「シュレックじゃねーよ」近藤春菜も絶賛
あの名作が大人から子どもまで楽しめるミュージカルに! 『シュレック・ザ・ミュージカル』開幕
2022.08.18 07:00
2022.08.18 07:00
大ヒット映画『シュレック』を元に、2008年にブロードウェイでミュージカル化された『シュレック・ザ・ミュージカル』が日本に初上陸。8月16日、東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開幕した。
ドリームワークス製作の映画『シュレック』は、2001年の公開以来、大人から子どもまで幅広い年齢に人気を博す名作だ。
主人公は、緑色の怪物“オーガ”の一族・シュレック(spi)。彼にまつわる恐ろしい伝説とは裏腹に、人里離れた森の沼のほとりで気ままな生活を送っていた。そんなある日、領主によって国を追放されてしまったおとぎ話の住人たちが、シュレックの住む森に押し寄せてくる。これまでの平穏な生活を取り戻すべく追放令を出したファークアード卿(泉見洋平)に交渉するシュレックだが、思わぬ交換条件を出されてしまうことに。それは「自分の代わりにドラゴンと戦って、囚われの姫・フィオナ(福田えり)を救い出せ」というものだった。仕方なく、お調子者のしゃべるロバ・ドンキー(吉田純也)とともに冒険の旅に出たシュレックだったが……というストーリー。
『シュレック』という作品の魅力は、単なる「子供向けアニメ」の枠を超えたところ……おとぎ話のパロディだったり、従来の「物語」へのアンチテーゼがたくさん盛り込まれているところにある。そもそも“囚われのお姫様”を助けに行くシュレックは童話に出てくるような勇敢な王子ではないし、むしろ真反対の怪物。大体こういう話では見た目に反して心が優しかったり……というパターンが王道だが、かといって性格がいいわけでもない。一方、助けられるフィオナにしても、けして一筋縄でいくプリンセスではない(こちらは舞台上でぜひ確認を)。しかし彼らは、いつしか惹かれ合う。その理由や、映画公開時にも反響を呼んだラストの結末は、いろいろな価値観や制約に縛られて「生きづらさ」を感じている人ほど響くはずだ。
今作はミュージカルということもあり、その『シュレック』の世界観が楽曲にのせて紡がれていくのが何よりも楽しい。フルオーディションで選ばれたというキャスト陣は全員が実力派揃い。歌唱力の見事さはもちろんだが、“濃い”『シュレック』の世界観を全身全霊で演じ(衣装やメイクを考えるとかなりハードなはず……)フル回転で客席を沸かせていく。全編に渡って笑いが散りばめられているのはもちろん、ドンキーなど動きもビジュアルも「アニメからそのまま抜け出したのでは!?」という完成度、よくぞこれを舞台で再現したなと舌を巻いてしまう。クセが強すぎるフィオナも圧巻!
ちなみに夏休み中の上演ということもあり、初日の客席には小さな子どもたちも大勢詰めかけた(4歳以上が入場OK)。果たしてこの『シュレック・ザ・ミュージカル』という作品を子どもたちはどう受け止めるのか……と他人事ながら少しドキドキしてみたものの、結論から言うとそんな心配は大きなお世話! 少なくとも初日は、「子どもたちが多い客席」と聞いて心配になるような事態は全く発生しなかった。
おとぎ話の登場人物たちの挙動(特にピノキオが大人気)にダイレクトに反応し、シュレックやドンキーの会話を楽しそうに聞いて、フィオナのお姫様らしからぬ挙動にゲラゲラ笑う。そして、キャスト陣たちの見事な歌声には、皆食い入るように魅了される。“本気のエンターテインメント”は、子どもたちにもしっかりと伝わる……そんなことを改めて感じさせられる。
余談だが。子どもたち、時代やカルチャーを超えてオナラとかゲップネタは大好きなんだなあと実感……時々声を上げてセリフに反応してしまう、そんな客席の反応がなんとも微笑ましい。
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