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COLUMN

常に最前線を走るポップレジェンドが今年はバンドを従え来日

変化を続けるBECKのサウンドは、なぜ日本のリスナーを魅了し続けるのか?飽くなき探究心を辿る

2025.05.28 12:00

BECK(Photo:Pooneh Ghana)

2025.05.28 12:00

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本国でも揺るぎない地位を築いた『モーニング・フェイズ』

再びナイジェル・ゴッドリッチと組んだ『シーチェンジ』(2002年)は、アコースティックテイストだった『ミューテーションズ』の続編的にも思える一枚。『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』ではなくて、落ち着いたイメージの『シーチェンジ』の方が米国では大ヒットするのだから摩訶不思議というか、カントリーミュージックに根ざす米国の国民性というか、実に興味深いところ。「Lonesome Tears」「Round the Bend」に代表される壮大なストリングスをバックに歌う佇まいなども見事だが、『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』支持者にはちょっと大人しすぎた印象だった。

Beck – Lonesome Tears (Official Music Video)

とはいえ再びダスト・ブラザーズとタッグを組んだ『グエロ』(2005年)、ナイジェルをプロデューサーに迎えつつも前作の方向性を引き継いだ『ザ・インフォメーション』(2006年)、デンジャー・マウスと作り上げた『モダン・ギフト』(2008年)と、日本のファンはいずれも支持してきている。個人的にもこれほど浮き沈みがなく、高水準の作品を作り続けている人も珍しいと思う。

Beck – The Golden Age (Official Music Video)

そんなBECKだが、初めて6年というインターバルを空けて『モーニング・フェイズ』(2014年)を発表。後に僕らは『モダン・ギフト』はラストアルバムの覚悟で作っていたことを知る。6年のインターバルは深刻な脊椎損傷による治療が要因だったのだ。一時はギターを手にできないほどだったというから驚いたが、見事復活して届けてくれた『モーニング・フェイズ』は、堂々たるロックヒーロー帰還作として相応しいものに。歌う悦びを再認識したからこそのBECKの歌唱、スケール感あふれるサウンドも非常に高品質。これまでの歩みを昇華するとともに「Morning」「Unforgiven」「Wave」「Walking Light」などゴスペルティックな佇まいも胸にグッとくる。

なお2015年に『モーニング・フェイズ』はグラミー最優秀アルバム賞に輝き、本国における評価も揺るぎないものにした。2017年にはこの追い風に乗り、抜群にキャッチーなポップアルバム『カラーズ』を発表。あらゆるポップミュージックの王道要素、それでいてBECKらしいマニアックなオマージュをも掛け合わせた上で、ちゃんと時代性のあるサウンドでデコレーションしてみせるセンスに脱帽。僕ら日本人ポップファンにとって、最高傑作を更新し続けるBECKは健在であった。

そしてファレル・ウィリアムスと半数曲をコラボレーションした『ハイパースペース』(2019年)が、現時点におけるオリジナルアルバム最新作。これまでの作風を引き継いだ上で、多彩なヴォーカルアプローチやこれまでにないハーモニー手法などは、ファレルとタッグを組んだならでは。より歯切れの良い歌唱を聴かせているのも新感覚で、新たなフェイズに突入したBECKを感じさせた。

さらに驚いたのは翌年、NASAジェット推進研究所とのコラボレーションにより、NASAによる宇宙素材を元にAIが独自に作り上げた映像に音楽を融合した『Hyperspace: A. I. Exploration』を発表。加えて日本限定で『ハイパースペース』のリミックスや未発表音源も収めた『ハイパースペース(2020)デラックス・エディション』もリリース。これをちゃんとフィジカルとしてリリースできるのが日本人ならではの感覚であり、誇りたいところ。『Hyperspace: A. I. Exploration』は各種サブスクリプション、またはBECKのYouTubeで体験できるが、まだまだポップミュージックにはやるべきことがある、そうしたBECKの決意と可能性を『Hyperspace: A. I. Exploration』は感じさせてくれた。

