向田邦子の傑作家族劇が是枝裕和の監督・脚色により蘇る
宮沢りえ×尾野真千子×蒼井優×広瀬すずが四姉妹に Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』1月9日配信
2024.11.12 08:00
2024.11.12 08:00
宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが四姉妹を演じるNetflixシリーズ『阿修羅のごとく』が2025年1月9日(木)より配信されることが決定した。
1979年から80年にかけて放送され、向田邦子が脚本を手がけたドラマシリーズ『阿修羅のごとく』をリメイクした本作。かつて新人時代に向田とともに仕事をしたプロデューサー八木康夫がリメイクを企画し、向田を最も尊敬し一番影響を受けたと繰り返し語ってきた世界的名匠・是枝裕和が監督・脚色・編集を務めた。
エッセイも多数発表し、小説では直木賞を受賞するなどキャリアの最盛期にあった1981年、向田は飛行機事故によって突然に生涯の幕を閉じる。だが彼女の影響は後世に広く及び、没後40年を経てもなおその人気はいまだ陰りを見せない。そんな数ある向田作品の中でも最高傑作として名高い家族劇の傑作「阿修羅のごとく」が、時を経ても色褪せない魅力そのままに甦る。
本編の舞台は、原作と同じ1979年。主人公の四姉妹は、夫を亡くし活け花の師匠として生計を立てる長女・綱子、会社員の夫や子どもたちと一見平穏に暮らす専業主婦の次女・巻子、図書館で司書を務める恋愛に不器用な三女・滝子、喫茶店のウエイトレスでボクサーの卵と同棲する四女・咲子。それぞれを宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが演じ、かつてない華やかな競演が実現した。
ある冬の日、久しぶりに集まった竹沢家の四姉妹。三女・滝子(蒼井優)の話では、母・ふじと暮らす老齢の父・恒太郎には愛人と子どもがいるという。信じられないとは思いつつ、母の耳には入れないことを誓い合う4人。しかしこの騒ぎをきっかけに、女性たちの日常に潜むさまざまな葛藤や秘密が明るみに出る。恋愛観も違えば生き方も違う4人の姉妹は、対立し、感情をぶつけ合いながら、心底では互いを気にかけ、やがて手を取り合う。本作ではその泣き笑いが細やかに描かれる。
制作発表と合わせて公開されたティーザーアートは、四姉妹の一見平穏な表情の裏に隠された“秘密”が垣間見えてくるような、なんとも言えないヒリついた空気感が漂ってくるビジュアル。同時に解禁されたOP映像でも、昭和レトロなデザインとスタイリッシュな音楽にのせて、憂いや穏やかな表情から感情を剥き出しにする静と動の四姉妹が映されている。彼女たちの心の奥底に秘められた葛藤や本音が露わになる時、物語がどう展開していくのか。
なお、本作の撮影は瀧本幹也(『そして父になる』『海街diary』)、衣装デザインは伊藤佐智子(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、フードスタイリストは飯島奈美(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、音楽はfox capture plan(ドラマ「カルテット」「コンフィデンスマンJP」)が担当。錚々たるスタッフによって、昭和が舞台でありながらポップな世界観が生み出される。
「みんな、ひとつやふたつ、うしろめたいとこ、持ってるんじゃないの」 ──これら鋭い人間洞察から生まれたセリフの数々が浮き彫りにするのは、人間の愚かさ、そして愛おしさ。人間の本質を突く普遍的なテーマを備えた物語に是枝の女性の自立に焦点を当てた脚色が加わり、新たな「阿修羅のごとく」が誕生する。
是枝裕和(監督・脚色・編集)コメント
向田邦子さんの『阿修羅のごとく』は、女性たちの人物描写が素晴らしいです。僕がテレビドラマに夢中になった1970年代、脚本家といえば向田さんと倉本聰さん、山田太一さんの3人が頂点でした。市川森一さんを加えれば、それがトップの4人。幸いなことに倉本さんや山田さんとはお会いすることができて、創作についていろいろお話をしましたが、残念ながら向田さんとはできなかった。だから今回『阿修羅のごとく』をリメイクすることは、向田邦子とは何だったのかと、より深く理解するためのアプローチだったのかもしれません。自分なりの決着の付け方とでも言うんでしょうか。
会話で交わされる表面上の毒と、その背後に隠された愛、その両方があるから向田邦子のドラマは豊かなんです。それは人を描くうえで大事なところだし、言葉になっているセリフを伝えるだけでは芝居じゃない。今回、四姉妹を演じた4人はみんなそれができる人たちだったので、撮っていて面白かったです。含みの部分をちょっとしたことで出せるんですね。4人も演じていて楽しそうでした。みんなタイプはバラバラだけど、全体としてバランスはすごくよかったですね。この4人だったから、向田邦子の脚本を立体化することができたんだと思います。
八木康夫(企画・プロデュース)コメント
僕が向田邦子さんと、ご一緒させていただいたのは1978年の連続ドラマ『家族熱』の時です。当時入社5、6年目の新人ADの僕からすれば、向田さんは雲の上の存在でした。全14回の最後の原稿を取りに伺った時、「僕が一人前になったら、お仕事をお願いできますか?」とお話ししたんです。すると、向田さんは「いいわよ」って。おそらく毎回原稿を取りに来た労をねぎらい、そう言ってくれたんだと思います。
向田邦子さんの没後40年を前に、ずっと心残りだった向田さんとのやりとりを思い出し、改めてシナリオ集や出版されているものを全て拝読し、向田作品は『阿修羅のごとく』に尽きると思い映像化に向けて動き出しました。なによりも大事だと思ったのはキャスティングです。イメージキャストの段階で、四姉妹役にはこの4人しかいないと思い、みなさんに連絡したところ二つ返事で了承をいただきました。それから、是枝監督に快諾いただいて制作にいたります。
時代設定はオリジナルと同様で当時のままですが、是枝さんのお力で今の時代のドラマになったと思います。ドラマにもっとも必要な三要素は、キャラクター、セリフ、ストーリーです。その3つの魅力がすべて詰まった作品ができました。“ディス・イズ・ドラマ”、これこそがドラマだと言って差し支えない作品ができたかなと思います。