秋の東京を舞台に太田慶監督が“恋愛の彼岸”を描く
北村優衣&高崎かなみ出演、ドストエフスキー「白夜」から生まれた映画『永遠の待ち人』公開決定
2025.03.08 09:00
©︎太田慶
2025.03.08 09:00
永里健太朗主演、共演に北村優衣と高崎かなみを迎えた映画『永遠の待ち人』が6月6日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開されることが決定した。
本作はドストエフスキーの短編「白夜」に着想を得て生まれた作品。「白夜」は1848年に出版されて以来さまざまな場所や設定で描かれ続けており、パリを舞台としたロベール・ブレッソン版の『白夜』(1971)は4Kレストア版が3月7日(金)から公開されるなど、今もなお愛され続けている。
監督・脚本・編集を担当するのは、これまで自主制作映画『狂える世界のためのレクイエム』『桃源郷的娘』を手掛けてきた日活社員の太田慶。孤独な青年の決して成就することのない恋を描く「白夜」を愛する者として、この物語に惹かれる理由を探究したいと思った太田は、「白夜」とは違う設定・エンディングの物語を紅葉が美しい秋の日本で撮影した。
主人公は、仕事中心で家庭を顧みることのなかった泰明。妻の麻美が去ったショックで鬱になり会社を休職した彼の唯一の話し相手は、たまに手土産を持って様子を見にやってくる同僚の岡崎と鉢植えだった。そんなある日、ぼんやり道を歩いていた泰明は美沙子とぶつかりバッグから落ちたナイフを拾う。泰明は美沙子の後を追い話し掛けると、美沙子は恋人・慎一を3年間毎日そのベンチで待ち続けているという。「彼はもうあなたのことを忘れてるんじゃないですか」と泰明は言うが、美沙子は「愛は信じることです」と強い意志で恋人を待ち続ける。心惹かれた泰明は美沙子のもとに通い始め、美沙子が迷いなく話す愛の定義を聞く度に自分と元妻の関係を反省する。そしてもし美沙子が想っている人が自分だったらと考え、「何か変えてみることでこの悪循環から抜け出せるような気がする」と提案するのだった。
「男にとって仕事は大事」と妻をなおざりにした結果、妻が去った主人公・泰明役は太田慶監督の全作品に出演している永里健太朗。永遠の愛を心から信じ、帰ってこない恋人を3年も待ち続けるヒロイン・美沙子を演じるのは、『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)での熱演で注目を集めた北村優衣。フラッシュバックや主人公の妄想の中の妻・麻美を演じるのは、2024年末に舞台『応天の門』で初めて明治座に立ちグラドルから女優へと成長を遂げている高崎かなみ。美沙子の元恋人・慎一役で釜口恵太、主人公が過去の反省を吐露する相手・相沢役で藤岡範子、変化する主人公を見て行動を変える主人公の同僚・岡崎役でジョニー高山が脇を固める。
監督・脚本・編集:太田慶コメント
ドストエフスキーの短編「白夜」は、決して成就することのない恋を描いた珠玉の「反=恋愛小説」です。そこには凡百の恋愛小説を超えた真実があるように思います。「白夜」をモチーフにした映画を作ることで自分が何故この物語に惹かれるのかを探求してみたい、新たなエンディングを提示することで恋愛の彼岸まで行ってみたい、というのがこの映画の創作動機です。
主演はこれまで私の映画にずっと出演してもらっている永里健太朗さん。どんな役でも出来る人ですが「繊細な青年」を素直に演じられる貴重な存在です。本作ではそんな彼の素の良さが存分に発揮されていると思います。ヒロイン役は城定秀夫監督の『ビリーバーズ』で信仰の彼岸まで行ってしまった“副議長”役を演じた北村優衣さん。期待通り、現世を突き抜けた存在を見事に演じ切ってくれました。もう一人のヒロイン役はウエダアツシ監督の『うみべの女の子』で「発見」した高崎かなみさん。彼女をもっと見たいと思い、自分の映画に出演してもらいました。ぜひ彼女の透き通るような存在感をスクリーンで体感してもらいたいです。
秋は恋の季節と言われますが、「反=恋愛映画」も秋が似合います。紅葉の美しい風景から立ち昇る切なさを感じ取ってもらえたらと思います。
ロベール・ブレッソン監督の『白夜』4Kレストア版が公開される年にこの映画を公開できることを嬉しく思います。『白夜』のささやかな変奏曲を、ぜひ劇場でご覧になってください。