Beck – Uneventful Days

昨今はアナログレコード人気の再燃はありつつも、CD、DVD、Blu-rayなどの音楽ソフトが売れにくくなった時代……もっとも、「ルーザー」におけるデビューからBECKはアナログレコードリリースにもこだわったミュージシャンだ。そんなBECKがフィジカルとしての音楽作品リリースをどう考えているのか? そこはファンとして気になるところである。『ハイパースペース』以後、様々なアーティストとのコラボレーションを相変わらず行なっており、個人的にはJoy Downerとの「Chain Reaction」が、フリートウッド・マックを彷彿させてお気に入り。ソロのオリジナルシングルとしては2023年の「Thinking About You」が最新作で、十八番のアコースティック路線。ドラムレスの中で泳ぎ回るベースプレイが印象的だった。さらにはジョージ・ハリスンの「Be Here Now」(1973年作『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』)も、まさにBECK流ハーモニーとアコースティックアレンジでカヴァーして配信リリースしている。

Beck – Uneventful Days (Hyperspace: A.I. Exploration)

前回の来日公演では一部リズムトラックを用いつつも、アコースティックギターとピアノによる弾き語りで魅了。「BECK Live in Japan 2025」はこれを経てのバンド編成ということで、イメージ的にはかつて『ミューテーションズ』『シーチェンジ』を経て、アグレッシブな境地も見せてくれた、あのモードのBECKが登場してくれそうで期待が高まる。『ハイパースペース』で垣間見せたポップミュージックのさらなる未来をも見せてくれたら最高なのだが…。それと今回のバンドメンバーで元ジェリーフィッシュのジェイソン・フォークナーとジョセフ・マニング・ジュニアが参加するのも、ポップファンにとって狂喜のポイント。いずれにせよ、ポップミュージックの最前線を生きる男の勇姿が堪能できるのは間違いないはずだ。なおNHKホールに足を運べないファンのために、音楽配信プラットフォーム「ZAIKO」での全世界ライブ配信も決定している。

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イベント情報

BECK「BECK Live in Japan 2025」

BECK「BECK Live in Japan 2025」

2025年5月28(水) 大阪 Zepp Namba(OSAKA)
OPEN 18:00/START 19:00
1F 立見:¥17,000 2F指定:¥23,000(税込/D代別)

2025年5月29日(木) 東京 NHKホール
OPEN 18:00/START 19:00
S指定 (1階席・2階席):¥23,000(税込)
A指定(3階席):¥17,000(税込)

配信URL
・日本国内から視聴:https://stagecrowd.live/s/sc/group/detail/10595?ima=4659
・国外から視聴:https://beck.zaiko.io/e/beck25
アーカイブ/見逃し配信期間:2025年5月29日(木)公演終了後配信後〜6月5日(木)23:59 まで

BECK「BECK Live in Japan 2025」

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES. 2025 in Yokohama

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES. 2025 in Yokohama"

2025年5月31日(土)・6月1日(日)Kアリーナ横浜
開場 9:00/開演 11:00/終演 20:30(予定)

・出演者
5月31日(土):ASIAN KUNG-FU GENERATION/ELLEGARDEN/FOUNTAINS OF WAYNE/HOVVDY/Nick Moon/SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/ストレイテナー/VOICE OF BACEPROT/THE YOUNG PUNX

6月1日(日):ASIAN KUNG-FU GENERATION/THE ADAMS/BECK/FOUNTAINS OF WAYNE/HOVVDY/Nick Moon/くるり/YeYe/THE YOUNG PUNX

【チケット】
一般 ¥12,800/U-23サポート ¥10,800(税込)
※ウエルフェアサービス:障がい者手帳所有者は当日会場で¥2,000をキャッシュバック

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES. 2025 in Yokohama

970年7月8日、L A出身、グラミー賞7冠のアーティスト。1994年発表「ルーザー」が全米モダン・ロック・チャートで5週連続で首位を獲得。1996年に発表した『オディレイ』でグラミー賞2部門、2014年『モーニング・フェイズ』で最優秀アルバム賞ほか計3部門を受賞。『カラーズ』でも最優秀オルタナティヴ・アルバム賞などを受賞するなど、米国を代表するロックミュージシャンとして地位を確立。ルーツミュージックと最先端の音楽性を融合するスタイル、ハスキーな声色で歌い上げる魅力で、日本においてもデビューから不変の高い人気を誇る。

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