2022.12.05 17:00
2022.12.05 17:00
第157回直木賞を受賞した、佐藤正午の最高傑作とも名高いベストセラー小説『月の満ち欠け』が実写映画となり12月2日に全国公開された。大泉洋を主演に迎え、“生まれ変わり”をテーマに年月を越えた純愛が描かれる本作。大泉とともに物語を彩るキャストに有村架純、映画初出演の目黒蓮(Snow Man)、柴咲コウなど実力と華を併せ持つ役者陣が顔を並べるなか、主人公の娘役に抜擢されたのが新鋭女優の菊池日菜子。作中で演じた小山内瑠璃と同じく、あどけなさのなかに時折大人びた顔も見せる彼女は今、どんな気持ちで本作の公開を迎えているのか。撮影を振り返ってもらいつつ、今後挑戦してみたいことなど、笑顔を絶やさず答えてくれた。
——演じられた小山内瑠璃について、高校三年生とは思えない大人びた表情と、家族とのパーティーや親友に見せる年頃の女の子らしい表情のギャップに目を奪われたのですが、どういう意識で演じ分けられましたか?
瑠璃ちゃんの人物像を掴もうと、撮影に入る前にいろいろと考えました。二面性といっても人格が違う訳ではないんですよね。その瞬間を楽しんでいる女の子で、家族のことも友達のことも大好き。抱えているものも自分の人生として楽しんでいるという大前提があると思ったので、そういった部分を忘れないようにしようと思いました。
——ホームパーティーのシーンも本当に楽しそうでしたね。
はい。家族のことが好きな気持ちと、友達の(伊藤沙莉が演じる)ゆいちゃんと一緒に楽しもうという気持ちで、ただ楽しむことだけを考えて臨みました。
——ドキュメンタリーを切り取ったようなシーンで、ニコニコしながら見てしまいました。今回菊池さんを取り囲む周りの役者が大泉洋さんを筆頭に錚々たる方々ばかりだったと思いますが、どういった形でコミュニケーションをとられましたか?
台本をいただいて、共演者の皆さんのお名前を見た時はものすごく緊張したんですが、いざ現場に入ってみると本当に皆さん温かくて優しくて、たくさん話しかけてくださって。そのおかげで臆さずに現場にいることができたと思います。
——なるほど。一番時間を長く過ごしたのは、伊藤沙莉さんだったと思うのですが、どんな話をされたんですか?
最初の方に撮ったのが学校のシーンだったんですが、ちょうどM-1の決勝発表があった頃で。私はお笑いが好きなので、「おめでとうございます」と言わずにはいられなくて。その時の会話はものすごく覚えています。
※伊藤沙莉の兄は芸人・オズワルドの伊藤俊介
——推している芸人さんいらっしゃるんですか?(笑)
Aマッソさんが大好きです!
——そうなんですね! Bezzyでは芸人さんの企画もあるので、また別の機会でもぜひ……(笑)。すみません、話を戻します。出演者だけでなく、これまであらゆる映画を撮られてきた廣木監督とのコミュニケーションで印象的だったことはありますか?
私自身、納得のいく表現をすることができなくて、難航したシーンがあったんですが、その時に廣木監督が隣にスッと来て下さって、「今瑠璃はこういう心情で、こういうことを考えていて……」ということを滔々と解いてくださったんです。そのおかげであのシーンを乗り越えられたのがとても印象に残っています。
——言葉ひとつで変われるものなんですね。
私が役のままの姿勢で監督の言葉を聞けるよう、脳内に語りかけるように話してくださったんです。特にあのシーンは監督にすごく助けていただいたので、感謝しかないですね。
——やっぱり名監督の器は大きいんですね。小山内瑠璃が生まれた年が80年代で、女子高生のパートが99年で、ともに菊池さんが生まれる前のお話ですが、当時にタイムスリップできるとしたらやってみたいことはありますか?
劇中で使われているウォークマンがすごく印象的でした。ボタンただひとつだけで、画面をスワイプする機能などもなくて……声だけのコミュニケーションだったり、そういうのっていいなと。家の電話で「何時何分にどこで」と約束してみたいなと思いました。
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