映画『炎上する君』で表現した“強要しない”メッセージ
「他者を肯定することは強くて難しい」うらじぬの×ファーストサマーウイカに問う現代の人間観
2023.08.12 17:00
2023.08.12 17:00
東京・高円寺を舞台に、幾度となく現実に絶望しながら、思いを共に自由と解放を求める親友二人のシスターフッドムービー『炎上する君』が8月4日より順次公開された。2010年に出版された西加奈子による短編小説を原作に、ふくだももこ監督がアレンジを加え、大胆なアクションを交えながら現代社会への疑問や問題意識を42分間に凝縮している。
主演の梨田には、舞台を主戦場に近年ではドラマや映画にも活躍の幅を広げるうらじぬの。そのバディとなる浜中は、バラエティやドラマ、歌手など多岐にわたり存在感を放つファーストサマーウイカが演じている。共に一つのフィールドに留まらず、マルチに活動する両者。それぞれが現在のポジションに至ったマインド、本作でクローズアップされる人間観に迫った。
──許容性がテーマで、男性キャストは少し意地の悪いような描き方でもあったのかなと思いますが、これでドキッとしてくれる男性が増えれば……という意図もあったんでしょうか?
うらじぬの そのような印象を受けるシーンもありますが、本質はそこでは無いような。気づいてなかったけど「自分もそういう悩みとかがあったのかも」って考えるきっかけになる作品にもなった感じがして、いろんな人のご意見を聞きたいなという感じはありました。
ファーストサマーウイカ(以下、ウイカ) 居酒屋のシーンもお笑いライブのシーンも、“男女問わず皆その場面でフォローや笑いになれば、と良かれと思って発言したことが誰かを傷つけてしまった”という風に私は受け止めました。この2シーンは私も過去に同じような事をしてしまっていたかもしれない、気をつけないと……と思えた場面なので印象に強く残っています。
なので誰にでも当てはまるし、実際女性も発言しているシーンなので、男性キャストを意地悪く書いたという風に見られるのは個人的には違うかなと。私自身もそうですが、相手への評価や判断が「これ正しいのかな」とか「これ間違ってたかも」と繊細になりつつはあって。今回の映画を10年以上前に書かれた原作をアップデートして作っているので、どうやったら誰も悪者にならず、そして自分も傷つかず生きていけるだろうかっていうのを性別・国籍問わず考えて悩む様を映し出した映画だと考えています。だから誰かに強制的に考えてほしいわけじゃなくて「こういう悩みあるよね」と感じ合える時間になったらいいなと思っています。
──お二人はコンビとして出演されていますが、以前から互いに認識はあったのでしょうか?
うらじぬの 私が所属している劇団にウイカさんがゲストで出演してくださったりとかして、面識自体は以前からありました。
ウイカ ふんわり共演はしたんですけど、がっつり一つの作品でやるのは今回初めてです。
──“バディムービー”としてのテンポ感の良さは最高でした。それは過去の共演があったからなのか、それとも撮影中に構築していったものですか?
うらじぬの あんまり口頭で「こうしていこう」っていう合図みたいなものはなくて。
ウイカ インの前にふくだ監督とうらじさんと私で事前に読み合わせやディスカッションする時間があったのが大きかったです。意識や背景を共有できた状態だったので、もちろん試し合いながらでしたが3日間という短い撮影期間でも意思疎通できていました。何より空気感を作ったのは監督じゃないかなって。過度な演出は無く、終始心から私たちを「梨田」と「浜中」として見てくれていました、泣きながら(笑)。
うらじぬの 疑わずにね(笑)。
ウイカ 疑わずに信じ切って見てくださったっていうのが大きかったと思います。だからこそ、私たちも変に図り合ったりしなかったのかなと。
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