『ゼンブ・オブ・トーキョー』の舞台裏では何が起きていた?
熊切和嘉監督が見た日向坂46四期生、自由だから撮れた“二度と戻れない瞬間”とは
2024.10.25 18:00
2024.10.25 18:00
11人全員を生かすためにイラストを描いた
──今の東京がかなり克明に描かれているなとも思いました。街を生き生きと撮ろうと思われたきっかけはありますか?
修学旅行で東京で自由時間を過ごすっていうのは、すごく面白いけど、撮影は相当大変だろうなってわかってはいたんです。でもやるからにはリアルな今の東京を映したかったですし、できるだけリアルな街角で撮影しようというのは最初からありました。例えば新宿の駅ビルが取り壊されているところを背景にしたり、今生まれ変わろうとしてる東京の傷跡みたいのを背景にしていこうと、意図的にやりましたね。
下北沢の昔の線路の前で撮ったりとか、あれは僕が昔都内に住んでいた時に割と頻繁に行ってた地区なんですけど、すごく様変わりしていて。東京が主役みたいなところもあるので、彼女たちが見ている東京ではなく、東京が彼女たちを見ているような、そういう映画になったらいいなと意識して撮りました。
──かつての80年代前後の東京をテーマにした映画と同じように、今後語り継がれる作品になるかもしれないなと思うぐらい、街が有機的でしたね。
嬉しいですね。そういう映画が今ないですよね。でもすごく難しいんです。実はこの作品を撮る前に、パイロットフィルム的な別作品で東京を舞台にやろうとしたんですけど、なかなか許可が下りなくて。今回は街角で撮っていてもそんなに気づかれなかったので、最初は遠慮がちに撮ってたんですけど、途中から堂々と池袋とか人がいるところで回してたので、今時ないような臨場感は撮れたんじゃないかなと思います。
──今の監督から見る今の東京にはどういった思いを抱かれていますか?
例えば渋谷の宮下公園の方とか変わっちゃって、昔の方が面白かったなって思いますけどね(笑)。僕はちょっとにおいのする感じの街並みが好きだったので、昔の東京の方が色気があったなとは思います。便利になっていると思いますけど、テーマパーク的と言いますか、ちょっと魅力が減っているような気はします。
──劇中には新宿の地下迷宮を迷わせるようなシーンもありましたが、嫌いだったりするんですか?
いやいや! むしろ好きですよ。単純に空間として面白いなと。撮影は許可的なところではかなり大変なんですけど、結構ゲリラで回したって感じですね(笑)。
──そのシーンの宮地すみれさんは元々のキャラクターそのままって感じでした(笑)。
宮地さんはそのままですね(笑)。事前に迷子の動線を厳密に決めていて、正面から撮っていたものが自然と追っかける形になるように割と凝ったカメラワークを考えていたんですけど、どうしてもその通り動いてくれない。前の人について行っちゃうんです(笑)。
──前作『658km、陽子の旅』がロードムービー主軸だったじゃないですか。今回は東京という舞台を右往左往する青春劇になっていて、前作がロードムービーだったからこそ街を描けるみたいな感覚もあるのでしょうか。
直接つながっている感じはしないんですけど、昔『海炭市叙景』という映画を函館の街中でロケをした、あの感覚に近かったです。下北のシーンとかエキストラが集まらなくて、駅前でちょっとおしゃれな人に声かけてそのまま出演してもらってます。「映画監督の熊切と言いますが……」って自ら声をかけて(笑)。
──今回、11人それぞれのキャラ造形もかなり細かくこだわられたのでは?
そうですね。一番ハードル高いなと思ったのは11人全員を生かすことでした。誰が誰かは海外の人が見てもわかるようにしたかったので。元々は日向坂46の子たちってストレートヘアーのビジュアルだと思うんですけど、髪型を変えたりなんだりを振り分けようと思っていて。説田っていう眼鏡のキャラクターとか、髪を切ってくれた渡辺莉奈さん演じる桐井とか、11人分イラストを描いて並べて、「これでいけるかな?」って作り込んでいきました。
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