2025.10.15 18:00
©2025「星と⽉は天の⽳」製作委員会
2025.10.15 18:00
12月19日(金)に公開される綾野剛主演映画『星と月は天の穴』から、ヒロインを務めた咲耶の場面写真が解禁された。
本作の監督は、『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)などでキネマ旬報脚本賞に5度輝く日本を代表する脚本家・荒井晴彦。『火口のふたり』(19)をはじめ、自ら監督を務めた作品群では総じて人間の本能たる“愛と性”を描き、観る者の情動を掻き立ててきた。そして最新作『星と月は天の穴』では、念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常をエロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴る。
『花腐し』(23)でも荒井とタッグを組んだ綾野剛が主人公・矢添克二を演じるほか、矢添と出会い無邪気に接触する大学生・紀子を演じるのは新星・咲耶。さらに田中麗奈が矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるほか、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らも脇を固め、1969年という日本の激動期を背景にした一人の男の私的な物語を描き出す。
本作のヒロイン・紀子は、矢添との運命的な出会いから女性としての欲望に目覚め、開花していくキャラクター。次第に矢添を凌駕していき、彼の日常を大きく変えていくこの役は選考が難航したという。1969年という時代設定に説得力を持たせられる昭和の雰囲気、そして大胆なラブシーンに対する覚悟、存在感がなくては成立しない役柄だったからだ。

そして、クランクインが差し迫る中でオーディションにやってきたのが咲耶だった。「荒井さんは適役の人が現れた瞬間に直感的に決めている」と竹田正明助監督が語るように、この時が荒井と制作陣が待ちわびていた“紀子”が現れた瞬間だった。咲耶はオーディション時点で全ての台詞を憶えていて、どの台詞をどう言うかプランニングして来ていたため、台本をただ読んで欲しいという内容に戸惑っている様子だったという。咲耶がどれほどこのオーディションのために準備してきたかを感じることができたと制作陣は振り返る。
一方咲耶はもともと、「純文学の登場人物になってみたい」「オールヌードありの作品に出てみたい」という強い願望があったという。今の時代、そういった作品を制作されること自体が稀なため、「こんな理想的な形で実現するなんて」と彼女自身並々ならぬ思いでオーディションに挑み、見事に役を掴み取った。60年代の映画や映像を観て、女性たちの言葉遣いや喋り方を研究し、一番参考にしたのは『卍』(64年/増村保造監督)の若尾文子だと明かす。

そんな咲耶は2000年生まれで、父は吹越満、母は広田レオナといういわゆる芸能一家で育った。17歳の時、母の広田が監督した『お江戸のキャンディー2 ロワゾー・ドゥ・パラディ(天国の鳥)篇』でスクリーンデビューを果たしているが、本格的に俳優を志したのは「ここ3年くらいのこと」と語る。
高校卒業後は「無職・フリーター」(本人談)を経て、ディープテクノのDJとしても活動。個性豊かで日本映画界にも大きな足跡を残してきた父と母からは役者になることを反対され、「あなたは役者ではなく作家になりなさい」と言われて育ったといい、中高生の時には書いた個性的な作文が教師の間で注目を浴び〈文豪〉というあだ名をつけられていたこともあった。それが母の広田にも面白がられ、事務所のプロフィールを作るときに「特技:文豪」と書かれたと笑う。
そして本作の撮影終了後には監督の荒井に「あなたは今までどこにいたの? どうして今まで現れなかったの?」と言わしめたといい、完成した作品を見た咲耶本人は「初号試写で初めて大きなスクリーンで見た時、自分のフルヌードがスクリーンに映っているのに恥ずかしくなかった。そもそもカメラの前で脱ぐこと自体を恥ずかしいと思ってはいませんが、それを自分が客観的に見るとなれば、やっぱりちょっと恥ずかしさがあるのかなと思ったけど、全然そうじゃなかった。モノクロの画面で、現在とかけ離れた時代の世界を描いていて、しかも川上(皓市/撮影監督)さんが撮る画がものすごく綺麗で、荒井さんの書く脚本はとても文学的で。そういう全ての要素が合わさって、美しく撮っていただけたことが、すごく嬉しかったです。」と語っている。

綾野剛がこれまでに見せたことのない枯れかけた男を演じ、唯一無二の新星・咲耶がモノクロの世界で美しくも妖しい輝きを放つ本作。映画の公式サイトではテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテほか全国の上映劇場情報の掲載がスタートしており、10月17日(金)からは綾野演じる“愛をこじらせた小説家・矢添”のキャラクター写真のムビチケカードも発売される。