秦 基博の楽曲から生まれた映画の撮影秘話を振り返る
⼩川未祐×菊地姫奈×菅⽣新樹×和⽥庵、4人の若手キャストが生きた『イカロス 片羽の街』
2023.03.01 17:00
2023.03.01 17:00
今までの作品とは違う経験がたくさんできた（菅⽣ 新樹）
続いては、枝 優花監督『豚知気⼈⽣』に主演した菅⽣ 新樹。家族を振りまわした挙句に突然この世を去った渋川 清彦演じる父。菅生演じる主人公・ツキがホームレスから手渡された豚のぬいぐるみにその父が転生してきて──という、この作品では“癖”だらけの家族による先が読めないストーリーが畳み掛けるように展開していく。これから役者としてのキャリアを積み重ねていくなかでのこの前代未聞の脚本。菅生はどうストーリーを消化していったのか。
──監督から『豚知気人生』の台本が届いたのと楽曲「イカロス」が届いたのはどちらが先だったんですか？
菅生新樹（以下、菅生） まずオーディションがあって。オーディションの台本は仮台本で、僕は詳しくは何も知らず、こんな感じの作品なのかなって想像だけでした。出演が決まって読み合わせのときに曲を聴かせて頂きました。同時に作品の内容も知りました。
──いかがでしたか？ この曲から「豚」に繋がってことについて。
菅生 そもそも曲からインスピレーションを受けて作品を作るという座組みが珍しいことなのか結構あることなのかも分からなかったので、調べたりしつつ、どう演じたらいいのかな？って。不安も正直ありました。なので監督とたくさんお話しさせていただきました。役の背景だったり。監督の脚本なので、僕が疑問に思ったことを、相談させてもらいました。
──現場でセッションした感じだったんですね。
菅生 そうですね。一回演じてみて、なんか違うと思ったら監督に「どうしましょう」って確認したり。監督からの要望を聞いて、でもそれをうまく体現できなかったときはもっと深く聞くようにして。ずっと相談してました。
──そういう意味ではぶつかり合い？
菅生 本当にそうでした。最終日もシーンによっては、良い意味でぶつかり合って。僕も生意気なことも言っていたかもしれません。なかなか掴みきれないシーンもありましたが、監督にうまく言葉で演出していただきました。
©2023「イカロス 片羽の街」フィルムパートナーズ
──その経験は今後の役者人生には活かせそうですか？
菅生 僕のまだ数少ない経験の中で枝監督は歴も歳も若い方で、だからこそ何でも親身に相談させてもらえて。ただ話をして理解はしても、僕自身が体現ができない、じゃあどうしようって全部相談するからこそまた難しかったというところもありました。今回は初主演ということもあり、雰囲気作りだったり、その中でどうしたらうまくいくんだろうみたいことも考えて、今までの作品とは違ういろんな経験ができ、たくさんのことが経験できた現場でした。
──今後なかなか豚のぬいぐるみを相手取ることもなさそうですね。
菅生 そうですね（笑）。
──豚の中身の渋川清彦さんとどういったやりとりをされましたか？
菅生 今まで渋川さんが出られた作品もたくさん見てきていて感想をすごくお伝えしたかったので、まずは直近の『キングダム』の話をしました。渋川さんの考えを知りたかったので、どういうことを考えてお芝居されてるのか、とか。プライベートの話もさせてもらいました。撮影の空き時間に一緒に弁当も食べましたし、自然と落ち着くというか、無言でいてもお互い良い意味で気を使わずにいられるというか。最初は緊張してたんですけど、そこにいてくれるだけで安心できる、本当に父親みたいな方でした。
──菅生さんは先輩の役者さんにも切り込んでいきたい、いけるタイプなんですね。
菅生 たくさんお話が聞きたくて。デビュー作でも唐沢寿明さんや共演者の皆さんとお話をさせていただきました。共演した方には気になったことをいろいろ質問してしまいます。皆さんキャリアもあって、多くの経験をされていても、ずっとお芝居について悩んでるんだなと感じました。どこまで行ったとしてもずっと悩み続けているからこそ、いつまでも活躍されてるんだろうなという印象です。
──こうしてお話聞いていると、自分の中で噛み砕くのが早そうだし、話を聞いて貪欲に自分のエネルギーに変えていけそうですね。
菅生 そうですね。シンプルな疑問は、マネージャーさんだったり、業界の詳しい方に聞いてますし。そこでまた得るものもあったり。
──話が変わるのですが、秦さんのCDを踏み潰すシーンが印象的でして……。
菅生 あれは渋川さんがすごく上手かったです。もみくちゃのシーンだったのですが、完璧に自然に踏まれてたじゃないですか？ だからさすがだなと思いました。CD替えも多分そんななかったし。それでパッと決められて。
──渋川さんはバイオレンスものにもたくさん出てらっしゃいますし、空間把握能力があるんでしょうね。
菅生 そうだと思います。僕はまだまだですけど、偶然噛み合うときもあるんです。本気で狙うとハマらない、でも意外と何も狙わずやるとマッチする。そんな瞬間があります。それを必然に起こすための歩数とか、映り方、こういうところでこう見せればいいんだっていうのは技術力が備わってくれば出来るかもしれないけど、大事な気持ちがおろそかになってはいけないので、大切にしていきたいです。
──今のお話されてる目を見ていると、凄く楽しそうですね。
菅生 はい（笑）。楽しいです。
──秦さんの楽曲で思い入れのある楽曲はありますか？
菅生 僕が中学2年生のときに「ひまわりの約束」が発売されて。カラオケで一番歌ってまして、声変わり前の十八番でした。今でもたくさん聴きますし、「イカロス」ももちろんすごく好きです。だからまさかお会いできたり、秦さんの作品に携わることができるなんて思いもよりませんでした。とても光栄です。
──最後に、撮影前後で豚の見方って変わりましたか？
菅生 ぬいぐるみの豚ですか？（笑）
──いや、豚そのものです（笑）。
菅生 いや、変わってない（笑）。普通に好きです！ これからもおいしく食べます。
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