歴史的なテロ生中継の緊迫シーンはどう生まれた?
ショーン・ペンが制作秘話を語る、アカデミー賞脚本賞ノミネート『セプテンバー5』特別映像解禁
2025.01.24 16:00
©︎2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
2025.01.24 16:00
今も語り継がれる五輪史上最悪の事件を基にした2月14日(金)公開の映画『セプテンバー5』から特別映像「舞台裏編」が解禁された。
1972年9月5日に起きた、ミュンヘンオリンピックでのパレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件。本作は突然その事件を中継する事となったTVクルーたちの視点から、エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、冷戦下で機能しない現地警察など、極限的な緊張感に置かれた事件の発生から終結までの1日をノンストップで描く。
全世界がテロリズムの脅威を生中継を通して初めて目の当たりにしたその日、現代のSNS社会にも通じる倫理観を試す問い掛けとして投げかけられたのは、〈報道する事の自由〉〈報道される被害者の人権〉〈報道がもたらす結果の責任のありか〉。本作がいち早く上映されたヴェネツィア国際映画祭では圧倒的な称賛を受け、第82回ゴールデングローブ賞 作品賞〈ドラマ部門〉のノミネートに続き、第97回アカデミー賞 脚本賞にもノミネートされた。
脚本・監督を担当したのは新鋭ティム・フェールバウム。キャスト陣には、『ニュースの天才』のピーター・サースガード、『ありふれた教室』のドイツ人女優レオニー・ベネシュ、そして『パスト ライブス/再会』のジョン・マガロほか、名優の呼び声高いバイプレイヤーたちが集結した。
解禁された映像は、プロデューサーのショーン・ペンが「脚本を読んですぐにやると決めた」と明かすところから始まる。ピーター・サースガードもまた「見事な脚本で、物語の伝え方を熟考してある」とティム・フェールバウム監督自身が執筆した緻密な脚本を絶賛。映画ではオリンピック中継のために現地入りしていたニュース番組とは無縁のスポーツ番組の中継クルーたちが偶然出くわした事実を描いているが、主人公を演じたジョン・マガロは「このテロ事件を報道したのが(テレビのニュース報道局ではなく)スポーツ中継班だとは知らなかった」と振り返る。
また、プロデューサーのジョン・イラ・パーマーは、他にもこの事件をテーマにした映画はあるが本作は「一線を画している」と自負。監督とともに脚本を書き上げたモリツ・バインダーは「1972年の事件を新しい視点で届ける。現代に生きる人にこそ見てほしい」と熱く語り、ショーン・ペンも「最高の美術チームが作り上げたセットが、俳優の魅力を引き上げると証明した」とセットデザインにも自信を見せる。
制作チームは個人収集家や博物館、放送局の倉庫に至るまで調査し、1972年当時の中継スタジオを徹底的に再現。監督やキャストたちも、セットの隅々に置かれた実際に動く1972年当時の機材に「(1972年当時の)世界に入り込める」と振り返る。CG合成のブルーバックの前で演技するのではなく、セットにある実物に触れて体感でき、半世紀もの時間を自然にタイムスリップできる撮影現場となった。
本作の大部分はこの事件が起きたミュンヘンで撮影された。それらと1972年当時の映像を組み合わせて、ひとつのシーンに仕立て上げる斬新な映像を生み出したのは、監督も信頼する編集のハンスヨルク・ヴァイスブリッヒ。「観客が物語に没頭できるようにテンポの速い作品にしたかった」と、本編を96分に凝縮し圧倒的なスピード感で観客をエンディングまで誘う編集の意図を明かした。
『セプテンバー5』場面写真 ©︎2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.