桜井和寿は監督との打ち合わせ日に偶然雛鳥を保護
Mr.Childrenが書き下ろした主題歌が鮮やかに彩る、山田尚子監督最新作『きみの色』本予告解禁
2024.06.05 04:00
©︎2024「きみの色」製作委員会
2024.06.05 04:00
山田尚子監督最新作となる映画『きみの色』の主題歌をMr.Childrenが書き下ろしたことが発表され、楽曲を使用した予告映像が解禁された。
興行収入19億円の大ヒットとなった『映画けいおん!』(11年)、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞に輝き23億円のヒットを記録した『映画 聲の形』(16年)の両作品を監督し、些細な日常を瑞々しく鮮やかに描く映像センスと、小さな心の揺れ動きを表現する繊細な演出で世界から脚光を浴びるアニメーション監督の一人となった山田尚子。
そんな山田監督の最新作『きみの色』で脚本を務めるのは、スタジオジブリや京都アニメーションの作品を手掛け、山田監督とは「けいおん!」シリーズ以降幾度となくタッグを組む吉田玲子。音楽は『映画 聲の形』『リズと青い鳥』(18年)などの山田監督作品のほか、『チェンソーマン』(22年 テレビ東京系)のサウンドトラックも担当する作曲家・牛尾憲輔。声の出演には、日暮トツ子役に鈴川紗由、作永きみ役に髙石あかり、影平ルイ役に木戸大聖と、いま注目の若手俳優たちが参加。3人を導くシスター日吉子役を新垣結衣が務める。
Mr.Childrenによる主題歌「in the pocket」がリズミカルに彩る本予告映像は、人が「色」で見える高校生のトツ子が同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみと、街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年・ルイと勢いでバンドを組むことになるコミカルなシーンから始まる。お互いの”好き”と”秘密”を共有している3人がバンド活動を通じて心を通わせていく様子はどこか懐かしく、「この先のこと」という漠然とした不安を感じる17歳ならではの迷いや悩みにシスター日吉子は「わたしたちは何度でも歩き直すことができるのです」と語るなど、短い時間だがあたたかな気持ちになる予告となっている。
楽曲提供にあたり作詞・作曲を務めた桜井和寿からコメントも到着。本作の主人公たちの印象や主題歌に込めた想いを語っており、さらに楽曲を聞いた山田尚子監督、今回のオファーを実現させた川村元気プロデューサーからもコメントが届いた。なお本作は世界最大規模のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門へ出品され、上海国際映画祭の金爵賞(Golden Goblet Award)アニメーション部門へのノミネートも発表されている。
Mr.Children 桜井和寿 コメント全文
この映画の主人公たちは
焼き上がる前の陶器のように、
少し力を加えただけで壊れてしまいそうなくらい繊細に思える。
言い換えれば、柔らかくしなやかだ。
ある日のこと(なんと偶然にも初めて山田監督とお話しする機会を頂いたその日)、
ミーティング場所の駐車場に車を停めると、巣から落ちてしまった飛べない雛スズメを見つけた。
心配になって、拾って、家に連れて帰った。飼育方法を調べようとネットで検索すると、どうやら落ちてしまった「巣立ち雛(そう言うらしい)」は、そこからまた親鳥と共に、飛び立つ練習をし、成長していくらしい。
僕は慌てて、雛を発見した場所に戻り、雛を探しているであろう親鳥に謝罪しながら、拾った場所に雛鳥を戻した。
健やかな成長を願いながら。。
あの日出会った雛鳥のように、
抱き上げるでも、背中を押すでもなく
無理に力を加えることなく、
主人公たちには
その繊細さのまま、
その柔さのまま、
しなやかに強く飛び立って欲しい。
そんな歌でありたいと、
願いを込めてレコーディングさせてもらった。
山田尚子(監督)コメント全文
滲んでぼやけた雲の隙間から、ぱっと光が差し込んできたみたいでした。
まぶしくて、でも輪郭がはっきりとしていて、なんだかとてもビビットな色味の音楽だと感じました。
だけど、もう一度聴いてみると今度は曖昧な色も見えてきて、いろんな色の集合体がこの曲を形作っているんだな、と夢中になって何度も再生ボタンを押しました。
Mr.Childrenの音楽を聴いていると、その主人公目線で描かれる「誰か」にどうしても思いを馳せてしまいます。
曲の中に描かれる「彼女」だったり「親友」だったり。全く知らない人のはずなのに、自分のあこがれの人に思えたり、一緒に失恋した気持ちになったり。
経験したことのない場所やにおいを歌に乗せて教えてくれる、まるで映画を見ているような感覚に胸が騒ぎます。
人生の中にずっとついて離れないMr.Childrenの音楽。
「きみの色」でも桜井さんの目に映った世界を聴いて、観ることができるなんて思いもしませんでした。
打ち合わせで初めてお会いした時に、「そーっっとね」とくしゃくしゃの笑顔で段ボールに保護したすずめをのぞかせてくださった桜井さんがその場の何よりも柔くて強くはかなく感じて、すっかり身を任せようと思ったのでした。
川村元気(企画・プロデュース)コメント全文
『きみの色』は、人のことが「色」で見えるトツ子が、学校をドロップアウトしてしまったきみと、進学先に悩みを抱えるルイと三人でバンドを組む物語です。
しかしながら、この映画は(この世界に多様な色があるのと同じように)その物語の外側にも内側にも、大きく深く広がっています。
その「色」を表現するために、山田尚子監督の繊細な映像表現に加えて、どうしても音楽の力を借りたいと思っていました。
『きみの色』の少年少女たちが感じていること、彼らが小さな町で楽器を奏でながら見ている世界を、音楽で表現してくれるアーティストを探した時に、「大人のような子供たち」と称するバンド以外に思い当たりませんでした。
この主題歌の打ち合わせの日に、桜井和寿さんが偶然保護した雛鳥を見せてもらったときに、言葉を交わすでもなく僕たちが飛び立つべき方向が定まったような気がしました。
この映画が、あの雛鳥のような無垢な力強さを持った主題歌と共に世界に飛び立つ日を楽しみにしています。