共演に新星・咲耶や田中麗奈ら、コメントも到着
綾野剛×荒井晴彦が再タッグ、40代こじらせ男の恋愛模様を綴る『星と月は天の穴』12月19日公開
2025.09.05 08:00
2025.09.05 08:00
綾野剛主演最新作で、脚本家・荒井晴彦が監督を務めた映画『星と月は天の穴』が12月19日(金)よりテアトル新宿他にて全国ロードショーされることが決定した。
荒井晴彦は『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)などでキネマ旬報脚本賞に5度輝く日本を代表する脚本家で、『火口のふたり』(19)など自ら監督を務めた作品群では総じて人間の本能たる“愛と性”を描き、観る者の情動を掻き立ててきた。そして最新作『星と月は天の穴』では、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴る。
荒井と『花腐し』(23)でもタッグを組んだ綾野剛が演じるのは、主人公の矢添克二。着実にキャリアを重ね、名実ともに確固たる地位を築き上げてきた綾野が、これまでに見せたことのない枯れかけた男の色気を発露させ、過去のトラウマから女を愛することを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ないキャラクターを生み出した。
また、女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる女子大生の紀子役には新星・咲耶。矢添のなじみの娼婦・千枝子を荒井作品3作目の出演となる田中麗奈が演じ、女優としての新境地を切り開く。さらに柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固め、本作ならではの世界観を創り上げる。

舞台は1969年という日本の激動期。小説家の矢添(綾野剛)は、妻に逃げられ結婚に失敗して以来独身のまま40代を迎えていた。心に空いた穴を埋めるように娼婦・千枝子(田中麗奈)と時折り体を交えるも、彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由があり、それは誰にも知られたくない自身の秘密にコンプレックスを抱えているからだった。そんな矢添の日課は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を自問するように探求すること。ところがある日、画廊で偶然出会った大学生の瀬川紀子(咲耶)と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至り、矢添の日常と心が揺れ始める。
公開された本作のメインビジュアルは、綾野演じる矢添が布団の上に座り女性から目をそらしている姿。女を恐れながらも求め続けるこじらせ男の色気と滑稽さを写し、作家・吉行淳之介が書いた題字とモノクロの写真が昭和レトロの世界観を醸し出している。
なお本作の撮影は2024年4月に東京近郊で行われ、矢添を演じた綾野は「脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします。」と語る。名匠・荒井晴彦の脚本から導き出された俳優・綾野剛の真骨頂、日本映画界に一石を投じる〈R18〉の異色作がこの冬誕生する。
コメント一覧
綾野 剛(矢添克二役)
映画「花腐し」に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びる事ができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽さ、なにより文学への造詣に触れられ、とても稀有なひとときでした。とある小説を主人公が説明するシーン。噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、煙草を燻らせ酒を堪能する様に台詞を生み吐き出し、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします。
映画「星と月は天の穴」どうぞ言葉の心地を召し上がってください。
咲耶(瀬川紀子役)
「純文学の登場人物になりたい」そんな願望が私にはありました。それがまさかこんなに早く実現してしまうなんて、全力で掴みに行った紀子という人物を演じる事が出来たのは私にとってこの上ない幸せです。現代の日本映画界に真っ向から反抗するような作品ですが、美しくもユーモラスな観る文学であると私は感じます。だからこそ多くの方に御覧頂きたいと心から感じます。綾野さんがどれだけ頼り甲斐のある素敵な先輩だったのか、荒井監督とご一緒した事がどれだけ貴重で特別な経験だったのか、あの夢のような時間、語り尽くせない程です。
田中麗奈(千枝子役)
荒井晴彦監督とは、脚本を書かれた「幼な子われらに生まれ」、「福田村事件」でご一緒していました。
監督された「火口のふたり」、「花腐し」には惹かれていましたし、ご縁を感じてもいたので、
お話しをいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです。
主演の綾野剛くんとの共演もとても久しぶりで楽しみにしていました。
剛くんは現場で色々とアイデアを出し、荒井監督もそれを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、とても良い現場だと思いました。
役者としてだけではなく作り手として客観的にも現場を見ている視界の広い方だと改めて感じました。
千枝子に関して、彼女が何を想っているのかというのは、脚本を読んだ時点で直感的に感じましたが、
もっと細かく腑に落ちていくように、、と丁寧に彼女の背景を作っていきました。
今でも千枝子を思い出すと胸がキュッとします。
年齢制限もあり、チャレンジングな作品だと思います。
作品を観ていただいたお客様からどんな反応がうかがえるのか、楽しみにしたいと思います。
荒井晴彦(監督・脚本)
18歳だった。彼女もいないし、女の子の手を握ったのは高校の文化祭のオクラホマミキサーの時だけだった。それもそっと。’66年の「群像」新年号、吉行淳之介の「星と月は天の穴」、「女の軀に軀を重ねても欲情は起ってこない」男は、連れ込み旅館の枕もとの棚の下の埃を見る。「数週間にわたって抜け落ちた数え切れない数の男と女の毛が、絡み合っていた」「突然、はげしい欲情が彼の中に衝き上ってきた」 これ、なんか分かると思った。妻に裏切られ、愛とか恋とかいう情感を持ち込むのを拒否し、女を「道具」として扱おうと思っている男が「道具」に敗けてゆく小説だった。映画の仕事をするようになって、いつか映画にしたいと思ってきた。やっとです。
「精神という花が咲いている。引っこ抜くとその根っこに『性』がぶらさがっている」と吉行さん。引っこ抜いていきたい。
