こだわりの詰まった2ヵ月間の撮影現場レポートも到着
倍賞千恵子×木村拓哉共演『TOKYOタクシー』メイキング写真解禁、山田洋次監督との熱いハグ姿も
2025.10.16 12:00
©︎2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
2025.10.16 12:00
倍賞千恵子と木村拓哉が共演する、11月21日(金)公開の映画『TOKYOタクシー』のメイキング写真と現場レポートが到着した。
原作はフランスで初登場1位を記録した映画『パリタクシー』で、山田洋次の91作目となる本作。山田組に欠かせない名女優・倍賞千恵子、『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉に加え、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、イ・ジュニョン、笹野高史など多彩な豪華俳優陣が集結した。
主人公は85歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)と、毎日休みなく働くタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。すみれを東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送ることになった浩二は、「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」と寄り道を依頼される。そんな“たった1日の旅”が偶然出会った2人の心と人生を大きく動かしていく。
解禁されたメイキング写真には、倍賞と木村、山田監督がロケ撮影中に楽しそうに談笑する様子や、木村がタクシーを運転する様子、蒼井優とイ・ジュニョンがダンスホールで踊る様子が映し出されている。クランクアップを迎えた山田監督が倍賞と熱いハグを交わす様子など、熱い想いをもって撮影に臨むキャスト陣の姿も公開された。

2025年2月にクランクインを迎えた本作では、柴又や横浜でのロケ撮影に加え、本編の大半を占める走行中のタクシー車内でのシーンの撮影には“バーチャルプロダクション”(セットの中に置かれたタクシーの周りを取り囲むように立つLEDパネルに車窓の風景を映し出しながら撮影する技法)という山田組にとって初となる技術も活用された。倍賞の初日となった2月5日は、すみれが高齢者施設に向かうために家を出てくるシーンから撮影開始。「どことなく謎めいたお金持ちのマダム」という、これまで山田組で演じてきた役柄とはまったく違った人物像を演じるとあって撮影前の打ち合わせ時点から強いこだわりを見せていた倍賞は、二度の衣装合わせの末に決まったという鮮やかな紫色のコートとサングラスを身にまとい、司法書士役の笹野高史との軽快なやり取りを繰り広げた。午後には木村も合流し、柴又帝釈天の山門前に着いた浩二のタクシーにすみれが乗り込むシーンを撮影。クランクイン前に実際の個人タクシーの運転手から指導を受けて所作や運転の練習をしていた木村は、撮影当日に「最初のテスト撮影から運転してみてもいい?」と颯爽と車に乗り込むと、トランシーバーでやり取りしながら実際のコースを走行し、テストの後にはスタート位置まで自分で運転して戻り、本番の撮影も見事一発OKを決めてみせた。

そして2月17日からは、休みを挟みながら2週間ほどかけてバーチャルプロダクションスタジオでの撮影がスタート。木村はLEDウォールに流れる車窓の風景に合わせてウィンカーを出したり、ハンドルを回したりブレーキを踏んだりしながら、カメラが正面にあるときにはわずかな隙間から映っている道を見ながら運転するなど、慣れないバーチャルプロダクションによる運転シーンの撮影でも所作をなおざりにせずタクシー運転手役を見事に演じた。制作発表会見で「木村くんの素の魅力を盗み撮りたい」と語っていた山田監督は、台本を書き直したり何度もテイクを重ねて撮ったりとタクシー車内での会話シーンに並々ならぬこだわりを詰め込み、木村と倍賞もそれに応えたことで車内で会話を繰り広げるシーンは印象的なものに。撮影の待ち時間には倍賞と山田監督が昔の話を始め、木村も加わって3人で並んで話す姿も見られた。何日もセットに籠って続く撮影でも2人は大変そうな様子をまったく見せず、劇中ですみれと浩二の距離がだんだんと縮まっていったように、倍賞と木村も3月に入る頃にはおいしいお店を教え合ったりとすっかり打ち解けていた。

また、若き日のすみれの人生が描かれる過去パートの撮影では、山田監督はすみれの夫・小川(迫田孝也)のキャラクター造形にかなり腐心し、知人の精神科医・名越康文に話を聞いたり、セットの飾りを何度も考え直したりと工夫を凝らしながら、現代パートとは画調も撮り方も変えて撮影が行われた。オールアップとなる最後の撮影は、横浜の古いダンスホールを借りて、若き日のすみれ(蒼井優)とキム(イ・ジュニョン)のダンスホールでのロマンチックなシーン。一緒に踊る蒼井とイ・ジュニョンは、ダンス指導の先生との練習日を本番前に1日だけ設けて全体を合わせてから当日を迎えた。山田監督が「(蒼井)優ちゃんとのキスシーンもあるんだよ」とからかうと照れて恐縮していたイ・ジュニョンは撮影になると真剣そのもので、蒼井も楽しそうな笑顔を見せた。

無事にオールアップを迎えた撮影現場にはサプライズで倍賞と迫田が現れ、クランクアップの花束が倍賞から山田監督へ渡された。50年以上の付き合いになる倍賞との熱いハグを交わした山田監督は、「今までいろんな映画を撮ってきたけど、今回はひとしおだね。無事にこの日を迎えられるか、クランクインの時は心配だった。だけど、スタッフの力でここまでたどり着くことが出来ました。どうもありがとう」と帽子を取って頭を下げた。

倍賞千恵子 クランクアップコメント全文
「もう撮影に来なくていいのか」という気持ちと、「終わってしまって寂しい」という複雑な気持ちで、わーい!という気持ちになかなかなれないのはとても不思議です。私はいつも、映画は照明さんやカメラマンさんなど全員が同じスタートラインに立って、「よーいスタート!」で一つの山を登っていくことだと思っています。久しぶりの手応えを感じる山田さんの演出で、素敵な山登りができたと思っています。こんな素敵なスタッフの皆さんに会えることはなかなか無いと思います。
木村拓哉 クランクアップコメント全文
今回の作品での撮影現場での自分の役割や責務はひとまず終わりました。『TOKYOタクシー』という駅伝のコースがあったとしたならば、宇佐美浩二というキャラクターの部分の区間を走りきって、次の走者にたすきを繋いだという気分です。他の作品はクランクアップの時に“終わった”という作品との決別のような、作業の終了をいつも感じるのですが、今回に関しては、たすきを繋げてよかったなという気持ちです。
映画『TOKYOタクシー』メイキング写真 ©︎2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会