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INTERVIEW

「全てを説明するようなタイプの映画は好きじゃない」

邦画に造詣の深い『LAMB/ラム』のヴァルディミール・ヨハンソン監督が次作に向けて想うこと

2023.01.06 18:30

2023.01.06 18:30

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1月1日からPrime Videoにて独占配信が開始、パッケージが3月3日(金)に発売されるA24スタジオ配給の映画『LAMB/ラム』。アイスランドの人里離れた田舎で暮らす羊飼いの夫婦が、羊から産まれた“羊ではない何か”を“アダ”と名付け、育てていく禁断のネイチャー・スリラーである。日本では2022年9月に公開され、全国36館でのスタートながら公開から20日で興収1億円を突破した。

12月12日時点では1億4千万円越えを記録し、その大ヒットを受けてヴァルディミール・ヨハンソン監督が来日。その際に『LAMB/ラム』の製作プロセスを振り返るとともに、日本映画への愛、そして自分の映画作りのこれからについて語ってもらった。

『LAMB/ラム』本予告

──『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で特殊効果を担当した経歴が知られていますが、本作でも強いビジュアルが印象的でした。改めて、最初の長編デビュー作のテーマにフォークロア(民間伝承)調で神話的なテーマを選んだわけを聞かせてください。

私は長らく映画の業界で働いてきました。そこである時、自分が“自分の映画”を作りたがっていることに気づいた。そこからたくさんのイメージを集め始めました。物語は決めていませんでしたが、どのようなタイプの映画にするか、どのようなショットを撮るか、どのような要素を持たせたいかはわかっていたんです。たくさんの写真集を参考にし、スケッチもいっぱいしましたね。それが本作を作り始めた初期の段階です。その頃にはすでに、物語の舞台が田舎であるべきだと確信を持っていました。そこでプロデューサーが紹介してくれた脚本家のショーンと長い時間を一緒に過ごす上で、私が事前に持っていた全てのイメージを元にした物語を作りました。

ヴァルディメール・ヨハンソン

──監督にとってビジュアルから作品を生み出すことが自然なんですね。そのビジュアルはどこから着想を得るのでしょう?

おそらく、そういうものは自分の生まれ育った環境や周囲にどんな人がいたのか、自分が何を見て何を聞いてきたのか、というものが大きく関わってくると思います。それら全てから影響を受けると思うし、時には何かを一緒に見ても違う影響を受けることだってある。そういうところからアイデアは浮かぶと考えています。ただ、アダに関しては正直どんなふうにアイデアが浮かんだのかあんまり覚えていません。これまでずっと動物を人間のように描くことに魅了されてきたことは確かです。おとぎ話や風変わりなものが好きでした。私が好きなタイプの映画は、そういう超自然的な要素が普通として扱われている類のもので、とにかくそういうのが好きなんです。

──アダちゃんは本当に世界的に人気者になりましたよね。予告編を見た時から、奇妙なほど魅了されました。映画本編でも可愛すぎるので、彼女の身に何かが起きたらどうしようと心配しました(笑)。

はは(笑)。でも、実は映画全体の絵コンテやルックブックのようなものを作って関係者に見せにまわった時、たくさんの人からアダが不気味だから観客に嫌がられるのではと心配されたんです。気持ち悪い、とさえ思われました。だから僕自身すごく不安になったのですが、一方でその反応を不思議に感じていました。なぜなら僕にとってアダはすごく美しい存在だったから。

──物語そのものもアダをより美しい存在に引き立てたように思えます。

初期の設定では、アダはもっとたくさんセリフがあったんです。ただ、言葉を話さない方が興味を惹かれる存在になることに気づいた。ほら、たとえば猫や犬が自分のもとに来た時、彼らが何を考えているのか気になりますよね。

──確かに。本作は“ナチュラルホラー映画”と謳われていますが、ホラー映画を作ること自体に興味はお持ちですか?

僕にとって『LAMB/ラム』は家族の物語です。それに、全てを説明されないからこそ自分で何かを考えるような映画が好きなんですよね。それが今の僕にとって興味を持てるプロジェクトになると思います。そういう作品の監督を誰かがオファーしてくれて、僕が脚本を気に入れば、どんなジャンル(の映画)に対してもオープンな気持ちで引き受けたいと考えています。ただ、とにかく全てを説明するようなタイプの映画は好きじゃない。

──“全てを説明する”類の作品は日本にも近年映画やドラマに関わらず多く作られてきているように感じます。

そういうドラマが増えましたが、あれらはほとんどラジオドラマに近いんです。全てを説明せず、疑問をいくつか残してしまったら、まるで観客から文句の電話が来るかのように感じるから。映画製作者は観客を過小評価すべきではなく、彼らが映画の一部になることを受け入れる必要があるんです。私は『LAMB/ラム』のプロモーションで世界を飛び回りましたが、何が好きだったって、いつも会う人々が映画に対して違う見解を持っていたことでした。本来、そうあるべきなんです。

──世界から注目を浴びる気鋭スタジオのA24との仕事はどうでしたか?

彼らは実は僕らの制作がほとんど終わるまで関わっていなくて、セールス用の予告編をベルリンで見せた時からプロジェクトに参加しました。A24と仕事ができてよかったです。彼らは素晴らしいチームを持っている。とても勇敢だし、遊び心があるんですよね。最初に彼らが本作に使う予定の予告を見た時、彼らは自分たちが何をしているのかわかって仕事をしていると、理解できました。彼らがあまりにもアメリカでのプロモーションをうまくやってくれたおかげで、“アイスランドの農家についての映画”がこんなに観てもらえたんです。クレイジーな話ですよ、だって本国のアイスランドでは(興行的に)失敗していましたから。製作においても完全な自由をもらえていました。

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ヨハンソン監督が最近お気に入りの映画は?

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作品情報

LAMB/ラム

©2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

©2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

LAMB/ラム

Prime Videoにて独占配信中、Blu-ray&DVD3月3日(金)発売
発売元:クロックワークス
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
2021年/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/カラー/シネスコ/アイスランド語/字幕翻訳:北村広子/原題:LAMB/106分/R15+
配給:クロックワークス 提供:クロックワークス オディティ・ピクチャーズ 宣伝:スキップ

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
脚本:ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン
製作:フレン・クリスティンスドティア、サラ・ナシム
出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン

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