2022.12.25 12:00
2022.12.25 12:00
一人ひとりと向き合った現場
──ちなみに本作の構想はいつごろからスタートされているんですか?
結構古いんですよ。前作の『バースデー・ワンダーランド』(2019年公開)の絵コンテ作業をしているときに、もう脚本作業には入っていました。意外と早い段階から動いてはいましたね。
──そのときから個性豊かなキャスティングに関しても進めていたのでしょうか?
いや、まだそういう話はしていませんでした。ただ、絵コンテを描きながらお母さんはやっぱり麻生(久美子)さんだなと、僕の中で勝手に決まってました。あとは『バースデー・ワンダーランド』でも声をやってくれた横溝菜帆さん。当時彼女は小学校5年生だったんですが、そのときに「次は中学生ものやるから」とすでに声を掛けてて。だから彼女はなんらかの役で出てもらうって決めてましたね。
──結果的に、俳優さんと声優さんが類を見ない混ざり合った感じにうまく配置されたキャスティングでした。
結構な大規模公開の作品になるので、いろんな客層に届けたいというプロデューサー・チームの提案で声優さんも入れましょうとなりました。こころの役は、10代の中学生か高校生の子に頼みたいっていうのは一貫して僕自身思ってました。
──冒頭の鏡の中に引き込まれていくシーンとか、非常にリアルな演技でした。プロダクション・ノートには、當真あみさんが時間を重ねるごとに、どんどんヒロインに、こころと重なっていくような人になったとあったんですけど、演技のアドバイス的なやり取りはどういうふうに行われていたのでしょうか?
オーディションで選び抜いた子なので、その時点で特に不安はなかったんです。オーディションでも実際に何シーンかのセリフを読んでもらい、その場で手直しをしてテイクを重ねて録るという。さすが1,000人から選ばれた子です。プロデューサーチームと一緒に選びに選んで、その中のひとりが當真さんでした。(オーディション参加者は)10代だけど強者揃いで悩みましたね。
──そうなんですね。アキちゃん役の吉柳咲良さんの演技も堂に入っていましたね。
彼女の芝居には、僕はもう舌を巻きましたよ。今回は全員ひとりずつセリフを録音して、別の人の回でそれを聴きながら各シーンの声を録っていったんです。だから一方的なセリフがだんだんと会話になり、数人のやり取りになる。重ねていくにつれて、どんどん会話が成立していくように。
──なるほど! 複数人で吹き込みをやったわけではないんですね。
僕がひとりに集中したかったんです。ある段階で吉柳さんの声が入って、ほかの人の回のときに吉柳さんの芝居が流れるんだけど、聴くたびに「本当にこの子はうまいなと」感心してました。ちょっと悪い言い方だけど、お芝居モンスターだなって。彼女には褒め言葉として受け取ってもらおう(笑)。
──完璧すぎて、ということですよね。
役者としての意識が高いんですよ。高校生にして芯があるというか、腹が据わっているというか。
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