「FLOWERS TOUR」後半戦が中野サンプラザからスタート
go!go!vanillasが“聖地”に捧げた感謝、3年越しのシンガロングに未来を誓う
2023.04.09 17:00
go!go!vanillas(2023年3月24日 中野サンプラザ公演より)撮影:西槇太一
2023.04.09 17:00
ホールにはホールの良さがある
「ここからダンスしましょう。ホールでも踊れるよね? みんなのポテンシャルはそんなもんじゃないでしょ!」(牧)
そんな言葉から始まった中盤は、柳沢がリード・ボーカルを取る「My Favorite Things」をはじめ、バニラズならではのやり方でR&Bの要素を落とし込んだバラードの数々を楽しませていった。観客が耳をそばだてたメランコリックな歌の魅力は、改めて言うまでもないだろう。ここではそんな曲の数々にサポート・キーボーディストの井上惇志が加えたムーディーなピアノやジェットセイヤがドンツクドンツク・ツチドチツチドチと鳴らしたダンサブルなドラム、そしてホールならではの音響効果を最大限に生かすようにリバーブを深く掛け、ダイナミックに響かせたキックのビートといった、1曲1曲趣向を凝らした演奏面、およびサウンド面の聴きどころについて書き記しておきたい。おっと、それを言うなら、「Dirty Pretty Things」の終盤、牧と柳沢が音色をハモらせたギター・ソロも忘れちゃいけない。
「いやぁ、気持ちいいね! ライブハウスも最高だけど、ホールにはホールの良さがある」と再び快哉を叫んだ牧をはじめ、メンバー達も心底、ライブを楽しんでいるようだ。
「セッションやっちゃう?」というジェットセイヤの一言から始まったブルース・セッションからなだれこんだ後半戦は、バニラズのロックンロールとアンセムのオンパレードと言えるセットリストにコール&レスポンスも交えながら1階席はもちろん、2階席も揺らしていく。観客の熱狂ぶりに牧が三たび快哉を叫ぶ。
「みんな、すごいね! 3年前(コロナ禍以前)よりもパワーアップしている。今日がサイシンサイコウだ!」
この日、心の内を曝け出すように、その瞬間瞬間の素直な気持ちを言葉にしてきた牧が最後に、バンドを代表して語ったのは、建て替えのため、いったん取り壊される中野サンプラザをはじめ、いろいろなものが変わっていく中、変わらずに情熱を燃やすことができる音楽、ロック・バンドに出会えた幸運と、それに打ち込むかけがえのない時間を一緒に過ごしてくれる観客の存在に対する感謝の気持ち。
「これからもバニラズをよろしくお願いします!」(牧)
そして、アンコールでは、バニラズの魅力の1つであるハーモニーワークをいつも以上にアピールするサプライズも交えながら、最後の最後まで観客にシンガロングさせ、バニラズは2時間を超える熱演を締めくくった。ツアーはまだまだ続くので、セットリストを含めた詳細は控えさせていただくが、チャンスがあるなら、ぜひライブに足を運んで、グルーブとアンサンブルに磨きを掛け、ツアーに臨んだ現在のバニラズのライブを体験していただきたい。5日前に「ツタロックフェス2023」でバニラズのライブを見た筆者は、大いに期待して、中野サンプラザに足を運んだのが、彼らはそんな期待を軽々と上回るライブを見せてくれたのだ。
この日、ホール中に響き渡る観客のシンガロングを聴きながら、前述したように新しい時代の始まりを感じずにいられなかったが、もちろん、この先、状況がどう変わるかは誰にもわからない。だからこそ、この日、牧がステージで言った言葉を胸に刻んでおきたいと思う。
「未来は裏切るかもしれない。だから、信じることが大事なんだ」