2023.01.19 17:00
2023.01.19 17:00
実感する会社員の大変さ
──相澤夫婦の様子が、またリアリティがありますよね。うまくいってはいるんだけど、なんだかすれ違うというか、コミュニケーションが足りていないというか……。
でも「どっちが悪い」とかじゃないんですよ。例えば直也と夏菜さんのどちらかが悪い、となっていればわかりやすいんですけど、このドラマはそうじゃないという。
──直也という役は、村井良大個人から見てどうですか?
個人的に直也を演じていて気をつけていたことは、とにかく「私は落ちてません」ということをずっと言い聞かせていました(笑)。例えば、第三者から見たら「いや、もうそれは完全に落ちてるだろ」というシーンだったり、言い逃れできない状況なんですが、直也は「落ちていない」から言える精神状態である、ということにかなり気をつけていて。それがだんだん「この直也っていう男、ずるいな」と見えてきたらいいな……と思いながら演じてましたね。
──ずるい?
ずるいというか、「認めない」というか。最初は直也が可哀想に見えるんですけど、段々と「おい直也、なんか最初と全然違うぞ? 最初は同情したけどちょっと同情できなくなってきたぞ?」 と変化していく面白さがあるなとは思っています。そこは演じていてもある意味楽しい部分ではありました。
──でもその匙加減って、すごく微妙な演技になりませんか?
そうなんですよ! だから大切なのは「気持ち」です(笑)。それで押し切った感じですね。あと撮影中にかなり使ったワードとしては「仕方がない」です。「あの場面ではこうするしかないでしょう」みたいな、言い訳に近いようなことを心の中で思いながら演じていました。直也とノアちゃんは会社の先輩・後輩という関係性もあるので、直也としては、目の前の女性を傷つけたくないという優しさもあるでしょうし。あと、大きいのは「ハラスメント」ですね。
──そうか、あえて強く拒絶できないのにも理由がある!
時代的に「これは若い子には勝てないよなあ……」と思いました。これをやったらパワハラになる、もしくは逆セクハラみたいになるからやっちゃいけないよなとか。今の時代、会社員の人は大変だなあ……というのを演じながら実感しました。多分、直也は優秀なんだろうけど、そこまで器用じゃない。最初にノアちゃんからアプローチを受けるシーンを撮るときに、監督に「断り方をどうするか」というのを相談したんです。例えば、すぐ察知して拒否するアプローチもあれば、全然気づかないというアプローチもある。監督としては、「天然で返して欲しい」ということでした。そこがノアちゃんに「これまでの男性とは違う」という興味を持たせる結果になったんじゃないかな、と思ってます。
──でもそれも、セリフとして差が出るわけでもないですもんね。
どうにでも解釈できるセリフもたくさんありますし、雰囲気や流れによって変わっていく瞬間が多かったので、そのあたりをすごく意識しながら丁寧に撮影をしていきました。ただ大変だったのが、撮影の順番がバラバラだったんです。だから台本を何度も読み直して、ここの直也は今どういう状態なのかというのを細かく確認しながら撮影に挑みました。特に家族である夏菜さんとの距離感というのを大事にしました。
──また妻の夏菜さんを演じるのが宇垣美里さんという。
そうなんです! だからこの直也は基本的に全男性から羨ましがられるというか、叩かれる役なんですよ(笑)。若いノアちゃんからアプローチを受けて、こんな麗しい妻もいて何してんだっていう。
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