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INTERVIEW

いまホットな現代アーティストを訪ねる vol.1

ヒップホップのリズムを彫刻する──アーティスト・小畑多丘インタビュー

2022.09.28 12:30

2022.09.28 12:30

ノリのいい音が流れると、人はリズムを見つけ、体が自然と動き始める。しかし、たとえその空間に音楽が流れていなかったとしても、対峙するだけでリズムやノリが自然と感じられるものがある。それがアーティスト・小畑多丘の彫刻だ。

小畑多丘は10代からブレイクダンサーとして活動し、東京藝術大学に進学して以降、彫刻家としてブレイクダンスで得た経験を彫刻に転換してきた。鮮やかなジャケットを着て、フリーズのポーズを取る木彫作品など、〈B-BOY〉シリーズが主に知られている。また、2011年に行われた2回目の個展からドローイングのシリーズも発表している。

この数年は、より彫刻的な思想が加わり「リズム」や「ノリ」を感じさせる作品が生み出されている。今回は小畑の地元、所沢に新しくつくったスタジオを訪ね、ダンサーではなく彫刻家になった理由や近年の制作スタイルの変化、木彫とドローイングの違いについて聞いた。

ダンスという身体表現を、彫刻に落とし込んでみたかった

小畑多丘

子どもの頃からブレイクダンスやバスケをやっていて、ヒップホップカルチャーにも傾倒していましたね。でも、いつかはサラリーマンにでもなるんだろうなと思っていたら、兄が「美術大学でデザインを学びたい」って、予備校に通い始めたんですよ。そこで「あれ、僕ももっと自由に生きていいんだ」と思えるようになっていきました。最初は自分が表に出る仕事をしたいという思いと、ダンスを映像に落とし込むことに興味があったから、それを中学の同級生に相談したら、「美大に映像科っていうところがあるんだけど、そことかいいんじゃない?」って言われて。「それなら自分でつくって自分で出れる」と思って、予備校に通いはじめたんです。

予備校では美術に関する技能や知識を教えてくれるんですけど、実際に手を動かしてみると、つくる方がどんどん面白くなってきて。そこでヤン・シュヴァンクマイエルの映像にも出会って衝撃を受けて、ダンスの動きとクレイアニメを掛け合わせたアニメーションを自主制作していました。そうやって最初は映像科に行くつもりでいたけれど、美術系の大学のパンフレットを見ていたら、彫刻科が目にとまって。「ダンスを彫刻にしたら面白いんじゃないか」と思って、2浪目から彫刻科志望に切り替えて、3浪目で東京藝術大学の彫刻科に入学が決まったんです。

ひとつめのスタジオには、制作途中の木彫作品が
そのほかにも、大学時代に制作した作品や、
巨大な木彫のためのマケット(模型)が置かれている

絵の具を「量」として捉えたとき、ドローイングも彫刻的になっていった

前のスタジオでは手狭だったから、新しいスタジオでは時間のかかる木彫作品と、短時間で完成するドローイング作品を並行して進められるようにしました。2階の休憩スペースには小窓を着けて制作過程の記録を撮影できるようにし、ギャラリーとして使うことも想定してなるべくシンプルな内装にしています。

アーティストとしての制作スタイルや、作品への考え方はコロナ禍を機にかなり変わりましたね。コロナ禍が始まる前まではロンドンで滞在制作をしていて、その後は数年L.A.で滞在制作をする予定だったから。そうしていたら、このスタジオもできることはなかったと思います。

特にドローイングにおける作家性は飛躍的に伸びましたね。2019年にロンドンで滞在制作が始まって、彫刻道具を調達している3ヵ月間描きまくっていたんです。そこで紙の上にスプレーして色をたっぷり出し、そのスプレーの塗料をヘラで動かす。「絵の具を『量』として捉えると彫刻的だな」と気づいて。木を彫るとき、木は最初から量が決まっているので基本的にはその中で作品をつくります。最初に絵の具の量を決め、それが無くなるまで動かし続けるというルールを作ることで、描くことに縛られない、彫刻的なドローイングができると気づいたんです。

その後、馬喰町にあるDDD HOTELと一体になったPARCELというギャラリーから「アートフェアを開催するから、キャンバス作品を日本に来て描いてほしい」と声がかかり、翌年の3月にたまたまロンドンから一時帰国することになりました。その後はみなさんもご存知の通り、ロックダウンが始まって。本当は10日間でロンドンに戻る予定だったけれど、戻るに戻れなくなってしまいました。

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小畑多丘にしかできない、ドローイングとは

イベント情報

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

2022年9月1日(木)- 9月30日(金)
12:00–20:00

会場:A+S
東京都渋谷区神宮前3-34-10-2F
TEL : 03.5414.1320
OPEN : 12:00-20:00

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

Têmporas/テンプラ

Têmporas/テンプラ

会期:
2022年9月22日(木)- 10月29日(土)
17:00–19:00

会場:
Sokyo Lisbon(リスボン ポルトガル)

Têmporas/テンプラ

B BOY 彫刻家

自らもB BOYであり、木彫による人体と衣服の関係性や、B BOYと彫刻を端緒に生まれる空間、動き、重力を追求、彫刻以外のメディアでも精力的に表現し続けている。

※ B BOY (ブレイクダンスをする人)

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