見どころ充実の約3時間、ファンならずとも必見の理由とは
日向坂46四期生だから生まれた最高の化学反応がここに、舞台『五等分の花嫁』開幕
2025.03.09 20:55
2025.03.09 20:55
日向坂46四期生の11人が、ヒロインである五つ子を演じる舞台『五等分の花嫁』が3月8日に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開幕。それに先駆けて7日、記者会見と公開ゲネプロが行われた。
原作は、春場ねぎによる同名マンガ。進学が危ぶまれる五つ子の女子高校生と、その家庭教師である1人の男子高校生の恋愛を描くラブコメディで、コミックスはシリーズ累計発行部数2,000万部を突破。TVアニメ、映画、ゲームなど連載終了後もメディアミックス展開が続いている人気作品だ。貧乏な生活を送る高校2年生・上杉風太郎のもとに好条件の家庭教師アルバイトの話が舞い込む。ところが教え子はなんと同級生、しかも五つ子だった! 全員美少女だけど「落第寸前」「勉強嫌い」の問題児だらけの五つ子と、生活がかかっているためクビになりたくない風太郎。なんとか五つ子からの信頼を得るために奮闘するのだが……というストーリーだ。

四期生メンバーはダブルキャスト、トリプルキャストで五つ子役を演じる。長女の中野一花役は小西夏菜実と竹内希来里、次女の中野二乃役は石塚瑶季と清水理央、三女の中野三玖役は宮地すみれと渡辺莉奈、四女の中野四葉役は正源司陽子、平尾帆夏、藤嶌果歩、五女の中野五月は平岡海月と山下葉留花がそれぞれ担当。キャストの組み合わせによって公演は◆・★・♥の3グループに分けられ、会見後には小西・清水・宮地・藤島・山下が出演する◆チームの公開ゲネプロが行われた。
いわゆる「2.5次元作品」ジャンルとなる今作だが、観終わったあとの気持ちを正直に言うと……楽しい! とにかく楽しい! 特におひさま(日向坂46ファンの総称)はたまらないのでは? というのが感想だ。

理由はいくつかある。まずは、『五等分の花嫁』という原作を日向坂46というアイドルグループのメンバーが演じる、その企画との相性。マンガ『五等分の花嫁』の特徴は、五つ子たちのキャラクターがそれぞれ個性的、魅力的であり、5人全員がメインキャラでもあるということ。恋愛ゲームやラブコメでよくありがちな「ヒロインが決まっていて他はサブ」という構造ではないのだ。それゆえ、五つ子をメンバーたちが演じることで、舞台上では5役すべてのキャラの魅力を、そしてそのキャラを演じるメンバーを平等に堪能することができる。しかも距離感が近い劇場空間で! ファンにとって、こんなに楽しいことはあるだろうか?
◆チームでいうと、マイペースながら長女という立場ゆえにどこか本音を押し殺してしまう一花を演じた小西夏菜実は、ルックス含め一花という役にピッタリ。会見では「舞台上で自分以外を演じるのが初めてだったけどそれがとても楽しかった。役を演じるということが好きになった」と語った。

毒舌&風太郎排除の先頭に立ち、五つ子の中では一番厄介な存在ながら、恋愛となると一途な面も見せる二乃を演じたのは清水理央。会見で「小さい頃からミュージカルに出演するのが夢だった」と語ったがその意気込みが伝わるような熱演で、前半の憎たらしさと後半の意外な顔のギャップが見どころだ。

口数が少なく内気なキャラながら、一番最初に風太郎に心を開いた三玖を演じた宮地すみれは、素のふわふわした口調との落差と、三玖をハマり役として見事に演じきるポテンシャルの高さに驚かされた。

勉強はからきしダメだが運動神経は抜群、元気キャラの四葉を演じたのは藤嶌果歩。アニメさながらのキャラクターを完璧に再現していただけでなく、彼女の歌唱力も十二分に堪能できる役柄だけあり、見どころは盛りだくさん。

山下葉留花が演じる五月は五つ子の中で一番真面目だが要領が悪く、でも実は亡き母親をずっと慕うという心優しさもあって……という役。これまた山下が素で持つ天然さと雰囲気、五月という役がしっかり合っていたように思う。

おそらく、キャスティングも演じる四期生11人たちの素のキャラクターを考慮して当てはめていったのでは……? と思えてしまうような絶妙なキャスティング。実際に観たら、原作ファンの人もかなり納得するのではないだろうか。また、マンガのキャラクターを舞台上で再現するのが「2.5次元」作品だが、演じる人間が変われば舞台上に現れるキャラクターも微妙に変化していく。しかも今回は複数キャストとあり、記者会見で正源司陽子が「相手や自分の些細な動きや目線の変化によってこんなにも伝わる感じ、伝わる気持ちが変わっていくんだと改めて思いました」と語ったように、その組み合わせでも舞台上で化学反応が起きていく。他チームも観てその違いを楽しむのもこの作品ならではの観劇方法といえるだろう。
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