2025.12.02 15:00
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
2025.12.02 15:00
12月19日(金)に公開される綾野剛主演映画『星と月は天の穴』のメイキング写真が解禁された。
本作は“愛されたい”願望をこじらせる40代の小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜつつ綴る物語。原作は芸術選奨文部大臣賞を受賞した吉行淳之介の同名小説で、『⽕⼝のふたり』(19)などで“愛と性”を描き観る者の情動を掻き⽴ててきた荒井晴彦が監督・脚本を担当した。
綾野が演じるのは過去のトラウマから“愛する”ことや“愛される”ことを恐れながらも、心と体の矛盾に揺れる“枯れかけた”男・矢添克二。そして新星・咲耶が矢添と出会う大学生・紀子、田中麗奈が矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じる。また、脇を固めるキャストには柄本佑、岬あかり、MINAMO、宮下順子らが名を連ねた。
今回解禁されたのは、荒井組のチームワークの良さと映画への真剣なこだわりが伝わってくるメイキング写真。全6点には『花腐し』(23)に続き2度目のタッグを組んだ荒井監督と綾野のほか、咲耶の笑顔なども切り取られている。

吉行による原作小説は1966年に上梓されており、当時10代だった荒井監督は矢添の心情と“男の性(さが)”にシンパシーを抱き「いつか映画化したい」と思い続けてきたという。本作のプロデューサーの1人、清水真由美は「監督は『昭和40年代の小説だから古いかな』とおっしゃったんですけど、主人公の男は愛を拗らせ、逆にヒロインはそんな男にヅケヅケと踏み込んでいく。むしろすごく今っぽいと思いました」と原作の印象を語っている。
そして荒井監督は当初、時代設定を現代に移して脚本を書いてみたそうだが原作当時の価値観やシチュエーション、セリフが現代とそぐわず物語そのものが成立しなくなると判断した。そうして時代を原作小説が書かれた1966年に戻そうとしたが、『星と月は天の穴』というタイトルにオチを付けたかったこともあり、アポロ11号が月面着陸した1969年に設定。学生運動がピークを迎え、国内外で大きなトピックが続いた激動期が物語の背景となった。

また、「時代の空気や質感をスクリーンに転写したい」という監督の意図から全編モノクロで撮影された画面には、活字から文脈を読み取るような“余白の美”も映し出されている。さらに時折現れるパートカラーの赤には、吉行淳之介原作の映画『砂の上の植物群』(64)へのオマージュ的な意図も含まれているのだという。
そして原作者の吉行が実際に乗っていた車種・BMW2002シリーズを矢添の愛車として使用したほか、車のみならず信号機なども昭和年代のものが稼働している地域まで素材を撮りに行くなど、ディテールへのこだわりも徹底。また、綾野が着用している衣装も吉行が当時着用していたジャケットに近い生地で仕立てられデザインが再現されていたり、部屋のレイアウトも吉行が暮らしていた住居の間取りを参考に家具を配置するなど時代性が意識されている。

なお一番難航したのは、矢添が住んでいる部屋のロケーションだったという。“ブランコのある小さな公園が書斎の窓から見える建物”がなかなか見つからず、それに加えて現代的な遊具が置かれている公園も多く、マンションと公園をそれぞれ撮り分けることも考えたという荒井監督。しかし荒井組のスタッフが執念で理想の部屋を発見し、台本に忠実なシチュエーションを実現させた。
映画『星と月は天の穴』メイキング写真 ©2025「星と月は天の穴」製作委員会
