回りも、一人ひとりの心を打ちぬくようなライブを展開しているのが印象的だった。観客の歌声が彼を突き動かしているところも大きいかもしれない。「絶対に観客を楽しませる」というエンタテインメント精神と、純粋な歓喜の感情が入り乱れる様子が、とても爽快だ。
ダンサーとバンドメンバーのソロパート「Theme of SINGING!」を挟むと、やわらかいキーボードとギターの音色に乗せて黒のセットアップ姿の宮野が登場し「Invincible Love」でメロウな空気感で包み込む。スタイリッシュかつカラフルに前半パートをノンストップで駆け抜けていった。
客席じゅうから湧き上がる「マモ!」の声に笑顔を見せながらスツールに腰掛けた宮野は、時折、凛々しい声で「みんなを信じてるよ。綺麗な声聞かせてよ」などテンポ良く観客にシンガロングを呼び掛ける。どこまでもサービス精神旺盛だ。「みんなと歌うのにぴったりな曲」と告げ、ジャズ風味のアレンジで披露したのは「ぼくのキセキ」。心地よいワルツのリズムに乗せて様々な強弱のシンガロングを求める様子は、指揮者さながらだ。その後はバンドメンバーとのトークパートへ。トークテーマを考えてきていないという宮野は、メンバーに「何か面白い話とか、最近の悩みとかある?」と無茶ぶりをするも、10年以上の付き合いのメンバーがほとんどのため、楽屋のようなまったりとしたあたたかいトークが繰り広げられてゆく。リラックスしながらスツールに腰掛ける様子や、メンバーからのふとした投げかけから「このツアーでは“ありがとう”の裏側にある気持ちをちゃんと伝えられた」と語る清々しい表情からも、バンドメンバーに信頼を置いていることがうかがえた。
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